2月の試合はいつも苦戦する。

 それはU−23代表に限らず、A代表でも同様である。2月の代表戦はいわゆるオフ中の試合で、選手たちは思うようなプレーが出来ずに、相手のレベルに関係なく、ミスを連発し、自滅に近い苦しい90分を過ごさなければならない。

 それでもなんとか、終了間際にゴールを決めて劇的な結末で帳尻を合わせる試合を過去に何度も見て来た。

 しかし、2月5日のロンドン五輪アジア予選対シリアU−23代表戦で、U−23日本代表は敗れてしまった。終了間際のシリアの得点は、あらゆる面でお見事というゴールだった。 

 残り数分。同点で逃げ切れるという油断がU−23日本代表選手に生まれていたかどうかは、わからない。しかし、最後の最後で踏ん張りが利かなかった。ボールを拾った相手に余裕を与えてしまったシーンだけを取り上げるつもりもない。90分間のプレーのつけが、そこに集約されただけだから。

 先制点を許した日本は、無闇なカウンター攻撃を仕掛けては、ボールを失うという稚拙なゲーム展開が続いた。前半終了間際に同点に追いついたとはいえ、中盤でボールを保持できない状態は後半も続く。相手がペースダウンし、ボールを持つことができても、判断が遅く、好機の芽を自らのプレーで無きものにしてしまう。時間をかけて、ボールを繋ぎ、相手を揺さぶり、ゴールをこじ開ける。そんなシーンはわずかだった。永井が決めたゴールシーンは、ボールを繋ぎ、いったんバックラインに下げてからの速攻が結果に繋がった。

 遅攻があるから、速攻が活きる。

 遅攻と速攻の使い分け、緩急織り交ぜたリズム作り……。それはA代表でも、たびたび課題に上がるテーマだ。苦戦の原因に「攻撃のテンポが単調だった」と選手が口にする試合は多い。

 わかっていても、それができない。オフ明けで試合勘に問題があったのかもしれないが、U−23日本代表選手は、余裕のない慌てたプレーが目立った。

 スタジアムのピッチコンディションが劣悪だったことに、選手たちは必要以上にナーバスになってしまったのかもしれない。丁寧に蹴ったボールは逆に勢いが落ち、相手に渡ってしまう。ミスが頻発する状況では当然、余裕もなくなってしまう。

 Jリーグのピッチは、練習場でもスタジアムでも、常に綺麗に整備されている。欧州でプレーした経験を持つ選手は誰もが「Jリーグの環境は素晴らしい」と口をそろえる。もちろん欧州のトップクラブのピッチは、確かに美しい。しかし、すべてのスタジアムで同じように整備されているわけではない。特に冬になれば、雪が積もったぐしゃぐしゃに荒れた重いピッチでのプレーが日々求められる。子どもの頃からずっとそういう場所で的確なプレーを求められてきた海外の選手は当然たくましい。

 自信無さ気にプレーするU−23日本代表の選手たちを見ながら、育ってきた環境の違いや国際経験の乏しさを痛感した。

 U−23代表はふたつのU−20代表が合体した形になる。現U−23代表は2009年、2011年と2大会連続でU−20ワールドカップ出場権を逃した。もし出場が決まっていれば、つづいていた強化は、前年のアジア予選敗退時点で、足踏みしてしまった。2009年からは、新生U−20代表として、カタール、韓国、香港などの大会へ出場しているが、大会毎に監督が代わり、Jリーグで出場機会のない選手を選抜して出場という形が多かった。それはチーム作りとは違った環境だったように思う。韓国での大会で、世界大会出場を前にした韓国相手に1−2で敗れた試合を見た。結果は惜敗だが、内容は散々だった。

「普段リーグ戦に出ていない選手たちが良く頑張ってくれた。この世代にはまだまだいい選手がたくさんいるので、不安は感じていない」