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もくじ

ー ブラバム BT62開発のきっかけ
ー 耐久レースへの参戦も視野に
ー ブラバムの闘争心ふたたび
ー BT62の特徴

ブラバム BT62開発のきっかけ

かつてF1レーサーでル・マン24時間の勝者となったことのあるデイビッド・ブラバムは、先月ブラバム・オートモーティブ社を設立した。その第1号車となるのは税抜き価格100万ポンド(1億4885万円)のサーキット専用BT62だ。彼は、二度とブラバムの名を世に埋もれさせたりしないと宣言している。

デイビッドの父であり、オーストラリア出身の偉大なるレーサーであるジャックが設立したレーシングカー・コンストラクターのブラバムは、1990年代初期にモータースポーツ界から消え去った。

しかし、その名は変わらずひとびとの感情に訴える力を持っていた。それに便乗すべく、一族とは何ら関係のない者がブラバムの名を使用していたので、デイビッドは名称を保護するための法的措置を求めた。彼は2013年にようやく勝訴し、そのころから自身の30年のレースキャリアのあとの人生について考えるようになった。

「わたしたちに残されたこのアイコニックな名前を使って何かすべきだと思ったのです。長くレース界にいたわたしは、プライベーターを存続させ続けることがいかに難しいか、十分に分かっていました。ですから、何か重要なファクターが必要だと感じていたのです」と52歳の彼はいう。

新型BT62こそが、その「何か重要な」アイテムなのだ。ブラバムは、限定70台生産のこのサーキット専用車の成功を基盤にして、レーシング・プログラムや完全な公道仕様バージョンを提供したいという夢を描いている。

耐久レースへの参戦も視野に

クルマのパッケージには、耐久レースに適する技術が採用されている。自然吸気V8エンジン、スペースフレーム構造のシャシーを覆う軽量なカーボンファイバー製ボディパネル、ダブルウィッシュボーン式サスペンションなどだ。

このサーキット専用車は、2020年のル・マン24時間に参戦すると言われているが、慎重な同社は、少量生産でコアなファンの多いこのクルマが市場でどう評価されるか確認してから判断するようだ。その間、GTカーレースのレギュレーション変更があれば対応することもできる。

ブラバム・オートモーティブでエンジニアリング・ボスを務めるポール・バーチは、「われわれは性能面でGTEクラスの競合車を大きくリードしたかったのです。どのメーカーも恐らく同じことを狙っているでしょう」と話す。

「ホイールベース、エンジンポジション、2シートなどはある程度の数値が決まっています。わたしたちが大排気量の8気筒にしたのは、ストレスなく容易に24時間走り続けられるよう、かつ、素晴らしい性能とドライバビリティをサーキット専用車のオーナーに提供したかったからです。かつてブラバムがレプコV8を搭載していたことへの回帰でもあります」

クルマをテストしてみたブラバムは、そのダイナミックさが強みになると満足している。「速いGTカーですが、とても運転しやすいです。1200kgものダウンフォースを得られる上に、軽いので高速コーナリングが可能です。しかも、コーナリング中であってもタイヤはしっかりと地面に密着しています。大きなサイドウインドウは手動式です。24時間以上もレースするとなると、ずっとウインドウに寄りかかることができて、信頼感を深められるクルマの方がいいでしょう」

ブラバムの闘争心ふたたび

BT62は、ブラバム・オートモーティブの親会社であるフュージョン・キャピタルが所有するアデレード北部の1万5000平方メートルの工場で生産されます。

「そこには、先進的な製造会社の工場が集まっています」とバーチはいう。「最近ホールデンやフォードといった一流企業が閉鎖したので、供給拠点とリソースはあります。わたしたちは専用部品を世界中から調達していますが、現地でそういったリソースを入手することで早く製造に取り掛かることができます」

同社は、BT62のオーナーにもブランド再建の「旅」に加わってもらいたいと願っている。そのため、各オーナーに合わせたドライビングプログラムを提供している。バーチは、「ブラバム・ファミリーが、一族の名を冠したクルマに深く関わっていることは、とてもラッキーなことです。そういったブランドは他にありませんからね」と話す。

このプログラムがデイビッド・ブラバムの闘志に再び火を付けたそうだ。「最初にBT62をテストした時、わたしは2年近くサーキットを走っていませんでした。身体が鈍ったように感じましたが、数回テストしてみると楽しくなってきました。どこか別のレーシングチームのために走行するのと違って、真の目的がありましたから」

未だにジャック・ブラバム以外に自分の名が付いたマシンでF1王座に輝いた者はいない。デイビッドはル・マンのGTカテゴリーでその功績に並びたいと願っているが、12年前に比べてはるかにその夢に近づいているだろう。

BT62の特徴

塗装

グリーンの塗装は、開発に3カ月を要した特注の色合いだ。「かつてグランプリで優勝したブラバムと同じグリーンですが、BT62の表面を引き立たせる効果もあります」とポール・バーチは話す。

エンジン

搭載する5.4ℓV8について、同社はエンジンサプライヤー名を明らかにしていない。最高出力710ps、最大トルク68.0kg-mを発揮するこのエンジンは、BT62向けにリメイクされたもので、カバーにはブラバムの社名が記されている。

セットアップ

エアロダイナミクスやサスペンションの調整はできないが、トラクションコントロール、ABS、エンジンレスポンスモード、そしてブレーキバイアスはどれも微調整が可能。「GTEレーシングカーに必要な調整機能はすべて備えています」とバーチはいう。