シリア東部バグズで行われた民兵組織「シリア民主軍(SDF)」による過激派組織「イスラム国(IS)」掃討作戦で破壊された村を見るSDF戦闘員(2019年3月24日撮影)。(c)GIUSEPPE CACACE / AFP

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【AFP=時事】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の掃討作戦を行っていた米軍主導の有志連合は23日、ISが樹立を宣言した「カリフ制国家」を完全に壊滅させたと発表した。

 5年近くに及んだ戦いはシリア東部での勝利で終結したが、8年続いているシリア内戦はまだ終わりそうにない。カリフ制国家壊滅後のシリアに何が待っているのだろうか。

■ISは全滅したのか?

 米軍主導の有志連合とその支援を受けるクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」は、ISとの戦いは終わっていないと警告する。

 ISはシリアの広大な砂漠地域に存在感を維持している上、他の地域にも戦闘員を潜伏させており、SDFの支配地域で破壊的攻撃を続けると主張している。

 イスラム過激派専門家トーア・ハミング(Tore Hamming)氏は今後のISの活動について、シリアでの支配地域奪還を目指すよりも、反乱や奇襲攻撃に専念するようになると予想する。「現時点でISにとって重要なのは、一定の戦力を維持していることを誇示することだ」と言う。

■クルド自治区の危機

「カリフ制国家」が壊滅した今、SDFの主要な同盟相手である米国が予告通りに撤退すれば、苦労してやっと手に入れたクルド自治区は危機にさらされる。

 シリアのクルド人の大部分は内戦と距離を置き、石油資源の豊富なシリア北東部での自治区確立に力を入れてきた。だが、この地域はクルド人戦闘員を「テロリスト」とみなすトルコと、支配権を取り戻したいバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領の双方から目を付けられている。

 シリア北東部に駐留する米軍は、長年にわたるトルコの脅威と、交渉にせよ武力にせよ何とかして領土を取り戻したいシリア政府に対する盾の役割を果たしている。

 だが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は昨年12月、シリアに駐留する全米兵2000人を撤退させると宣言し、同盟相手に衝撃を与えた。米政府はその後、400人は「一定期間」残留させると述べている。

 米軍撤退の可能性が出てきたため、クルド人は自治の一部を犠牲にしなければいけないとしても、トルコの侵略を阻止するためアサド政権との関係修復を迫られるだろう。

 米軍が長くとどまればとどまるほど、ISの残党を根絶やしにするためのSDF独自の治安部隊の設置を支援してくれるのでクルド人にとって望ましい状況となると、新米国安全保障センター(CNAS)の専門家、ニコラス・ヘラス(Nicholas Heras)氏は語る。

■次はイドリブ?

 反体制デモに対する残虐な弾圧に端を発した8年間の内戦で、シリア政府軍は国土の3分の2近くを支配下に置いた。だが、いまだ制圧できない主要地域が2か所ある。北東部のクルド自治区一帯と、かつて国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の傘下にあった「タハリール・アルシャーム機構(HTS)」(旧アルヌスラ戦線<Al-Nusra Front>)が支配する北西部イドリブ(Idlib)県だ。

 イドリブは現在、アサド政権を支援するロシアと、反体制派を支援するトルコとの間で昨年9月に交わされた脆弱(ぜいじゃく)な合意によって守られている。合意により約300万人が暮らすイドリブに対する政府軍の総攻撃を回避するための非武装地帯が設定されたが、ここ数週間、イドリブへの攻撃が激しさを増している。

 在英NGO「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」によると、政府軍の空爆や砲撃によって多数の民間人が死亡し、数万人が避難を余儀なくされている。

 それでも当面、合意は保持されると、独立系シンクタンク「国際危機グループ(The International Crisis Group、ICG)」のアナリスト、サム・ヘラー(Sam Heller)氏は語る。政府軍とロシアによるイドリブ攻撃は、総攻撃の前兆というよりも戦術的な圧力だと同氏はみている。

 一方、シリア専門家のファブリス・バランシュ(Fabrice Balanche)氏は、アサド政権はイドリブではなく、米軍撤退後のクルド自治区の支配権を取り戻そうとしていると指摘する。「イドリブは待てる。いずれにせよ、誰もHTSを守ろうとはしないだろう」

【翻訳編集】AFPBB News