【ドルトムント×ヴォルフスブルク】 香川真司 ブンデスリーガ初ゴール
■ 第3節
ブンデスリーガの第3節。9月7日(火)に日本代表の一員としてキリンチャレンジカップのグアテマラ戦に出場してからドイツに帰国したボルシア・ドルトムント所属のMF香川真司は過密日程にもかかわらず、リーグ戦3試合連続で先発出場。ドルトムントは第2節のシュツットガルト戦で3対1の勝利。今シーズン初勝利を飾っている。
ホームのドルトムントは<4-2-3-1>。GKヴァイデンフェラー。DFオヴォモイェラ、スボティッチ、フメルス、シュメルツァー。MFケール、サヒン、ブラスチコフスキ、香川真司、グロスクロイツ。FWバリオス。18歳のMFゲッツェがスタメンから外れてMFブラスチコフスキが先発出場。
この日の対戦相手は2008-2009年のリーグ王者のヴォルフスブルク。シーズンオフにブラジル代表のMFジエゴらを獲得し、大型補強を敢行したものの開幕から2連敗中。しかも第2節のマインツ戦はホームで前半30分までに3点リードを奪いながらも、まさかの3対4の大逆転負けを喫した。怪我から回復して、今シーズン初のベンチ入りを果たしたMF長谷部がチームの悪いムードを変えられるか。
■ 2対0の快勝
試合は予想以上にドルトムントの動きがよくて、一方的に試合を支配する。前線からのプレスが効果的で、ヴォルフスブルクはほとんどボールをキープできない。時折、MFジエゴが個人技で打開を図るがそれも単発に終わることが多い。前半は0対0で折り返したが、後半5分にドルトムントはMFケールのパスからMFサヒンが得意の左足でミドルシュートを放つと、これが鮮やかに決まって1点を先制する。
1点ビハインドのヴォルフスブルクは後半8分にMFシセロに代えてMF長谷部を投入。しかし、ドルトムント・ペースは変わらず、後半22分に左サイドから中央に入ってきたMFグロスクロイツのスルーパスからMF香川がボールを受けると、巧みなトラップでGKと1対1となる。そして、そのまま冷静にGKの動きを見て右足でゴール。MF香川のブンデスリーガでの初ゴールでドルトムントが2点目を挙げる。試合はそのまま2対0で終了。
結局、MF香川はこの日もスタメンフル出場。3試合にして待望の初ゴールを記録し、チームの連勝に貢献。一方、MF長谷部は途中出場するも見せ場は作れず。ヴォルフスブルクは開幕から3連敗スタートとなった。
■ ドルトムントは2連勝
開幕戦はホームでレバークーゼンに0対2で敗れたドルトムントだったが、シュツットガルト、ヴォルフスブルクという難敵を相手に連勝。いいムードになってきた。この日はヴォルフスブルクの出来の悪さにも助けられたが、内容も充実していて危なげなかった。
特に効果的だったのが前線からのプレスで、ヴォルフスブルクにはブラジル代表のMFジエゴ、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表のFWジェコというスペシャルなタレントがいるが、彼らにボールが渡るケースは少なくて、ボールを奪われてもすぐに囲んでボールを奪い返した。チーム全体の守備が非常によかった。
もちろん、トップ下のMF香川もしっかりと守備で貢献出来ていた。相手のボランチをケアする仕事がメインとなるが、必要なときには、相手GKやDFにもしっかりとプレッシャーがかけられていた。過密日程ということもあって「フル出場はしないか?」と思われたが、結局、フル出場。2点リードと余裕がある展開とはいえ、守備力も考えると「MF香川を外すことはできない。」というのが、クロップ監督の考えなのだろうか。
プレシーズンやリーグ戦でのMF香川の評価は非常に高いが、攻撃面だけではなく守備面も評価されているはず。守備の場面で1対1になると劣勢になるのは仕方ないが、豊富な運動量で相手を苦しめている。攻撃に関しては、セレッソ大阪時代と比べて、短い期間で何かが劇的に向上しているわけではないが、「守備意識」や「守備のときのポジショニング」という点では確実に向上しているように感じる。
■ ブンデス初ゴール
前半から元ブラジル代表のMFジョズエに密着マークされていたため、なかなか自由が与えられなかったMF香川。この試合で「チームとしてどのように戦うのか」がほとんど見えてこなかったヴォルフスブルクであるが、MF香川へのケアだけは疎かにしていなかった。結果、前半はあまりボールに触ることが出来ずに見せ場を作れなかったが、1点を先制されて少し前掛かりになったヴォルフスブルクに隙が生まれたところを見逃さずに、自身の最初のビッグチャンスを確実にネットに沈めた。
