アフリカの強豪コートジボワール、欧州の強豪とは言えないギリシャ、南米の強豪コロンビア。日本の対戦相手は以上のように決まった。

 グループリーグ最終戦のコロンビアから見ていくことにする。日本が最も勝利を望みにくい相手だからだ。勝ち点は計算しないほうがいい。

 かつてコロンビアといえば、マイボール時に力を発揮するサッカーだった。ショートパスを中心にボールをよく繋いだ。司令塔にバルデラマがいた頃(1985〜1998年)は、特にアルゼンチンに相性の良さを発揮。アルゼンチンに平常心を失わせる巧みさを披露した。その一方でブラジルには勝てなかった。ひと言でいえば巧さ負け。巧い選手は巧い相手に弱いと言われるが、両者の関係はまさにその典型だった。コロンビアはブラジルを向こうに回すと途端に牙を失った。相手ボールの時間が長くなると脆さを露呈するサッカーだった。

 それはボールを奪うことが得意ではなかったからだ。高い位置での守備など全くしないチームだった。だが現在のコロンビアはその点が100%改善されている。ボール回しも効率的になったので、変な奪われ方をすることもなくなった。古典的な南米サッカーから欧州型サッカーへの脱皮。ざっくり言えばそうなる。

 実際、欧州でプレイする選手の数もここ数年で急増。対応の幅が広い選手で固められている。そのうえで、何人か特別な才能を持つ選手がいるわけだ。ファルカオはその代表的な選手。いま最も優れたセンターフォワードを1人挙げよと言われれば、僕はこの選手を一番に推す。ダイナミックな躍動感溢れるプレイは圧巻。スピード感もあれば、豪快さもある。日本のディフェンダーには止められないと思う。

 弱点をあえて探れば、W杯本大会で実績がない点になる。最高位はベスト16。世界ランク(現在4位)とのギャップがどう出るか。チャレンジャー精神は旺盛だが、王者の風格はない。監督ペケルマンの采配に注目が集まる。

 初戦で当たるコートジボワールは前々回ドイツ大会、アルゼンチン、オランダという強国と同組になり3位に終わった。前回南アフリカ大会もしかり。ブラジル、ポルトガルと同組になり3位に終わったが、4年前より惜しい敗れ方だった。力で一枚劣ったに過ぎなかった。

 そして今回。新たなスター選手が誕生したわけではない。チームの顔は35歳になったドログバだ。タレント的には新鮮みに欠ける。だが、彼らには2大会連続グループリーグ3位という実績がある。経験者が多くいる。4年前のカメルーンが見せたような"自滅"はないと考えるべきだ。

 それでも弱みはある。それはアフリカ勢が依然として準々決勝の壁を破れずにいることと大きな関係がある。選手ひとりひとりの身体能力は確かに高い。局面で圧倒される可能性は高いが、選手の動き、リズムがほぼ同じなので、単調さは否めないのだ。試合開始早々こそその身体能力に驚かされるが、抑揚がないので、時間が進むにつれ目は慣れてくる。そこにシャビがひとりいれば、シャビ・アロンソがひとりいれば。だが、試合のリズムを変えられる選手がブラックアフリカにはいない。コートジボワールも例外ではない。試合を観戦しながら毎度思うことだ。

 それだけに、初戦でこのコートジボワールにやられると、日本は大ピンチに陥る。最後に控えるコロンビアが強いからという理由だけではない。

 2戦目に戦うギリシャも実は強敵。あなどりがたい存在であるからだ。何より堅い。大崩れしない安定感がある。それはユーロ2004で優勝したときにも言えたことだが、当時は守備を固めてカウンターを基本的な戦い方にしていた。カウンターにバラエティさがあったことが、番狂わせを起こす要因になっていた。だが近年のギリシャはそうではない。正攻法で攻めてくる。支配率を追求する攻撃的と言うべきスタイルに変わっている。

 そのうえ真面目で勤勉。さらに気質的に少々のことではへこたれない粘りがある。ギリシャは年々、好チーム化している。穴らしき穴がない、大崩れしにくいサッカーでありながら、チャレンジャー精神も旺盛だ。世間から弱者と見られていることが幸いしている。

 弱点は、知名度の高いスター選手がいないことだが、それが逆に奏功している恰好だ。日本にとってはやりにくい相手、気分よくプレイしにくい相手だと言える。

 ギリシャに対してはどのような立ち位置で臨めばいいのか。3チームの中では接し方が一番難しい相手だと思う。慢心は不幸の始まり。最悪3連敗もあり得る。いま、あえて僕はそう言っておきたい。

杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki