携帯電話会社が端末を他社で使えないように制限する「SIMロック」の解除が義務づけられることになりそうだ。総務省が2015年度からの実施を目指し、具体策の検討に入った。

そうなれば競争環境が大きく変わり、NTTドコモなど大手3社の寡占状態に風穴を開け、料金の引き下げなどにつながるとの期待も高まっている。

端末を買い替えずに他社への乗り換えが可能に

スマホなど携帯端末は電話番号など利用者情報を書き込んだ「SIMカード」を差し込んで使う仕組み。しかし、携帯各社は端末にロックをかけ、他社のSIMカードを入れても利用できなくしている。これがSIMロックと呼ばれ、各社が利用者を囲い込むために欠かせない機能となっている。SIMロックが解除できれば、端末を買い替えずに格安スマートフォン会社など他社への乗り換えが可能になる。

総務省の有識者会議が6月末、SIMロック解除などを盛り込んだ中間とりまとめ案を公表した。この中でSIMロックについて「利用者の自由な選択を妨げ、利便を損なっている」などと厳しい指摘が相次ぎ、仮にロックをかける場合でも「少なくとも一定期間経過後は、利用者の求めに応じ迅速、容易かつ利用者の負担なく解除に応じることが適当である」との結論に至った。これを受けて総務省が具体策の詰めに入ったというわけだ。

海外では欧米を中心に一定期間が経過すれば解除しており、総務省も2010年にガイドラインを策定して各社に解除を促した。ドコモが米アップルのiPhoneを除く端末で解除に応じたほかは、ソフトバンクが一部で解除、KDDIはゼロと、対応が分かれている。これはガイドラインに強制力がないためで、総務省は義務化することで解除に応じない場合、電気通信事業法に基づく業務改善命令の対象にできるようにする考え。解除されれば海外で自分の端末に現地のSIMカードを入れて低料金で利用できるようにもなる。

2年縛り」も見直し対象に

解除を巡って今後、焦点となりそうなのが、大手3社が扱う国内一番人気のiPhoneの扱いだ。アップルは販売ノルマを課しているとされており、各社ともにSIMロック解除で端末の販売が減れば、ノルマを達成できない恐れがあることから、iPhoneSIMロック解除への激しい抵抗が予想される。現時点で全端末がSIMロック解除の対象になるかは判然としていないが、国内シェアトップのiPhoneが対象外ともなれば、解除を義務化する意味は薄れてしまう。

他方、中間とりまとめ案はSIMロックとともに利用者の囲い込みに一役買ってきた「2年縛り」といった期間拘束のある契約の見直しにも言及。総務省はこれらを見直して競争環境を整備し、格安スマホ会社の参入や料金の引き下げなどにつなげたい考えだ。そこでは、通信回線を大手から借りてサービスを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)がどこまで伸びるか(現行のシェは3%程度)がポイントになる。まさに、「最も重要なのは乗り換えが進むかどうかでなく、消費者の選択肢が広がることだ」(総務省筋)。

これに対し、携帯各社はSIMロックが解除されるとビジネスモデルの大転換を迫られるだけに「消費者に解除のニーズはない」と乗り気でない。2年縛りという長期契約だからこそ販売奨励金を原資にキャッシュバックや端末の実質0円を実現できたとの思いが強く、「もし、ロック解除されれば販売奨励金を抑制せざるを得なくなり、端末価格が高くなるおそれがある」と主張する。

国内市場は既に成熟し、携帯大手の料金やネットワーク品質、サービスなどに大きな違いはみられなくなっているとして、「他社へと乗り換えるメリットはなく、ロック解除は無意味だ」との声が聞こえるように、3社寡占体制にどっぷり浸っている市場。SIMロック解除で、こうした厚い壁に風穴が開けられるか。総務省と携帯大手との綱引きの行方が注目される。