低燃費車ほどカタログ燃費と実走行燃費のかい離は大きくなりがち(写真は、トヨタの「プリウス」サイト)

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景気の回復基調で売れ行きを伸ばす新車販売だが、消費者の「目」がカタログ燃費と実走行燃費との「かい離」に向いてきた。

自動車メーカーの低燃費競争が、0.1キロメートル単位を争うほどの激しさをみせる一方で、カタログ燃費と実走行燃費のかい離を問題視する消費者が増えることは、メーカーにとっては新たなリスクになりかねない。

トヨタ「アクア」のかい離率は約4割

クルマを購入する際に、燃費に注目する人は少なくない。ここ数年は自動車メーカーも「エコドライブ」を目指していて、ハイブリッド車(HV)をはじめ、こぞって「低燃費」を売り物にして競い合っている。

2013年は、トヨタ自動車の小型HV「アクア」が燃費世界一のガソリン1リットルあたり37.0キロメートルを達成し、ホンダの「フィットHV」を抜いた。軽自動車ではスズキの「アルトエコ」がリッター35.0キロメートルで、ダイハツ工業の「ミライース」を抜いて「低燃費NO1」の座についた。

しかし、この燃費はあくまでカタログでのこと。実際に市街地を走れば、その燃費は違ってくる。

約60万人の会員が走行距離と給油量を投稿して走行燃費数値などを比較する「e燃費」によると、トヨタの「アクア」はカタログ燃費(JC08モード)がリッター35.4〜37.0キロメートルなのに対して、実走行燃費の平均値は20.95キロメートル。かい離率は40.8〜43.4%に達する。ホンダの「フィットHV」は、カタログ燃費(同)が20.0〜36.4キロメートルで、実走行燃費は17.35キロメートル。かい離率は13.3〜52.3%だった。

もちろん、実走行燃費は走り方(加減速や速度、距離)や走行環境(気温や道路の混雑状況など)によって変わってくる。とはいえ、カタログと4〜5割も違ってくると、「誇大広告」「偽装表示」などといわれても仕方がないかもしれない。実際に消費者からクレームがついたこともある。

こうした「かい離」について、ある自動車業界のウオッチャーは、「燃費が自動車メーカーにとって最注力ポイントになっているうえに、燃費測定に自社の訓練を積んだドライバーが運転することが許されており、それが実際の燃費との差が広がる要因になっている」と指摘する。

ただ、「共通の基準で機能比較を行うことはそもそも困難で、完璧な試験や完璧な基準はない。2012年に米国で問題となった韓国メーカーによる虚偽表示は論外だが、消費者がかしこくなることで対応する必要がある。たとえば、米国でよく行われている消費者団体による性能評価を考えてもいいかもしれない」とも話している。

低燃費車ほどカタログとのかい離は大きくなる傾向

自動車業界がこれまで、カタログ燃費を実走行燃費に近づけるための取り組みを怠っていたわけではない。2012年4月以降、カタログには「JC08モード」を使った燃費計測基準で燃費が表示されているが、それ以前は「10・15モード」だった。JC08モードはエンジンが暖気されていない状態から始めるコールドスタートを走行パターンに追加したり、最高速度を毎時70キロメートルから毎時80キロメートル以上に引き上げたりして、実走行の状態に近づけた。

また日本自動車工業会は、2013年5月にまとめた一般向けのパンフレットで、全車を平均した実走行燃費は、カタログ燃費に対して10・15モードの場合で約3割、JC08モードで2割低いことを明らかにしている。

さらに実走行燃費との乖離率は、低燃費車ほど大きくなる傾向があると指摘。カタログ燃費がガソリン1リットルあたり30キロメートルを超えるクルマの実走行燃費は、カタログ燃費の6割以下、20キロメートルでも7割程度(いずれも10.15モードの場合)としている。

低燃費車で乖離率が広がる理由は、燃費計測で考慮されない、エアコンやランプ、ワイパーなどの電装品の影響が大きい。電装品による燃料消費は大型車でも小型車でもほとんど変わらないため、実際の燃料消費では、低燃費車ほど電装品の割合が増える。結果的にカタログ燃費との乖離が目立つというわけだ。