U19アジア選手権での敗戦を受けて、日本協会の田嶋幸三専務理事は「Jリーグを優先して、Jリーグのためになるのか」と発言したという。
実際に布啓一郎監督の胸中はうかがい知れない。だが多くのJクラブのレギュラークラスが代表に入らなかった。田嶋専務理事が名前を挙げた原口元気(浦和)を筆頭に、小野裕二(横浜)高木兄弟(東京V)なども所属クラブでのプレーに専念していた。客観的に最高の戦力が揃わなかったことは間違いないだろう。

だがせっかく十代でプロのトップチームのレギュラーの座を獲得している選手たちにとって、代表と所属クラブでどちらが成長できるかは難しい問題だ。もちろん十代の日本代表が常にアジア予選で負けてもいいわけがない。逆に十代から世界を経験し続けてこそ、日本サッカー全体が前進していける。
しかしそのためには、まず日本協会が真剣に勝ちにいく姿勢を見せる必要がある。J各クラブは前出の選手たちを、十代で、プロで活躍できるまでに育て上げた。言わばクラブの努力の結晶で、目玉商品でもある。その大事な選手たちを重要なリーグ戦から外すには、Jクラブの監督たちが「これならあずけてもいい」と納得できるスタッフを、協会側が用意するべきだろう。
 
念ながら今回のU19代表スタッフは、まるで説得材料を欠いた。布監督は2004年に地元開催のU16アジア予選でグループリーグ敗退を喫している。つまり布氏の実績的裏づけは市立船橋時代に築き上げたものになるが、それでは市立船橋を勝たせた手法が、国際舞台で通用するのかという疑問が残る。関係者は「布氏も昔とは変わったから」と言うが、逆に変わったことが評価されたなら変わってからの蓄積が要る。
また牧内辰也コーチは、前回のU19アジア選手権で日本代表を率いて世界切符を逃している。結局事情を知れば、誰もが疑問視する中でチームは船出をした。捲土重来の機会を与えるのがすべて悪いとは言わない。しかし与えるなら、なぜ与えるのか、ファンも関係者も納得できるだけの材料を揃えなければならない。

さらにJリーグにも問題はある。今回のようにU19代表が活動中でもリーグ戦は続く。またフル代表が合宿や試合を行っている時でも、ナビスコカップが開催される。要するにクラブは協会に選手を提供することで協力しているのに、ベストメンバー規定などという矛盾したルールがある。代表選手が抜けた時こそ、クラブにとっては新しい選手を抜擢するチャンスなのに、そこに規制が設けられている。

日本やアジアの現状を考えれば、代表チームは象徴的な存在で、強くなければ盛り上がらない。だが選手を雇用しているのはクラブだ。協力を仰ぐ機構側は、説得するに値する環境を整える義務がある。
年齢別代表の監督には、どんな人物が相応しく、どうやってセレクトされるのか。技術委員会は、そこをもっと明確に基準を示すべきだろう。むしろ育成セクションは、トップの強化以上に重要になる。平等に優秀な人材を見極める尺度がないなら、このポストこそ外国から招いた方がいい。(了)