[前編はコチラ] 今季初観戦となった横浜DeNAベイスターズ×阪神タイガース。試合は、3-0で阪神リードのまま、能見と高崎が投げ合っている。それにしても、阪神のオーダーは豪華な顔ぶれだ。1番・鳥谷から始まって、平野、マートン、金本、新井貴、ブラゼル――。タイトルホルダーがずらりと並ぶ。これに加えて、ベンチに城島がいるのだ。

 うん、たしかに豪華ではあるんだけれども、高齢化がちと気になる。あわてて選手名鑑を取り出してみたが、先発の能見を含め、この日のスタメンに20代の選手は皆無。最年少は、鳥谷敬、30歳。えっ、もう鳥谷が三十路なのか……。そりゃ、オレも年取るはずだ。

 中谷将や野原将といった主軸候補に、柴田、大和、上本ら、俊足巧打の1,2番候補。忘れちゃいけない、今年のドラ1・伊藤隼太。ファンの期待する若虎は、決して少なくないはずなんだけどなあ。

 それにしても、寒い。いくらなんでも寒い。いや、試合展開のことではなく、思いのほか夜風が冷たいのだ。念のため持ってきたジャケットをいちばん上のボタンまでしっかり留め、亀のように首を縮こまらせていた。すると、アウェイ用の黒いユニフォームを身にまとい、ピンクの虎耳(?)を着けた女性が目の前に。

「これ、どうぞ」

 見ると、携帯用カイロ! しかも、貼るタイプ! うわあ、これは助かる。何度もお礼を言って、ご好意に甘える。彼女が自分の座席に戻るのを見届けると、なんと彼女はブランケットまで持参していた。むむ、さては常連だな。

 統一級の影響か、今季もロースコアの試合が多く、試合時間もずいぶん短いと聞いていたが、あれよあれという間に、能見から榎田へ、榎田から球児へ。3-1で、ゲームセット。ナイスピッチにタイムリーヒットまで放った能見投手のヒーローインタビューを聞きながら、帰路へ。

 スタジアムから関内駅へと続く坂道を下っていると、ベイスターズファン同士の会話が耳に飛びこんできた。

「今日も見せ場すらつくれなかったなあ」
「盛り上がりませんでしたねえ……」

 たしかに、今季もベイスターズは苦しい戦いを強いられている。だが、じつを言うと、この試合、僕が躍動感を感じていたのはDeNAだった。村田移籍後の主軸として期待される筒香嘉智。オープン戦で盗塁王に輝いた梶谷隆幸。そして、この日3安打を放ち、さらには左中間への当たりをダイビングキャッチしてみせた荒波翔。今季すぐに結果が出るかはわからないが、いずれリーグを代表するだろう選手たちだ。

 ベテランが貫禄を見せる阪神。若手が躍進の萌芽を見せるDeNA。試合はあっさり終わってしまったけれど、見ごたえは十分。やっぱり、野球観戦は生に限るなあ。さて、次はどの球場に出かけようかな。

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