試合終了のホイッスルが鳴ると、そこは勝者にとってアウェーの地とは思えぬほどの歓声に沸いた。敵地で福岡を破った浦和は、この試合で残留をほぼ手中におさめた。サポーターが喜ぶのも無理ないだろう。

ペトロヴィッチ氏を監督に迎えて挑んだ2011年。だが、レッズは低迷した。その有様は混乱といったほうが適切だ。優勝争いから遠ざかっている近年は、度重なる監督交代などクラブとしての方針を示せず、迷走に陥った責任の所在もはっきりしていない。リーグ屈指の資金力で補強した外国人選手もいまひとつ活躍できていない。

これらの原因がフロントにあるという意見に異論を挟む人はいないはずだ。

昨年までレッズを指揮したフィンケ氏はクラブ経営について指摘した。「日本的な企業経営を、そのままクラブに当てはめてしまっている」つまり、日本企業のように縦割り型の組織で多くの社員が経営に参加しているため、物事を決める際に決断までに時間がかかってしまうと問題視している。また、終身雇用の企業のように他部署への移動はスペシャリストを作る弊害になっていると見ている。

ヨーロッパでは、ゼネラルマネージャー(GM)を筆頭に少人数で経営を行っている。GMとは監督、選手の人事権を握っているいわば強化の責任者である。

浦和に限らず移籍金問題など運営で、苦戦しているクラブはほかにもある。開幕から今年で19年目を迎えたが、Jクラブは未だに企業スポーツから完全に抜け出せていない。

2013年からクラブライセンス制度が導入される。それに備えるだけでなく、Jクラブにサッカークラブの経営とはどうあるべきかを示すことができるスキルのある人物が求められている。そのためには、サッカー先進国でクラブ運営の経験を積んだ者をJクラブのGMに迎え入れるべきではないだろうか。

思い起こせば、Jリーグも開幕当初、海を渡って来日したプレイヤーがJリーグ人気の起爆剤となったのは言うまでもない。ジーコ、ディアス、エドゥーなど華麗な足技にファンは目を奪われた。それだけではない。日本人選手に普段の生活面でプロとはどうあるべきかという見本を示した。

数年後、次にリーグに新風を吹き込んだのは外国人監督だった。アルディレス、ベンゲル、ネルシーニョなどが持ち込んだサッカー理論はリーグの質を高めるうえで大いに貢献した。

今、フィールド外のポジションで彼らの力が再び求められている。

(※このエントリは、萬田晃様からの寄稿です。原稿募集に関しては、こちらのページをご覧下さい。)



2012年Jリーグ消滅・萬田晃


Jリーグのコラム・萬田晃



■著者プロフィール



鈴木康浩



1978年生まれ、栃木県宇都宮市出身。作家事務所を経て独立。現在は栃木SCを軸にJ2からジュニアまで幅広く取材。サッカー小説も手掛ける。「サッカー批評」「週刊サッカーマガジン」「ジュニアサッカーを応援しよう!」などに寄稿している。



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