フィオレンティーナのコルヴィーノGMは、賭けに勝ったと今頃ほくそ笑んでいる。賭けた目には『ズドラヴコ・クズマノビッチ』と書かれていた。UEFAが選定するU21欧州ベストイレブンの最新リストを見れば、コルヴィーノが内心『ビンゴ!』と叫んだことがわかる。

 若手を重用しつつ、来季のCL出場権をかけて善戦するヴィオラの中盤の底をつかさどるクズマノビッチだが、まずはその語学力に驚かされる。ボスニア人の父とクロアチア人の母をもち、スイスのトゥーンで生まれた。セルビア語、独語、仏語、英語、伊語を流暢に操る。細かなアクセントまで完璧で、まるでコンピュータのようだという。昨年1月、コルヴィーノGMに見出され、バーゼル(スイス)からフィオレンティーナに移籍してきた。

「それでも最初の頃はきつかった。言葉を覚えて、イタリアのサッカーに適応しなくちゃならなかったから。悲しい時期もあったけど、正しいタイミングでトップチームに上げてくれたプランデッリ監督に感謝してます」

 名前からも明らかなように、クズマノビッチは、FWイブラヒモビッチ(インテル)と同じスラブ系の血を持つ。実際、2人の顔の輪郭を左右対称に横から見ると、あまりの酷似ぶりに驚くほどだ。しかし悪童で知られるスウェーデン人FWとは真逆に、この若いMFは品行方正で誰にも好かれる。彼のお手本も別にいる。

「イブラは化物。でも僕のお手本はピルロ(ミラン)なんです。彼はつねに正しいポジションにいて、どんな試合でも一本のキックで決められる才能を持っている。バロンドール候補になっても驚くことじゃない」

 スイス代表への道は用意されていたが、「両親の願いを裏切ることはできなかった」とセルビア代表でプレーすることを選んだ。
 今季、UEFA杯上位進出を目指して奮闘中のフィオレンティーナ。来季CL出場がかなえば、クズマノビッチの名はさらに欧州中に広まるだろう。

・[選手名鑑]ズラフコ・クズマノビッチ - あなたの評価は!?