マドンナ御用達

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 ドルチェ&ガッバーナ(以下、ドルガバ)。イタリアを代表するこのブランド、甘いイメージなのに(ドルチェとは伊語で“甘い”の意)、やることはずいぶん厳しい。業務上のミスで即クビ、そのうえ身ぐるみ剥がそうとするのだ。

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 マドンナ御用達で知られるが、ほかにも、

「トランプ大統領のメラニア夫人が訪中やG7の際に着ていたし、SMAPが紅白歌合戦の司会をしたときに着たのもそう。愛用する芸能人も多い」(ファッション・ジャーナリスト)

 そんなブランドの日本法人が、元社長と部下をクビにし、彼らに280万ドル(約3億1千万円)もの損害賠償請求訴訟を起こしていたから穏やかではない。なにがあったのか、裁判資料から再現すると――。

マドンナ御用達

 昨年11月2日、出張でロンドンに向かうドルガバ・ジャパンの菅井義之社長=仮名=のもとに、ミラノ本社の経理部長名でメールが届いた。いわく、中国企業の株を買う金融取引を完了するため、今日中に中国の銀行に2件の送金をする必要がある。税務上の理由で日本から送るのがベター、ただし社内にも極秘。

 経理部長本人の社内メールから送信されていたため、菅井社長は信じて部下の田部井誠氏=仮名=に送金を指示。ただし、メールには別に個人アドレスが添付され、以後のやりとりは“経理部長”の指示通り、個人アドレスで行われた。

 ところが連休明けの11月6日、これが詐欺だったと判明。2件送金したうちの1件、280万ドルはすでに返金不能で、ミラノ本社は15日、担当者を東京に派遣、翌日、菅井氏と田部井氏はクビになり、挙句、2人の自宅が仮差押えされたうえで、提訴されたのである。

聴き取りすらない

 ところで、業務上のメールを装って送金を促すビジネスメール詐欺はいま、世界で流行している。昨年12月には日本航空が、約3億8千万円の被害を受けた旨を公表したが、

「組織として対応すべきことで、個人に責任を負わせるべきものではないと判断しました」(広報部)

 一方、オーナーのドルチェ氏、ガッバーナ氏のワンマン会社たるや……。

「代表取締役であろうと、気に食わなければ辞めさせるのがドルガバ流なんでしょう。でも菅井さんは全然納得してなくて、ブラック企業でひどいパワハラを受けたという認識。実際、個人が責任を負うべきことではありませんから」

 そう話すのは菅井元社長の知人。田部井氏の代理人を務める弁護士も言う。

「本人は上司の指示通りに業務を遂行し、会社が損害を被るのを防いだとの認識でした。ところが聴き取り調査すらないままいきなり辞めろと言われ、辞めて本来取る必要のない責任を取ったはずが、追い打ちに家にまで仮差押えを受ける。本人は悲しみ、怒り、絶望感に襲われています。相手の出方を見つつ、精神的苦痛への慰謝料請求も視野に入れていくつもりです」

 上司の指示に従ったつもりが、人生のレールから転落。いや、サラリーマンには、対岸の火事ではない。

「週刊新潮」2018年9月6日号 掲載