宮本監督(右)の要望で今夏、G大阪に移籍した小野瀬(左)が移籍後初ゴール。横浜戦の決勝点をマークした。写真:徳原隆元

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 [J1リーグ30節]G大阪2-1横浜/10月20日/吹田S
 
 本人も、そして指揮官も待ちわびたJ1初ゴールは、値千金の決勝ゴールとなった。G大阪は86分に小野瀬康介が決めて横浜F・マリノスに逆転勝ち。宮本恒靖監督に請われて加入した男が6連勝に導いた。
 

 今季は低迷し、残留争いに巻き込まれたオリジナル10同士の対決。どちらも勝てば残留を引き寄せる一戦だった。ここで宮本監督は大胆に打って出た。連勝の流れを作った4-4-2ではなく、5-4-1でスタート。韓国代表FWファン・ウィジョ、アデミウソンと調子を上げている2人のストライカーをベンチスタートさせ、明確に「後半勝負」を仕掛けた。
 
 この狙いを最後に形にしたのが小野瀬の一発だった。1-1で迎えた86分、左サイドで倉田の入れた縦パスをアデミウソンがフリックして藤春が抜け出すと、背番号50がゴール前に走り込んで滑り込みながら右足を合わせた。
 
 7月23日、宮本監督の就任が発表され、その8日後の31日にJ2山口から加入。新指揮官が獲得を要望して移籍が実現した。横浜FCの下部組織から育ったアタッカーにとって初のJ1。「シュートチャンスが少なかったのと、1枚はがしても2枚目のカバーが来るクオリティが高かった」と壁は感じた。しかし継続的に起用されて10試合目。ようやくネットを揺らした。
 
 宮本監督からは「いつ取るねん」と冗談交じりに奮起を促されてきたなかで、やっと生まれた初ゴール。「早く決めたい気持ちはずっと持ってた。ホームで、決勝ゴール。思い出に残るゴールになったかな」。舞台を引き上げてくれた指揮官にも恩を返すメモリアルゴールになった。
 
 チームには混乱もあった。両サイドバックがボランチの位置に入り、インサイドハーフの2人がサイドに開くなど、めまぐるしくポジションを入れ替える横浜イレブン。前半は簡単に捕まえられなかった。いつもの右MFではなく右シャドーで先発した小野瀬は「ボランチとサイドバックを僕と中盤の選手(今野、遠藤)で。基本的に入れ替わるだけなので、そこのポジションにいれば相手が勝手に入れ替わってくる」と振り返ったが、失点シーンはここからやられた。
 
 36分、山中のミドルシュートを1度は防いだ小野瀬だったが、するすると今野のマークを振り切った天野につながれると、利き足の左足で身体をひねりながら中央にラストパスを供給され、ゴール前に走り込んだ仲川にドンピシャリ。主導権を握られたまま先制点を許してしまった。
 
 しかし指揮官の示した明確な作戦があるガンバイレブンの心が折れることはなかった。「前半のプランは0-0か、0-1でもオッケー」(小野瀬)。GK東口が右膝負傷で交代を余儀なくされたことは計算外だったが、後半開始からエースのファン・ウィジョを投入し、システムも4-4-2に戻した。さらに65分にアデミウソンが入ると、一気にガンバの逆襲が始まった。
 
 ズバリ狙いがはまったのは71分。中盤で山中のパスミスを倉田が奪い、ショートカウンター。アデミウソンからファン・ウィジョとつなげると、巧みにかわしてゴールに流し込んだ。「ミスを狙うというか、攻め疲れてくれたらいいなというのはあった」と倉田。J1最多53得点の一方、最多51失点が示している通り、横浜のシステムは諸刃の剣。両サイドバックが入り込んできた中盤でボール奪取すれば決定的なショートカウンターの機会になる。これを途中出場でパワー十分の2トップのコンビで見事に沈めて同点とし、終盤の逆転劇につなげた。
 
 宮本監督の狙いがずばり的中し、新鋭にも初ゴールが生まれて6連勝。この勢いはそう簡単には止まらなそうだ。