さて、無事にU-23日本代表はマレーシアに4-0で勝ち、かつシリアがさくっとバーレーンに1-2で敗れたことで、次節は引き分け以上でロンドン五輪出場を手にする状況になりました。まあ、ありえる展開だなとは思っていたものの、こうもサクッと状況が変わるといささか戸惑いも覚えます。いろんな意味で。もちろん嬉しいですよ。

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/headlines/20120223-00000011-kyodo_sp-spo.html
>日本は自力での1位通過が復活し、3月14日のホームでの最終戦でバーレーンに勝つか、引き分ければ5大会連続9度目の五輪出場が決まる。敗れても他チームの結果次第で1位通過の可能性がある。C組2位はプレーオフに回る。

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 まあ次節のバーレーンに0-5とかの大差で敗れたりすれば、シリアがやはり大差で勝った場合に得失点差で並び予選敗退って可能性もまだ数字上はあるわけで、最後まで気を引き締める必要があります。とはいえ、日本は最終節をホームで戦うわけで、そこは多くのサポーターが駆けつけて声援を送るはず。圧倒的なアドバンテージを握っているのは間違いないわけで、気に病むほどではありません。きちんと準備して普通に戦えば、五輪出場をホームで決められるはずです。

 で。そういう状況になったので、やっと「次」の話ができるかなって感じなのですが、いったいこのチームは本番でどういうサッカーをやりたいのか? それが全く見えない感じのマレーシア戦でした。

 結果についてはご覧のとおり4-0です。予選において内容などは大した意味をもたず、結果を残すことがファーストプライオリティなのは疑いがありません。一方で、チームとしての結果を「五輪出場」に置くのか「メダル獲得」に置くのかで、このサッカーを許容できるか否かの閾値は大幅に変わってくると思うわけで。

 僕の場合、日本は1996年から4大会連続で出場しており、アジア予選突破のハードルは以前と比べて下がったと思っています。川口能活が咆哮し前園真聖が躍動した1995年の予選から、アジアは決してナメてはいけない的な対象である一方、今回のように韓国もイランもイラクもUAEもウズベキスタンもいない組では、その通過を最大の目標としているようではかなり厳しいなと。

 あくまで、このチームはメダル獲得を目的に強化を進められているのだと思いたいです。なので、そう考えると、正直このチームは五輪で1勝できるか怪しいレベルと思いますです。

 DFラインにスピードがなく、裏を取られるのが怖くて押し上げられない。一方で前線は結果を出したいからガンガン前にプレスに行く。結果、中盤で両ボランチが完全に孤立し、選手間の距離が広がり、パスコースが読まれやすくなり、こぼれ球も拾いにくくなった。他方、GK権田修一は足元がおぼつかず、うかつにバックパスを出そうものなら相手のプレスにかかって蹴り出すかミスが起こるか。

 現代サッカーにおけるリベロであるGKが機能不全を起こし、DFラインは押し上げられず、前線と他のポジションは同じ絵を描いていず、中盤はひたすらスペースの処理を押し付けられ疲弊する。チームとして見たときのお粗末さは目を覆わんばかりでした。

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 前半に得点するまで、日本は何度もマレーシアのカウンターを受けましたが、そういうメカニズムだったと思います。1点目は素晴らしいカウンター、2点目はセットプレーなので「狙い通りのサッカーでない」とは言えませんが、ボールを保持している際のプレーには迷いしか感じず、マレーシアレベルで苦戦してしまう程度のチーム力しかない。

 そういうチームが五輪で何かを達成できるとは、到底思えないのが正直な気持ちです。では、ここに「足元でつなげるGK」「スピードある(あるいはラインを高く保てる)CB」「きちんと展開できる中盤」を持ってくれば解決するかというと、そもそも論として例えば西川周作や今野泰幸や遠藤保仁はA代表の選手であり、五輪に出場させることでキャリア的なメリットがあるかっつーとほとんどないかと思うわけで。

 いろいろ考えると、表題に行き着くわけです。このチームは、何を目標としているのか? 五輪出場「だけ」ならこのチームでも良いが、本番で恥をかくなら行く必要もないのかも。逆に、きちんと本番を見据えるなら、もう少し選手選考をどうにかすべきだし、その上で「このポジションは足りない、どうしようもない」ということを関塚さんがきちんとアピールすべきだろうし。選手も選手で、キャプテン山村を筆頭にもう少しお互いへの要求をすべきだろうし、まあそういう感じで「勝ったけど五里霧中」みたいな気分でございます。

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