私も初回の電波っぷり(※注1)が話題になったのをきっかけに、ほぼリアルタイムで見ていましたが、当時はここまで盛り上がるというのは想像できませんでした。確かに平均以上には面白かったのですが、中だるみと思える回もあったので、手放しで絶賛というほどではなかったです。
(※注1)TV放映の第1話は、学生がフィルムで撮ったチープな特撮映画をアニメで忠実に表現するという、かつてない試みがアキバ系の心を鷲掴み。ちなみにテーマ曲として使用された『恋のミクル伝説』は、萌え系電波ソングのスタンダードとしてアニソン界の歴史に深く刻まれることとなった迷曲。

ただ、丁寧な作画は目を見張るものがあったので、そこは素直に感心しながら観ていました。制作を担当した「京都アニメーション」の名前は、この作品で完全にブランド化したと言えます。

ちなみに涼宮ハルヒの原作小説は角川スニーカー文庫から発行されていますが、角川といえばもうひとつ、夏のアニメ映画として公開された『時をかける少女』にも触れておきましょう。

筒井康隆原作の同小説(角川文庫刊)は過去に何度も映像化され、特に1983年に公開された原田知世(主演)・大林宣彦(監督)の劇場映画は、日本映画史上に輝く名作としてあまりにも有名です。それだけに、アニメ映画の制作発表直後は、ネット上で批判的な意見を多く見かけました。「今さらなんで時かけ?」「これはひどいリメイク商売ですね」「角川映画全盛世代の古参ヲタ層狙いかよ」等々。

私はキャラクターデザインが貞本義行(エヴァンゲリオンなどで有名)だったので、一応チェックしておこうかというユルい感じでした。そして公開初日、ほぼ予備知識ゼロの状態でテアトル新宿(聖地となった映画館)に向かったのです。そこで観たアニメ版時かけは、実にいい映画でありました。先日も音響施設が都内最高レベルの渋谷Q-AX(シネマ1)のレイトショーで通算4回目の鑑賞をするなど、今では個人的にも思い入れの深い作品となっています。

この時かけは、口コミで評判が広まった異例のヒット作として、新聞や雑誌でも報道されました。映画賞もすでに「シッチェス国際映画祭(スペイン)アニメーション部門最優秀長編作品賞」「アニメーション神戸賞(作品賞:劇場部門)」を受賞していますが、今のところこの受賞に関する話題は一般マスコミからはほぼスルーされています。もう少し話題になっても……と、観た人間としてはつい思ってしまいますが、これからアニメファンの多いアメリカやフランスあたりで公開されれば、新たな盛り上がりがあるかも知れません。今後の展開に期待したいところです。
『時をかける少女 NOTEBOOK』カラー資料や細田守(監督)×筒井康隆(原作)対談などが掲載されたファン必須アイテム。品薄で市場では入手し辛くなっております。こちらは絵コンテ集。肉筆で描かれた演出支持の数々に監督の想いを感じることができます。当然ですが、NOTEBOOK・絵コンテ集ともにネタバレ満載なので映画未見の人は注意が必要。渋谷Q-AXの入り口付近の写真。当日、時かけはレイトショーで1日1回だけの上映でしたが、宣伝ポスターはかなり目立つところに設置されてました。映画館サイドの愛を感じます。


TVアニメの話に戻りますが、放映本数が多すぎることによる悪影響は、作画崩壊というカタチで表れることがよくあります。最近特に強烈だった作画崩壊と言えば、TVアニメ『夜明け前より瑠璃色な』の話題は外せません。これも『涼宮ハルヒの憂鬱』と同じく地方U局を中心に放映されていますが、第3話の作画が相当ヤバイことになってました。詳しく書くのは控えますが、料理対決の場面で描写されたキャベツ(?)の作画は、ガチで近所の小学生レベル。ちょっと手書きで書いてみますね。
ガンダムのハロに似ている気がする。ゴルフボールの断面解説図に見えなくもないような。


上の絵はそれなりに忠実に描けたんじゃないかと。あ、ウソじゃないですよ。気になる人はネットで調べてみてください。「夜明け前」「キャベツ」ですぐ見つかると思います。日本のアニメ産業が抱える暗部の一端を垣間見ることができますよ。

 ちょっとフォローしておきますが、作画に目をつむれば作品自体は結構面白いです。私もストーリーや登場キャラが気に入ってるので毎週観ていますしね。それだけに、あの作画崩壊事件は衝撃的で……。DVDには修正した映像が収録されますよう、心の底からお願い申し上げます>関係者の皆様。

長年アニメを観ていると、どんな作品でも楽しめる特殊スキル(※注2)が身につくことがあります。このスキルを持った人々は、このキャベツ事件も祭りとして楽しめてしまったのですが、本来はあってはならないこと。原作(ゲーム)ファンの落胆ぶりを考えると、歓迎できることではありません。
(※注2)狂った作画や演出、超脚本(トンデモ脚本)といったダメな部分を愛し、楽しんでしまえる能力のこと。これができるようになるとアキバ系としては有段者レベル(別に嬉しいことではない)。

といったわけで、アニメは希望が持てるジャンルではありますが、いろいろと問題が山積みなのも事実です。現在、アニメ関連で「儲ける!」的な考えの企業や個人投資家の方々は、もう一度慎重になるべきでしょう(下手すると痛い目に会いますよ)。個人的にTVアニメは、週30本くらいあれば十分。その中から質の高い作品が複数出てくるようになれば、と思ってしまう今日このごろなのであります。

【カオス通信】記事バックナンバー

■こちらもオススメ!ライブドア独自コラム
独女通信 | 拝啓、イエ男くん


レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。

Copyright 2006 livedoor. All rights reserved.