横浜ベイスターズの売却先が、DeNAに決まった。多くの人がDeNAの経営の安定性に懸念を持っている。新興のIT企業に赤字の続くベイスターズを保有し続けられるのかという不安だ。私は、その面での心配はしていない。ソフトバンクにしろ、楽天にしろ、すでにIT企業がきちんと球団経営をしているし、逆に言えば球団経営ができるほど財務に余裕のある企業は、いまやIT業界しかないというのが実情だろう。

 実際に財務データをみても、DeNAの昨年度の売上は1029億円、経常利益は547億円もあるし、急成長はまだ続いているのだから、ベイスターズを背負い込んだとしてもビクともしないだろう。

 ライブドアによる球団買収が問題だったのは、当時のライブドアがIT企業というよりもマネーゲームで収益を稼ぎ出す投機に走っていたからだ。そうした企業に球団経営を任せると、短期間で経営が悪化する可能性があるので危険だが、DeNAのやっているビジネスは、ソフトバンクや楽天と本質的には変わらないのだ。

 問題は、DeNAがベイスターズの文化を守ってくれるのかどうかということだ。DeNAの春田会長は、「勝てるチーム」を作りたいと言った。もちろん勝ってくれれば嬉しいし、3割台の勝率では、ペナントレースに参加していることにならない。

 ただ、勝つことを最優先にはして欲しくない。単に勝ち星を増やして欲しいのだったら、最初からベイスターズファンになんかなっていないからだ。勝利の美酒に酔いたいのなら、ジャイアンツファンになった方がずっと効率的だ。負けても、負けてもベイスターズファンを応援し続けているのは、ベイスターズの伸び伸びした野球が見ていて気持ちがよいからだ。その気持ちを共有するベイスターズファンは多いのではないか。

 だから、勝ち星を増やすために選手を抑圧してしまったら、逆にファンは離れていくだろう。その意味で監督の人事はとても重要だ。下馬評では、桑田真澄氏などの名前が上がっている。桑田氏は素晴らしい選手だし、指導力もあると思う、ただ、ベイスターズの文化ではないのだ。

 松原、田代、斎藤明夫など、OBに有能な人材はたくさんいる。また、選手も新しい地を入れるよりも、出て行ってしまった選手を買い戻してどうだろうか。日本シリーズで活躍した内川も、多村も、小池も、谷繁も、みんなベイスターズの選手だ。

 せっかくお金のある企業が買収してくれたのだから、彼らを買い戻すことはできるだろう。買い戻し費用の数十億円は、本業のゲームで、ヒットを一本打てば簡単に稼げるはずだ。

■11月16日水曜日、夜9時から生放送
森永卓郎のBLOGOS経済塾第2回〜「TPPがわかりません!」

■森永卓郎「ハマスタから遠吠え」
第五回〜ユニクロいいかもしれない
第四回〜ショウアップナイター
第三回〜なぜベイスターズは弱いのか
第二回〜私がベイスターズに望むもの
第一回〜私がベイスターズファンになった理由

森永卓郎(もりながたくろう)
昭和32年生まれ 東京大学経済学部経済学科卒業
日本専売公社、経済企画庁総合計画局、(株)UFJ総合研究所などを経て、現在、獨協大学経済学部教授。専門は労働経済学。主な著書に『年収300万円時代を生き抜く経済学』光文社2003年、『しあわせの集め方 B級コレクションのススメ』扶桑社2008年など多数。
森永卓郎オフィシャルWEBサイト