○日本 1:0 ベトナム●

■万吉:
ベトナムといえば僕は何といってもベトナム戦争のイメージが強い。当時、反戦という言葉は反ベトナム戦争と同義で、反米反戦のムードが先進国を中心に広がった。政治、音楽、文学、思想、哲学、映画といった人文系の分野はベトナム戦争について考えることを基軸に展開していった。ラブ&ピース…まあ今となっては、満ち足りた人たちによる知的ファッションに過ぎなかったような気もするが。

ところでそのベトナムとの親善試合だが、スポーツ紙は一応に格下に対して1-0という事を問題視しているようだな。

★珍蔵:
まあねえ…。

この試合を評価するのは難しい。まあ見方によると言ったらよいのかな。「あんなひどい試合、プロが金取って見せるものじゃないだろう。」とも言えるし、「いやいや、○△大学などとの練習試合を良くやるでしょ?それと同じ様なものだから。」とも言えてしまう。

■万吉:
新しい3-4-3システムが機能不全、と盛んに言われているみたいだが。

★珍蔵:
まあねえ…。

機能不全は機能不全かな。ザッケローニは中盤フラットの3-4-3をやろうとしている。これは攻撃的布陣で、特に後ろの3人はそれなりのテクニックとフィードの上手さを要求される。中盤の形は違うが、バルセロナが今季何回か3-4-3で良い結果を出している。中盤から前線にかける人数が多くワイドに展開したり絞ったりで、このバルサの試合は見ていて非常に楽しいサッカーだった。

一方で、長友が所属するインテルに今期から就任したジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督も開幕から3-4-3を採用していたが、結局勝てずに更迭されてしまった。戦術の理解力に優れたセリエA・インテルに所属するような一流選手でさえ、短期間では使いこなせなかったシステムということなのか。

やっぱり長い目で見る事が必要なのだろう。例えば長友などは、TV画面からもはっきり分かるほど4バックのときのSBの動きをしていたし。どうも代表の3-4-3は、動き方というより思想みたいなものがまだ浸透していない感じに見えた。

■万吉:
システムやポジションにこだわり過ぎたのではないか、もっと個人で判断して動けばいいんだ、という意見もあるようだが、そのあたりはどうなの?

★珍蔵:
まあねえ…。

試合としてはそういったプレーをしてくれた方が面白いだろうな。しかし、新しいものをきちんと身につけるには、最初はセオリーを守り考えながらプレーする、もちろんその分スピードが遅くなるわけだが、のも仕方がないと思う。

サッカーに限らず、物事というのはそういった具合に最初は丁寧に反復していかないと身に付かないものだ。特に代表はたまに集まって短期間しか練習が出来ない。だから今回ベトナム相手にそれを試せたというのは意義があったと思うよ。管直人元総理大臣ではないけど、仮免中です、かな。

■万吉:
聞くところによると、ベトナム人はサッカーが大好きで国民の半数以上がサッカーファンで、最近はプロリーグもできたそうじゃないか。

★珍蔵:
まあねえ…。

そういえば、日本サッカー協会は当初、FIFAランキング112位のUAEをリストアップしていたそうだ。しかしザッケローニ監督はチームに自信を与えるために、それより下位の相手を希望し、急きょ130位のベトナムに変更されたとどこかで読んだ。そのくらいの方がタジキスタン戦へのステップとして、控えの選手や3-4-3のシステムを試す相手にはもってこいと思ったのだろう。

ところがベトナムは思ったよりずっとキチンとしていた。

■万吉:
キチンと、というのは強かったという事か?

★珍蔵:
まあねえ…。

強かったというか、まあ噛み合っていなかったとは言え日本相手に1-0なのだから決して弱くは無い。ベトナム側から見れば試合内容もよかったよ。監督がドイツ人で自国のプロリーグも率いた経験がある人らしいが、チームとして組織がしっかりしていた印象だ。特にオフサイドトラップとかバンバンかけていたよ。個人も身長は大きい方ではないが、体幹がしっかりしている感じがした。特にDF。香川や長友にしっかりくっついて負けていなかったしな。