橋下徹大阪市長率いる「日本維新の会」の支持率が低迷している。10月上旬、産経新聞とフジテレビが合同で行なった世論調査で、次の衆院選比例代表の投票先を「維新」と答えた有権者は14.2%。前回調査から9.6ポイントも急落している。国民の期待が大きかっただけに、この結果は意外だ。

政治評論家の浅川博忠氏は「原発政策でのブレ、グダグダだった政策討論会、竹島共同管理発言などで、橋下・維新への失望が広がっています」と説明する。この事態を打開するために、橋下市長は「維新は独自に行動する」としていた発言を一転、石原慎太郎都知事やみんなの党などに“第三極”の連携をちらつかせ始めた。そこには、橋下市長の焦りがあるという。

「このままでは次期衆院選の勝利はおぼつかない。そこでその失地を回復しようと打った手が、石原都知事との会談やみんなの党との再連携というわけです」(浅川氏)

政治評論家の有馬晴海氏がこう続ける。

「橋下さんにとって、14.2%という数字はショックだったはずです。一時は次の衆院選で100以上の議席を取りそうな勢いだったのに、ここ1、2ヵ月で自民、民主にも負けて3位に転落したのですから。小選挙区で戦えるのは支持率1位と2位の候補だけ。3位以下は泡沫候補にすぎません。維新はその泡沫グループになってしまった。そこでこれはマズいと、石原都知事やみんなの党にすり寄り、自民、民主に対抗する作戦に打って出たのです」

維新の支持率は東京ではせいぜい4〜5%にすぎない。ただ、関西圏ではいまだ橋下人気は根強く、40〜50%の高支持を誇っている。

「だからこそ、関西ブロックに力を集中して一定数の議席を確保。維新からの当選者の望めない首都圏や関東圏は石原新党とみんなの党、中京圏は大村秀章愛知県知事、河村たかし名古屋市長と選挙協力し、第三極としてまとまる。それによって、国会で影響力を保つことを目指しているのです」(有馬氏)

つまり、維新単独で第3極をつくる戦術から、いくつかのグループで第三極をつくる戦術へと方針転換したというわけだ。しかし、これが本当に橋下・維新巻き返しの秘策になるのか?

「ムリでしょうね。有権者にとって、石原新党へのラブコール、みんなの党との再提携の動きは“数合わせ”にしか映らない。そもそも石原都知事が本当に新党づくりに乗り出すのか、はなはだ疑問です。80歳を超え、気力、体力も弱っている。体調もよくないと聞いています。皮肉なことに、橋下さんが石原都知事との連携に動けば動くほど“維新らしさ”が色あせ、期待はさらにしぼんでしまう状況です。これまでの維新は、実体以上に背伸びすることで、その存在を大きく見せてきた。でも、それもそろそろ限界が見えてきました」(浅川氏)

「橋下、石原両氏の政策があまりにも違いすぎます。原発政策は真逆(橋下・維新の立場は基本的には“脱原発”。石原都知事は「日本には原発が必要」との立場を表明している)です。消費税増税も温度差がある。増税を認める石原さんに対し、橋下さんは増税よりも消費税の地方税化を求めている。憲法改正も石原さんは全面改正派だけど、橋下さんは部分改正派。連携しても、いずれもめるのは明らかです」(有馬氏)

こうした橋下・維新の動きを「完全なる迷走」とジャーナリストの青木理氏は断言する。

「以前から橋下市長には政治家として一本、芯の通った信念、政策はないと思っていましたが、最近の動きを見ていると、もはや迷走としか思えません。政策本位でやると言いながら、結局は選挙での当選が目当て。これでは党利党略に走る民主党や自民党とまったく変わらない。もともと橋下・維新の実力は未知数でしたが、このことで化けの皮がはがれてきたという感じですね」

空前の橋下・維新人気も、一過性のブームで終わってしまうのだろうか。

■週刊プレイボーイ45号「橋下維新と石原新党の連携が『第三極』を殺す!!」より