大学の学費が無駄に高すぎる件

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2011年12月26日付の読売新聞に「2010年度に私立大に入学した学生の入学金や授業料など初年度納付金の平均は131万5666円」と書かれていた。文部科学省の発表である。この数字は「1975年度の調査開始以来、過去最高」であり、文科省は「経営努力による納付金の抑制を各私大に求めている」という。

いまの大学生は、130万円ものお金を大学に納めているのか……。2年目からは少し安くなるのだろうけれど、それでも年間100万円くらいを4年間も支払い続けるわけだ。「そんな額のお金を、よく出せるなあ」とつくづく思う。多くの場合、親が出しているのだろうけれど、そうなると「親がお金を出せなければ大学にいけない」ということなのだろうか。

日本の経済は、景気の低迷が叫ばれている。リストラが横行し、非正規雇用として働く人が激増している。昨年の3.11東日本大震災で社会全体が震撼し、原発事故は収束にほど遠い状況でもある。そんなご時世に、大学の学費が過去最高。まるでブラックジョークではないか。

ちなみに、筆者自身は社会人になってから夜間大学に入り、その後は大学院博士後期課程まで学んだ(いずれも神奈川大学)が、学費はすべて自分の稼ぎで支払った。社会人になってから大学に進学したのは、自分が何をしたいのかもわからないのに、高校を出たらすぐに大学へ進学する必然性を、筆者はあまり感じなかったからである。

しかし、それよりも大きな理由がある。それは、筆者が高校まで養護施設にいたため、大学進学が不可能だったことだ。いまは特例もあると聞くが、30年前に養護施設で暮らし、身内がいないような子どもには、大学進学の道は閉ざされていた。いま考えてみれば、保証人もお金もないのだから当然のことなのだが、進学したかった高校生には「理不尽な世の中だなあ」と感じられたものである。

ひるがえって、今はたとえ親がいても、年間100万円ものお金を4年間支払えなければ私立の大学にはいけないのであろう。親というのは大変な役目を担わされているんだなあ……。せめて、バイトで稼げば子どもらが自分で支払える程度の学費であればいいのに。自分で払えば、元を取ろうと必死に勉強するにようになる子どもも増えるかもしれないし。

そもそも、超就職氷河期といわれるほど大卒生の就職が困難になっている中、大学にいけば就職できるという前提自体が夢物語になりつつある。親は子どもに対して、そんな前提を高校時代に提示し、高卒で働いて手に職をつけるとか、働きながら進学を考えるとか、そういうことを話し合うのも一案なのではないか。勉強したくもないのに、わざわざ高い学費を払った上で大学にいって勉強する必要などないのだから。

一方、大学の側も無駄に高い学費を学生やその親に支払わせる方針をやめて、勉強したい子どもは安価な学費で学べるような環境を整えるべきではないか。そういう環境を整えることだって立派な「教育」だと筆者は考える。あと、二つの大学で非常勤講師をやっている立場から一言。そんなに高額な学費を取っているのなら、非常勤講師の手当をもう少しあげてくれてもいいんじゃね?

(谷川 茂)