日本農業新聞は、農水省が初めて開示した農林水産物・食品の輸出対象約1000項目の関税番号を基に、輸出の中身を検証した。農産物と分類されながら、実際に何が含まれるのか不明な品目が輸出額の上位を占めることが分かった。関税番号別で「その他の調製食品のその他」が798億円で輸出額トップだが、その中身は不明。政府は今年1兆円の目標達成を目指しているが、このままでは輸出による国内農業振興の効果は不透明だ。(特別編集委員・山田優、鈴木薫子)

化学合成品も合算

 
 農水省は3月になって「農林水産物輸出入概況における農林水産物の対象範囲」と題した1枚の表を本紙に初めて開示した。

 同省は貿易統計を担当する財務省関税局のデータから独自に数値を取り出し、農林水産物・食品の輸出額として公表してきた。

 政府は2018年の農林水産物・食品輸出の総額が9068億円(速報値)で、そのうち農産物が5661億円だと説明。輸出されている約6500の関税番号の中で、約1000が政府の農林水産物・食品輸出額算定の対象だった。従来は概要しか分からなかったが、今回の開示で、どの関税番号の商品を農産物や林産物、水産物に割り振っていたのかが分かり、初めて類別の輸出額を算出することが可能になった。

 政府が農産物輸出額に計上している品目には、76億円の29類(有機化学品)や104億円の35類(タンパク系物質、変性でんぷん)、1億円の40類(ゴム製品)など、国産農産物とは縁遠い品目が多く含まれていることが判明した。

 同省輸出促進課の横島直彦課長は「政府の農林水産業・地域の活力創造プランに沿って、日本の農林水産物・食品の強みを生かせる市場を国内外に創造するのが目的。農水省の所管物資である各種加工食品の輸出振興も大切だ」と、輸出促進策が必ずしも国産農産物だけに焦点を当てていないと説明する。

 農産物輸出額5661億円の中で、同省が事例として挙げる牛肉、リンゴ、米、緑茶など目に見える農産物の輸出額を合計すると、約1000億円になった。これらは多くが国産農産物とみられる。農産物の残り4000億円以上は加工食品に含まれる。

 米粉、豚皮、清酒など、国産を主な原料にしているものもあるが、今回の分析で大半は輸入原材料を利用したものや化学合成品が占めることが分かった。1兆円の輸出目標を達成したとしても、国内の農業生産への波及は限られたものになりそうだ。  

<ことば> 関税番号

 国際条約に基づいて定められた番号。日本が輸出入する品目には全て9桁の番号が割り振られる。大きな分類として、同じような品目や種類で97の類に分けられる。例えば果実は「08類」に属し、リンゴは「0808・10・000」で、柿なら「0810・70・000」などと決められている。