このときのMFグロスクロイツからのパスはスピードがあって、簡単にコントロールできるような種類のパスではなかった。少しでもコントロールに失敗すると、シュートまで持ち込めなかったり、シュートを打ててもGKにコースを消されてノーチャンスになりうるパスだったが、簡単にコントロールして、完全フリーの「1対1」を作った。
リーグ戦は3試合目。FWバリオス、MFゲッツェがすでにゴールを決めていて、MFグロスクロイツもアシストを記録している。攻撃陣のほとんどが、すでに目に見える結果を残しており、MF香川も乗り遅れたくはなかったところ。いいゴールとなった。
■ ゴールを生む高いテクニック
1週間前のパラグアイ戦の決勝ゴールのシーンでも、火曜日のグアテマラ戦のFW森本の2点目のゴールを生んだシーンでも発揮されたが、この日のゴールシーンも、正確な「ボールコントロール」がゴールにつながっている。
「日本人はテクニックがある。」と外国の人から評価されることが多いが、その多くは中盤のエリアでのみ生きるテクニックであり、「ゴール前は別」と考えざる得なかったが、MF香川の技術の高さはゴール前でも生きている。正確なボールがコントロールできるので、シュートコースも作れるし、GKの動きを確認して落ち着いてシュートを放つことも出来る。だからゴールチャンスを確実にネットに沈めることが出来ていて、中盤の選手としては破格の得点力を示している。
今までの日本的なテクニシャンとは、一味違ったプレーを見せるMF香川。彼は、「ゴールを奪う」という攻撃における最大の目的のために「テクニック」を最大限に用いることが出来る。「非・テクニック至上主義」の考えを揺さぶるほどの活躍であり、改めて基本技術の重要性を感じさせるプレーを続けている。
■ ゴールシーン以外は?
ただ、この試合はゴールシーン以外の見せ場は少なくて、チームが圧倒的に攻め込んでいながら、なかなかいい形を作れなかった。これはマイナス評価となる。
その理由として、考えられるのが日本からドイツに戻ってきたばかりという疲労の影響。火曜日に代表の試合を戦って、土曜日にブンデスリーガでプレー。中3日であり、時差ボケもあったことだろう。「欧州→日本→欧州」の移動も初体験で、MFジョズエに厳しくマークされていたとはいえ、「そのマークを振りきって仕事をする。」というレベルにまで達しなかった。
もちろん、MFジョズエがMF香川に過剰と思えるほどマンマークに付いていたため、MF香川がボランチの位置に引いてくることで「MFジョズエがいるはずのスペースががら空きになる」いう効果があったので、無理に攻撃に関与せずともチームに貢献は出来ていたが、もう少し見せ場が欲しかったところ。数少ないチャンスを確実にもの決めるというのも大事だが、90分トータルでみると活躍度はかなり控えめだったといえる。
■ パスのタイミング
少し気になるのは、MF香川が欲しいタイミングでパスが出てこないシーンが、多々、見られることである。プレシーズンのマンチェスター・シティ戦の前半と比べると状況は確実によくなってきているが、先日のパラグアイ戦でバイタルエリアでフリーになりかかったMF香川の動きを見逃さずに正確なパスを供給し続けた「MF中村憲剛の役目の選手」はいなかった。
前述のように「マークが厳しかった」という理由もあるとは思うが、もう少しMF香川にボールが集まったほうがドルトムントの攻撃はスムーズに行くような気はする。ドルトムントというチームだけの傾向なのか、ブンデスリーガ全体の傾向なのか、「中央へのグラウンダーのパス」は多用されず、「まずはサイドに展開する」というのが徹底されているようで、リスキーなパスはあまり歓迎されない。ボールを奪ってからのファーストパスも安全第一なので、「相手に奪われる可能性もあるが通ればビッグチャンスになりそう」と思われる場面もチャレンジパスはせずに、無難なパスを選択するケースが多い。
