25日のリーグ・アン第10節マルセイユ対パリ・サンジェルマン(PSG)が延期されたことで、さまざまな波紋が生じている。28日付レキップ紙が報じた。

 延期の理由は、試合前日までにPSGの主力3選手が新型インフルエンザに感染し、当日になって選手・スタッフら数名に感染の疑いがあることが判明したため。プロサッカー連盟(LFP)は、試合開始の数時間前になって、ようやく延期の決定を下した。

 この決定に、すでにマルセイユに乗り込んでいたPSGサポーターのうち約350人が激怒、街なかや駅で器物損壊を行なった。さらに地元サポーターがこれを迎え撃つ形で乱闘に発展、機動隊が出動し、催涙ガスやフラッシュボールを使用する事態に及んだ。およそ20人が負傷、少なくとも10数人が逮捕される大混乱となった。

 マルセイユとパリ・サンジェルマンの対戦は“フランス版クラシコ”と呼ばれ、サポーター同士のライバル意識がとりわけ強く、つねに厳重な警備態勢が敷かれる。延期決定がこうした混乱に発展することは十分に予測できた中、LFPのティリエ会長は、「治安当局に連絡をとり、延期によって生じるリスクに対応できるかどうかを事前に確認した」と主張している。

 ところが27日になって、マルセイユを管轄するブッシュ・デュ・ローヌ県警のクライマン長官が「そのような事前確認はなかった。我々は延期の連絡を受けただけ」とLFP会長の“ウソ”を糾弾した。

 ティリエ会長には、主力選手を欠いて不利になったPSGからの圧力に屈したという疑惑もある。マルセイユのデシャン監督は「うちから感染例が出ても、延期にはならなかっただろう」と“首都のクラブ”の影響力が色濃い決定を嘆いた。実際、選手が新型インフルエンザに感染した例は、PSGがはじめてではない。これまでにモナコら4クラブで感染例や感染の疑いがあった。

 延期による経済的なダメージも無視できない。マルセイユ市が受けた損害は、数十万ユーロに及ぶとされ、クラブにも少なくとも35万ユーロ(約4700万円)の損害が発生。PSGも、サポーターに交通費を払い戻しするだけで15万ユーロ(約2000万円)の出費を迫られる。中継局のカナル・プリュスも同じく15万ユーロの人件費を無駄にした。

 さらに、マルセイユ対PSG戦の新たな試合日程をめぐる話し合いも紛糾している。マルセイユはチャンピオンズリーグを戦うために過密スケジュールを強いられており、その前後の試合開催には強く難色を示している。またフランス代表のW杯予選プレーオフも予定されているため、11月中旬の開催も困難だ。ただし両軍のメンバーで前回招集されたのはマルセイユのGKマンダンダのみであるのも事実。しかしドメネク監督は「問題外」と抵抗を示している。

 新たな試合日程は29日に発表される予定だが、例外的に冬の移籍期間後となる2月に開催される見通しもある。いずれにせよ、各方面に大混乱を招いたティリエLFP会長に対する批判は高まっており、ダシエ・マルセイユ会長などから辞任を要求する声も上がっている。