Galaxy S9+で試すスマホカメラの進化! アート写真の領域にはいれる「フォトDIY」

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スマートフォンのカメラが進歩した理由はいくつかあるが、「Instagram」をはじめとするSNSにおける写真投稿や動画の投稿の増加とニーズが大きな役割を果たしたことは間違いない。

スマホカメラは、当初はデジタルカメラと同様に暗い場所でも綺麗に撮影できることを競っていたが、今や複数のカメラを使った撮影やAIによる撮影アシスタント機能など、デジタルカメラにはなかった独自の進化を遂げはじめている。

NTTドコモおよびauの2018年夏モデルの「Galaxy S9+」もその一つだ。
トレンドである2つのカメラを搭載し、さらに独自機能としてレンズに入る光を調整する2段階の「絞り」機能を持っている。

静止画のほかにも、1秒間に960フレームのスーパースローモーション撮影では決定的なムービージェニックなシーンを共有できるなど、ユーザーニーズに合わせた進化を遂げているのだ。

今回は、Galaxy S9+での撮影のヒントや本格的な撮影をする際の問題点とその解決方をフォトDIYとして紹介したいと思う。

Galaxy S9+以外のスマートフォンでも同様の機能が使える機種なら参考になるかと思うので試してみて欲しい。

まずは、ズーム機能だ。
Galaxy S9+は広角レンズと望遠レンズの2つのカメラを搭載している。
この機能を活かして、光学2倍ズームを実現するほかにデジタルズームなら10倍ズームまで可能だ。

広角レンズと2倍ズームとなる望遠レンズの使い分けとしては、定石として、
「離れたモノを大きく写」
この用法がある。

実はそうした使い方のほかにも、望遠レンズのほうが遠近感の強調が弱まる効果がある。例えば、四角い箱を撮影する際、
望遠レンズを使えば、手前が大きく、奥に行くにつれて箱が細くなってしまう現象を抑えられる、この効果は、商品撮影などで多く利用されている。




デジタルズームは、全体的に甘めの写真になってしまうものの遠くのモノを大きく写すことができるため、旅行や運動会などイベントで活用できる機能である。

このデジタルズームは、写真の表現として大いに活用したい機能でもある。
上記の写真は平面を大きく引き伸ばした状態であるため、遠くの建物を撮っただけという写真である。




一方、上記の写真は、標準カメラ(広角レンズ)で撮影したもので、我々の目もカメラと同じく、手前は大きくそして遠くは小さく見えている。

今回注目し欲しいのは「遠景」だ。遠くに行けば行くほど、物と物の距離が近付いて見えるのがわかるだろうか。

上記の写真では、画面左手の一番手前の柱とその奥の柱は距離が離れて見えるが、さらにその奥の柱はそれほど距離が開いているようには見えない。さらにその奥は、柱がくっついているように見える。




この遠近感の違いをデジタルズームで切り取れば、白い柱の景色という写真ならではの表現となる。

これは連続する鳥居や、竹林など、本数の多さや圧迫感の演出に利用できる。
また、まばらに咲く花壇の撮影もこの手法を使えば、一面花で埋め尽くされたようなボリューム感のある写真にすることもできる。




こちらもデジタルズームで撮影しものだが、センターラインの点線は実際には数mもあるのだが遠景では点にしか見えず、距離感が圧縮されている。そして坂道も実際よりも急坂に見えるなど、強調された視覚的効果を生み出すことができるのだ。

このようにデジタルズームの使い方は、ただ遠くのものを大きくとるだけではない。
写真の面白さを活かす機能として活用してみてはどうだろうか?


Galaxy S9+にはイメージセンサーのデータをそのまま記録したRAW(生)データも保存可能である。
RAWデータにはカラーイメージセンサーの階調情報が記録されているため、その情報からもう一度写真を再構築することができる。これを「現像」と呼ぶ。

例えば、晴天下で撮影したのに、
曇りのホワイトバランスに変更したり、電球光で撮影したりと、撮影後に色味の変更が可能になるのだ。また、階調情報が通常の写真データ(jpeg)より豊富であるため、明るさの調整などにも素材として耐えうるのも特徴である。。

今回は、通常の撮影では気づかない階調を取り戻して、印象的な写真に仕上げてみたいと思う。




曇天時は、あまり写真を撮りたい気分ではなくなる。
しかし曇天ほど面白いものはない。
というのも、そこには豊かな表情をもつ雲が隠れているからである。



こちらはRAWデータをパソコン向けのソフト「Adobe Lightroom CC」で現像したもの。

階調が豊富なRAWデータなら、jpegで撮影するとただの白い空だった部分も、雲があり、印象的な写真に仕上げることができる。

HDR(ハイダイナミックレンジ)撮影に近いイメージをGalaxy S9+で撮影したRAWデータから作り出しているのである。





Lightroomの設定では、ハイライトと白レベルを下げて、明るい部分の階調を取り戻している。
その逆に黒つぶれしているシャドウや黒レベルをあげて暗い部分の階調も取り戻し、明瞭度とかすみの除去のパラメーターで調整している。