このあたりは歯がゆさも感じるが、今後、この状況がどう変わっていくのか、これは注目である。結果を残すことでチームメイトが変わっていくのか?、MF香川がチームの方針にアジャストしていくのか?いい形でボールを持ったら高い確率でチャンスにつなげることが出来ているので、その回数をどのようにして増やしていくのか?ここが改善できればシーズンでの10ゴールもみえてくる。
■ サヒンとの関係
MF香川がバイタルエリアで前を向いて仕掛けられる回数を増やすためには、FWルーカス・バリオスのポストプレーを期待するか、ボランチのMFヌリ・サヒンのどちらかが手っ取り早い。しかし、パラグアイ代表のFWバリオスのポストプレーはそれほど精度が高いわけではなく、多くは期待できない。FWバリオスは典型的なストライカーで、気まぐれなところもある。
となると、MFサヒンとのホットラインを確立したいところ。MFサヒンは1988年生まれなので、MF香川とは日本的な区切りで考えると同学年にあたるが、16歳でブンデスリーガにデビューを果たしているので経験値は高い。ポジションはボランチであるが典型的なゲームメーカータイプであり、左右にボールを振って攻撃を組み立てるタイプである。
前線で動いてボールをもらいたいMF香川との相性は悪くないはずであり、MFサヒン→MF香川のラインが出来るとドルトムントの攻撃力は高まるだろう。MFグロスクロイツやMFゲッツェとのコンビネーションはよくなってきているので、MFサヒンとの連携も向上させたい。
■ 厳しいヴォルフスブルク
一方のヴォルフスブルクは開幕3連敗。イングランド代表監督を経験したマクラーレン監督とリトバルスキ・アシスタントコーチという新しい体制でスタートを切ったが、まさかのスタートとなった。この試合は内容も散々で、厳しいシーズンになりそうである。
2年前のリーグ王者であり、MFジエゴら世界トップクラスのタレントもいるが、攻撃でも守備でも中途半端な感じでチームとしてどう戦うのかが、なかなか見えてこない。新しいブラジル代表でも活躍が期待されるMFジエゴのドリブルとパスは創造性があって面白いが、チームとのサポートが少なくて孤立してしまうケースが多かった。
その中でMF長谷部は怪我も治ってきて途中出場。流れを変えるには至らなかったが、チームの現状を考えると次節からのスタメン出場も十分に考えられる。ハードワーク出来る選手が少ないので、MF長谷部のような選手こそがヴォルフスブルクには一番、必要だと思われるが・・・。
香川真司 (かがわ・しんじ)
0680 2007/08/06 【C大阪×仙台】 センス溢れる香川真司
0726 2007/09/09 【福岡×C大阪】 新しいタイプのドリブラー
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1312 2009/01/19 日本代表MF香川真司を論ずる。
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ブンデスリーガの第3節。9月7日(火)に日本代表の一員としてキリンチャレンジカップのグアテマラ戦に出場してからドイツに帰国したボルシア・ドルトムント所属のMF香川真司は過密日程にもかかわらず、リーグ戦3試合連続で先発出場。ドルトムントは第2節のシュツットガルト戦で3対1の勝利。今シーズン初勝利を飾っている。
ホームのドルトムントは<4-2-3-1>。GKヴァイデンフェラー。DFオヴォモイェラ、スボティッチ、フメルス、シュメルツァー。MFケール、サヒン、ブラスチコフスキ、香川真司、グロスクロイツ。FWバリオス。18歳のMFゲッツェがスタメンから外れてMFブラスチコフスキが先発出場。
■ 2対0の快勝
試合は予想以上にドルトムントの動きがよくて、一方的に試合を支配する。前線からのプレスが効果的で、ヴォルフスブルクはほとんどボールをキープできない。時折、MFジエゴが個人技で打開を図るがそれも単発に終わることが多い。前半は0対0で折り返したが、後半5分にドルトムントはMFケールのパスからMFサヒンが得意の左足でミドルシュートを放つと、これが鮮やかに決まって1点を先制する。
1点ビハインドのヴォルフスブルクは後半8分にMFシセロに代えてMF長谷部を投入。しかし、ドルトムント・ペースは変わらず、後半22分に左サイドから中央に入ってきたMFグロスクロイツのスルーパスからMF香川がボールを受けると、巧みなトラップでGKと1対1となる。そして、そのまま冷静にGKの動きを見て右足でゴール。MF香川のブンデスリーガでの初ゴールでドルトムントが2点目を挙げる。試合はそのまま2対0で終了。
