湯船に浸かってこそ得られる健康効果がある(写真:どかてい♪ / PIXTA)

忘年会や仕事納めで多忙な師走。身も心も疲れきったビジネスパーソンにとっては、お風呂が恋しい季節だろう。しかし、入浴医学の第一人者である早坂信哉氏によると「お風呂は正しい入り方をしていなければ、入浴後の睡眠の質を下げ、さらに疲れをためる結果になる」という。そこで、今回は早坂氏の著書『最高の入浴法』から、「医学的に正しい、疲れをとる入浴法」を紹介したい。

シャワーだけでは疲れはとれない

疲れをとるための入浴法で、最も重要なのは「全身浴で、肩まで湯船に浸かること」です。

最近の若年層については「お風呂離れ」が指摘されています。湯船に浸からず、シャワーだけで済ませてしまう人が増えています。20代では毎日湯船に浸かる人はわずか25%という報告もあります。ユニットバスで湯船が狭かったり、毎日忙しくて億劫だったり……。いろいろな原因があるでしょう。

しかし、シャワーだけでは体温も十分に上がらず、お風呂がもたらす温熱効果がしっかりと発揮されません。体が温まらなければ、血液が循環せず、疲労回復効果も低くなってしまうのです。

お風呂の温熱によって体が温まると、たくさんの血液が体中を巡るようになります。血液には、酸素や栄養分、ホルモン、免疫物質など、私たちの体にとって「大事なもの」を運び、さらに二酸化炭素や疲労物質・老化物質などの「いらないもの」を回収するはたらきがあります。

温熱効果で血流が増えることで、体の隅々の細胞まで血液が行き渡ります。新陳代謝が活発になることで、体がすっきりリフレッシュするのです。また、お風呂の水圧(静水圧)には、血液循環を促す効果がありますが、シャワーではその効果ものぞめません。

ちなみに、かつてブームになった「半身浴」ですが、「半身浴ならでは」という特筆すべき健康効果はありません。基本的には全身浴をおすすめします。半身浴では入浴にとって重要な「温熱作用」の効果が半減してしまいます。しっかりと全身でお湯に浸かったほうが体は温まり、血流もよくなります。

人間の体内にある「自律神経」には、積極的な活動をつかさどる「交感神経」と、体の修復をつかさどる「副交感神経」があります。仕事のストレスや緊張で興奮状態にある体は、交感神経が優位の状態にありますが、お湯に浸かってリラックスすることで、副交感神経優位の状態にスイッチが切り替わります。

現代社会は、心身への慢性的なストレスが多く、交感神経が必要以上に刺激されていますので、夜はいかに交感神経のスイッチをオフにできるかが、疲労回復のカギになります。

ヘトヘトになって帰宅した後、浴槽を洗ってお湯を沸かすのは、ちょっと面倒かもしれません。しかし、「シャワーだけで疲れがとれず、翌日までずっとだるさを引きずってしまう。そしてまた疲れて帰宅」という悪循環に陥ってしまいます。

十分な体温上昇(0.5〜1℃)、血流アップによる老廃物の代謝、副交感神経への刺激。これらは、湯船に浸かってこそ得られる健康効果なのです。

疲れをとる入浴法「5つのコツ」

さて、それでは湯船に浸かるときのポイントをご紹介します。

温度は40℃

温度は40℃がよいでしょう。40℃までのぬるいお湯にゆっくりと浸かると、副交感神経にスイッチを切り替えることができます。

40℃は、人によっては「すこしぬるいかな」と感じる温度設定かもしれません。この温度の利点は、幅広い年齢層・体力層にとって低リスクだというところです。のぼせやヒートショックなどの体調不良を起こしにくいという安全面のほか、10〜15分くらいの入浴時間でも十分に体が温まるので血液の流れもよくなり、疲労回復やリフレッシュ、体の痛みの改善につながります。

◆崛歓藩瓠廚埜まで浸かる

前述のように、半身浴より全身浴のほうが健康効果は高いので、しっかり肩まで浸かることが大切です。静水圧と浮力の作用により、体の隅々にまで血液を送ることができますし、温熱効果もアップします。

注意点は2つ。いきなり浴槽に浸からないこと。まずかけ湯でお湯に体を慣らしましょう。また、心臓や呼吸器に疾患のある方はあらかじめ主治医に相談しておくことです。肩までお湯に浸かると息苦しく感じる人は無理せず半身浴にします。

浸かる時間は、10分から15分

入浴の際は、「長く入らなければ!」という気負いは必要ありません。10〜15分で大丈夫。その代わり、毎日湯船に浸かることが大切です。これくらいの時間ならば、心身に大きな負担はかかりませんし、しっかりと体が温まります。顔や額が汗ばんでくるくらいが目安です。

万が一ちょっと息苦しいときは、自律神経のスイッチが交感神経に入っていることもあるので、浴槽から出て休んでください。心臓、血管、呼吸器に疾患がある方は注意が必要です。また、汗を流しながら我慢してお湯に浸かり続けると、入浴熱中症(のぼせ)になってしまいます。健康を求める入浴で体調を崩したら本末転倒ですので、お風呂の我慢大会は控えてください。

入浴剤を選ぶコツは?

入浴剤でリラックス効果アップ!

血流アップ&疲労物質除去効果がある「硫酸ナトリウム」を含む入浴剤を使用するのもいいでしょう。近年もっとも大きなシェアを占めているのは、泡が出る「炭酸系」入浴剤です。炭酸は、皮膚から直接吸収されて血管を拡げるため、血流を改善させます。また自分のお気に入りの香りを胸いっぱいに吸い込むことで、リラックス効果を高めることができます。


入浴剤を選ぶひとつの目安としては「医薬部外品」と「浴用化粧品」を選ぶことです。この2つは、安全性と有効性について国の医薬品医療機器等法による規制を受けていますので、安心して使うことができます。

入浴後は、温熱効果を逃がさない!

お風呂から出た後は、裸でのんびりするのは厳禁。早めにタオルで水分をふき取り、毛布や布団にくるまりましょう。お風呂で汗をかいた後、扇風機や冷房で涼むのは、基本的にNGです(のぼせてしまった場合は別)。せっかく温まった体が冷めてしまい、血流のよい状態がすぐに終わってしまいます。

毎日湯船に浸かることは、働く現役世代から、ご高齢の方まで、幅広い世代に有益です。私たちのチームが行った最近の研究でも

・毎日の入浴が、要介護リスクを減少させる
・毎日の入浴習慣がある人は、幸福度が高い

など、さまざまな健康効果が明らかになっています。

健康法としての入浴のすばらしいところは、「安価」で「手軽」だということでしょう。現代では浴槽がない家庭は少なくなってきていますので、毎日気軽に実践することができます。手軽かつ安価で、毎日無理なく実践できる、最高の健康法。それが入浴なのです。