最後に自然な彩度もしくは彩度を調整して、印象的な色使いに仕上げてみた。

これは、有名な野外フェスのオフィシャル写真などでも見かける手法で、晴天や曇天などにとらわれずに野外フェスの躍動感を表現しているといえるのではないだろうか。



ふと空を見上げると雲の模様が印象的だったので、ポケットからGalaxy S9+を取り出して撮影してみた。




通常撮影では雲の模様が淡く肉眼で見た印象と異なっていたため、RAWデータで記憶に近い演出をしてみた。

季節によって変化する雲模様は面白く、これだけの表情が隠れているのがわかれば憂鬱な曇天の撮影もより楽しめるようになるではないだろうか。





晴れた日に撮った写真もRAWデータから階調を取り戻すことで印象をガラリと変えることが可能だ。




強烈な青空と雲を表現することができる。南の島で見るような印象的な空を表現可能なのである。

パソコン向けのLightroomは、Android版とアップルのiOS版も用意されている。
RAW現像に興味があったらそちらも試して見て欲しい。
Lightroom以外にも、Googleの「Snapseed」という画像編集アプリもあるので使いやすい方を選んでみるのも良いだろう。こちらもAndroid版とiOS版がある。


最後は、夜景撮影のなかでも自動車のヘッドライトやテールランプの軌跡を撮影する長時間露光という撮影方法について説明しよう。

通常の夜景撮影なら、Galaxy S9+に搭載の手ブレ補正機能とISO高感度設定で手持ちでも綺麗な写真が撮影可能だ。

今回の長時間露光は手持ちでは絶対不可能な数秒〜数十秒の遅いシャッタースピードでの撮影だ。
この撮影方法は、動く自動車の光の軌跡を1枚の写真の中に線として残すことができるのである。

Galaxy S9+には、長時間露光を可能とするプロモードを搭載している。
このため、4秒や10秒と言った遅いシャッタースピードの撮影が可能なのだ。
さらに、絞りのコントロール機能があるので、絞りをF2.4に固定することで光量を減らし、長時間露光をしても光を多く取り込み過ぎて、写真が真っ白にならないように設定できる。

シャッタースピードが数秒となるため撮影には三脚を使用する。Galaxy S9+がブレないよう気を付けて行おう。




まずは、プロモノードで4秒という長時間露光を行ったところ、光の軌跡は記録できたが、露光時間が長かったため全体的に明るくなってしまい“光”が弱まってしまっている。




RAWデータから明るさを調整することも可能だが、簡単な編集では弱まった光を取り戻すのはなかなかな難しい。

夜景写真ならこれでもありだが、今回の目的は印象的な光の軌跡を撮影することなので、これも目的の写真とは違うものなのだ。

そこで、4秒より速いシャッタースピードの2秒と1秒を試す。
光の軌跡と背景の明るさが丁度良く撮れるシャッタースピード1秒を選択してみた。




しかし、シャッタースピードが1秒では光の軌跡が短く、目的のものとは異なる結果となった。

ここで使えるテクニックが、複数枚撮影した写真の明るい部分だけを合成するコンポジット(比較明合成)撮影だ。
合成にはパソコン向けの「Adobe Photoshop CC」を使用した。

スマートフォンの場合、コンポジット撮影機能をもつカメラアプリなどもあるので、それを活用するのも良いだろう。




1秒のシャッタースピードで撮影した34枚の写真を合成したものがこちら。空の黒さと光の明度差が出せるようになった。

上記の合成にあたって今回はRAWデータに手を付けずにそのまま出力しているが、34枚共通で彩度やコントラストなどを調整して合成することで、さらに個性的なものに仕上げることが可能だ。

また、合成する枚数をコントロールすることで、光自体の明るさの調整も可能である。このコンポジット撮影は、星の撮影や蛍の撮影などでも使われているものなので、Galaxy S9+を固定できる三脚があればすぐに楽しめると思う。

スマートフォンのカメラはフルオート撮影でも綺麗に撮れることが特徴ではあるが、撮影する際に知っておくと良いことや、こんな写真を撮りたいと思ったときに使えるテクニックなどがある。カメラ任せではなく人の手を介することで個性的な写真になると言うことがわかれば、さらに撮影が楽しくなるのではないだろうか。


執筆  mi2_303