「日本人の中国人に対するイメージは10年前から変わっていない」という野村氏

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 現在、日本にいる中国人・台湾人は69万人近く。この20年間で5倍になり、在日コリアンを12万人以上引き離している。が、日本人の中国に対するイメージは戦後最悪だ。昨年末の内閣府の調査結果では、「中国に親しみを感じない」という回答は77.8%に上った。

 これは、在日チャイニーズが増えて、日本人が彼らと身近に接してきた結果なのだろうか。ノンフィクション作家の野村進氏は、日本人の中国人イメージは10年前から変わっていないと説く。それでは、日本で暮らす中国人・台湾人のリアルとはどのようなものか。ノンフィクション作家・野村進氏が、200人以上の中国人と接して彼らの姿を描き出したのが本書『島国チャイニーズ』だ。

――本書には、日本に愛着を持って将来もいたいと思う中国人留学生が登場してきますが、日本人のイメージで根強くあるのが、「反日教育」で日本を憎んでいて不法就労している、というものですね。

 入管と日本の学校が受け入れの審査を厳しくした結果、不法就労の学生は減っています。歴史の問題は根深いですが、だからといって中国人は反日とは言い切れません。留学生と接していると、中国の若者が驚くほど日本のサブカルチャー好きなのがわかります。

 確かに、「太平洋戦争はアジア解放の戦争」という意見に彼らは強硬に反対しますが、目の前の日本人と侵略者のイメージを重ねていません。それはそれ、という認識です。もともと日本にポジティブな印象を持っているから日本に進学するという、当然のことを忘れるべきではないでしょう。

――「日本人らしく」なっていく在日チャイニーズも多いとか。

 学生と一緒に上海に寄ったら、中国人留学生が、列に並ばない中国人を見て「こういうところが中国人のよくないところだ」と言ったことがありました。

 また、小中一貫の中華学校「神戸中華同文学校」では、「むかしの日本の村の学校」を理想に学校運営がなされています。規律を重んじて、掃除の大切さを教え、家の手伝いもさせる教育は、児童の1割を日本人が占めるくらい、日本の親からも人気を得ていますよ。日本に溶け込もうという在日チャイニーズは多いです。

 しかし、中国人の多くがそのような思いでいることに日本人が気づかず、いまだ犯罪者予備軍のようなステレオタイプな中国人イメージを持っている人がいます。そんな人がそばにいて嫌がらせを受け、「反日」となって帰国するケースが後を絶ちません。2005年の中国の反日デモの主催者のひとりは、日本留学経験者でした。

――労働人口減少対策として、移民受け入れが議論されています。在日チャイニーズの思いをくみ取れるかどうかは、将来の移民政策がうまくいくかどうかを占うことにもつながりますね。

 まだまだ問題はありますが、日本は比較的、移民政策に成功している国であると思います。差別がいちばん大きな形で現れるのが結婚だと思いますが、在日コリアンの9割は日本人と結婚しているからです。

 歴史的に見ても、日本は海外の文化を取り入れることで発展してきました。無知から生じる差別は日本のためになりません。まずは、在日チャイニーズのリアルな姿を知ってほしいと思います。

●野村進
1956年生まれ、ノンフィクション作家、拓殖大学国際学部教授。著書に『コリアン世界の旅』など

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