結局、MF香川はこの日もスタメンフル出場。3試合にして待望の初ゴールを記録し、チームの連勝に貢献。一方、MF長谷部は途中出場するも見せ場は作れず。ヴォルフスブルクは開幕から3連敗スタートとなった。
■ ドルトムントは2連勝
開幕戦はホームでレバークーゼンに0対2で敗れたドルトムントだったが、シュツットガルト、ヴォルフスブルクという難敵を相手に連勝。いいムードになってきた。この日はヴォルフスブルクの出来の悪さにも助けられたが、内容も充実していて危なげなかった。
特に効果的だったのが前線からのプレスで、ヴォルフスブルクにはブラジル代表のMFジエゴ、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表のFWジェコというスペシャルなタレントがいるが、彼らにボールが渡るケースは少なくて、ボールを奪われてもすぐに囲んでボールを奪い返した。チーム全体の守備が非常によかった。
もちろん、トップ下のMF香川もしっかりと守備で貢献出来ていた。相手のボランチをケアする仕事がメインとなるが、必要なときには、相手GKやDFにもしっかりとプレッシャーがかけられていた。過密日程ということもあって「フル出場はしないか?」と思われたが、結局、フル出場。2点リードと余裕がある展開とはいえ、守備力も考えると「MF香川を外すことはできない。」というのが、クロップ監督の考えなのだろうか。
プレシーズンやリーグ戦でのMF香川の評価は非常に高いが、攻撃面だけではなく守備面も評価されているはず。守備の場面で1対1になると劣勢になるのは仕方ないが、豊富な運動量で相手を苦しめている。攻撃に関しては、セレッソ大阪時代と比べて、短い期間で何かが劇的に向上しているわけではないが、「守備意識」や「守備のときのポジショニング」という点では確実に向上しているように感じる。
■ ブンデス初ゴール
前半から元ブラジル代表のMFジョズエに密着マークされていたため、なかなか自由が与えられなかったMF香川。この試合で「チームとしてどのように戦うのか」がほとんど見えてこなかったヴォルフスブルクであるが、MF香川へのケアだけは疎かにしていなかった。結果、前半はあまりボールに触ることが出来ずに見せ場を作れなかったが、1点を先制されて少し前掛かりになったヴォルフスブルクに隙が生まれたところを見逃さずに、自身の最初のビッグチャンスを確実にネットに沈めた。
このときのMFグロスクロイツからのパスはスピードがあって、簡単にコントロールできるような種類のパスではなかった。少しでもコントロールに失敗すると、シュートまで持ち込めなかったり、シュートを打ててもGKにコースを消されてノーチャンスになりうるパスだったが、簡単にコントロールして、完全フリーの「1対1」を作った。
リーグ戦は3試合目。FWバリオス、MFゲッツェがすでにゴールを決めていて、MFグロスクロイツもアシストを記録している。攻撃陣のほとんどが、すでに目に見える結果を残しており、MF香川も乗り遅れたくはなかったところ。いいゴールとなった。
■ ゴールを生む高いテクニック
1週間前のパラグアイ戦の決勝ゴールのシーンでも、火曜日のグアテマラ戦のFW森本の2点目のゴールを生んだシーンでも発揮されたが、この日のゴールシーンも、正確な「ボールコントロール」がゴールにつながっている。
「日本人はテクニックがある。」と外国の人から評価されることが多いが、その多くは中盤のエリアでのみ生きるテクニックであり、「ゴール前は別」と考えざる得なかったが、MF香川の技術の高さはゴール前でも生きている。正確なボールがコントロールできるので、シュートコースも作れるし、GKの動きを確認して落ち着いてシュートを放つことも出来る。だからゴールチャンスを確実にネットに沈めることが出来ていて、中盤の選手としては破格の得点力を示している。
今までの日本的なテクニシャンとは、一味違ったプレーを見せるMF香川。彼は、「ゴールを奪う」という攻撃における最大の目的のために「テクニック」を最大限に用いることが出来る。「非・テクニック至上主義」の考えを揺さぶるほどの活躍であり、改めて基本技術の重要性を感じさせるプレーを続けている。
■ ゴールシーン以外は?
