――本作で、濱田さん演じる凡人の今村とプロ野球のスター選手である尾崎は、目には見えない運命で繋がっていますが、例え無関係でも同郷の有名人に親近感を抱く感覚は誰にでもあると思います。木村さんは東京都出身ですが、どんな人に親しみを感じますか?

木村:私の周りにいてくれる人は大体、自分にはない何かを持っています。私自身はまだまだ吸収しなきゃいけない人間ですから、自分にはない新しいものが入ってくることで、色々なことを知るので、自然とそういう人が周りに多い気がします。

――類は友を呼ぶというよりは、自分とは異なるタイプの人に魅力を感じますか?

木村:居心地が良い人って、結局どこか似ている部分があるとは思うんですよね。似ている所はあるけど、持っていない部分もあって。それはお互いに思っていることだから、そうやって分け合っていくうちになんとなく感覚が似てくるので、居心地が良い場所になるのだと思います。

――原作の伊坂さんと中村監督とのコンビに加えて、4度目のコラボレーションとなる斉藤和義さんが主題歌「今夜、リンゴの木の下で」と音楽を担当されていますが、木村さんはどんな音楽が好きですか?

木村:サザン・オールスターズやBUMP OF CHICKENとかバンドものが好きです。

――以前、寒竹ゆり監督に話を伺う機会があったのですが、木村さんは大知正紘さんというアーティストのミュージックビデオにも出演されてましたね。

木村:寒竹監督も素晴らしい方だし、大知さんは良い歌を歌われますよね。当時19歳であの歌詞を書けるのはすごいですよね。私がよく聴くのはスローテンポとか、暗い曲というか(笑)。でも、暗い歌だからとか、暗くなりたいから、その歌が好きという訳じゃないんです。暗い歌を聴いて思うことがあって、「よし、前に進もう!」とか何かのきっかけになることが多いから。私は常に向かって行ってばかりで、余裕がないというか。でも、バンドものが好きと言いつつ、つじあやのさんとか奥華子さんも大好きなんですよ(笑)。

――何か辛い経験などで落ち込んでしまった時、立ち直るために心掛けているようなことはありますか?

木村:落ち込む時は、とことん落ち込むようにしています。落ち込み過ぎると、もう上がるしかなくなってしまうので、何かの機会でポンッと上がってこれるんですよね。でも、それがいつ来るか分からないから、いつまでもずっと自分を落とし込むんですけど。落とし込むと、逆に出していくしかないし、素直に受け入れるしかなくなってくるので、素直になれる気がするんですね。本当は答えが分かっているのに動かないでいることが結構多いと思うので、落とし込んで、自分がどうしたいかを見極めて動くようにしています。そうすると自分の中でブレがないなと。

――では最後に、これから本作をご覧になられる方へ向けて、演じられた側として、どんなことを感じ取って欲しいですか?

木村:予告にもある通り、一刻も早く宮城で、仙台で映画を撮らなければいけないと思ったという、みんなの想いと気持ちで出来た作品です。だからといって震災のことを推している訳でもないし、思い出させるような内容でもなくて。押し付けはしないけど、「人間にとって根本的に大事なものって、こういうことなんじゃないかな?」と優しく問いかけているような内容だと思うので、気負わずに観ていただきたいです。

取材・文:原 宏治
スタイリスト:加藤 將(VACANS)、ヘアメイク:野中 真紀子(éclat+)