ただ、この試合はゴールシーン以外の見せ場は少なくて、チームが圧倒的に攻め込んでいながら、なかなかいい形を作れなかった。これはマイナス評価となる。
その理由として、考えられるのが日本からドイツに戻ってきたばかりという疲労の影響。火曜日に代表の試合を戦って、土曜日にブンデスリーガでプレー。中3日であり、時差ボケもあったことだろう。「欧州→日本→欧州」の移動も初体験で、MFジョズエに厳しくマークされていたとはいえ、「そのマークを振りきって仕事をする。」というレベルにまで達しなかった。
もちろん、MFジョズエがMF香川に過剰と思えるほどマンマークに付いていたため、MF香川がボランチの位置に引いてくることで「MFジョズエがいるはずのスペースががら空きになる」いう効果があったので、無理に攻撃に関与せずともチームに貢献は出来ていたが、もう少し見せ場が欲しかったところ。数少ないチャンスを確実にもの決めるというのも大事だが、90分トータルでみると活躍度はかなり控えめだったといえる。
■ パスのタイミング
少し気になるのは、MF香川が欲しいタイミングでパスが出てこないシーンが、多々、見られることである。プレシーズンのマンチェスター・シティ戦の前半と比べると状況は確実によくなってきているが、先日のパラグアイ戦でバイタルエリアでフリーになりかかったMF香川の動きを見逃さずに正確なパスを供給し続けた「MF中村憲剛の役目の選手」はいなかった。
前述のように「マークが厳しかった」という理由もあるとは思うが、もう少しMF香川にボールが集まったほうがドルトムントの攻撃はスムーズに行くような気はする。ドルトムントというチームだけの傾向なのか、ブンデスリーガ全体の傾向なのか、「中央へのグラウンダーのパス」は多用されず、「まずはサイドに展開する」というのが徹底されているようで、リスキーなパスはあまり歓迎されない。ボールを奪ってからのファーストパスも安全第一なので、「相手に奪われる可能性もあるが通ればビッグチャンスになりそう」と思われる場面もチャレンジパスはせずに、無難なパスを選択するケースが多い。
このあたりは歯がゆさも感じるが、今後、この状況がどう変わっていくのか、これは注目である。結果を残すことでチームメイトが変わっていくのか?、MF香川がチームの方針にアジャストしていくのか?いい形でボールを持ったら高い確率でチャンスにつなげることが出来ているので、その回数をどのようにして増やしていくのか?ここが改善できればシーズンでの10ゴールもみえてくる。
■ サヒンとの関係
MF香川がバイタルエリアで前を向いて仕掛けられる回数を増やすためには、FWルーカス・バリオスのポストプレーを期待するか、ボランチのMFヌリ・サヒンのどちらかが手っ取り早い。しかし、パラグアイ代表のFWバリオスのポストプレーはそれほど精度が高いわけではなく、多くは期待できない。FWバリオスは典型的なストライカーで、気まぐれなところもある。
となると、MFサヒンとのホットラインを確立したいところ。MFサヒンは1988年生まれなので、MF香川とは日本的な区切りで考えると同学年にあたるが、16歳でブンデスリーガにデビューを果たしているので経験値は高い。ポジションはボランチであるが典型的なゲームメーカータイプであり、左右にボールを振って攻撃を組み立てるタイプである。
前線で動いてボールをもらいたいMF香川との相性は悪くないはずであり、MFサヒン→MF香川のラインが出来るとドルトムントの攻撃力は高まるだろう。MFグロスクロイツやMFゲッツェとのコンビネーションはよくなってきているので、MFサヒンとの連携も向上させたい。
■ 厳しいヴォルフスブルク
一方のヴォルフスブルクは開幕3連敗。イングランド代表監督を経験したマクラーレン監督とリトバルスキ・アシスタントコーチという新しい体制でスタートを切ったが、まさかのスタートとなった。この試合は内容も散々で、厳しいシーズンになりそうである。
2年前のリーグ王者であり、MFジエゴら世界トップクラスのタレントもいるが、攻撃でも守備でも中途半端な感じでチームとしてどう戦うのかが、なかなか見えてこない。新しいブラジル代表でも活躍が期待されるMFジエゴのドリブルとパスは創造性があって面白いが、チームとのサポートが少なくて孤立してしまうケースが多かった。
その中でMF長谷部は怪我も治ってきて途中出場。流れを変えるには至らなかったが、チームの現状を考えると次節からのスタメン出場も十分に考えられる。ハードワーク出来る選手が少ないので、MF長谷部のような選手こそがヴォルフスブルクには一番、必要だと思われるが・・・。
香川真司 (かがわ・しんじ)
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1161 2008/07/31 Jリーグを彩るダイナモたち
1312 2009/01/19 日本代表MF香川真司を論ずる。
1665 2009/05/25 【C大阪×福岡】 乾貴士と香川真司 二人の未来図 (生観戦記 #5)
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