自身2度目となるナショナルチームでの指揮。名将ザックは個性派集団のUAEをいかにして強豪へと仕立て上げるのか。(C)Getty Images

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 来年1月から2月にかけてアラブ首長国連邦(UAE)で開催されるのが、アジアカップ2019だ。前回大会の日本はハビエル・アギーレ政権で臨み、ベスト8でUAEの後塵を拝した。その雪辱を果たすとともに、史上最多5度目の優勝を目ざす。
 
 本大会の出場枠は16チームから24チームに拡大された。5月4日には8グループに振り分ける組合せ抽選会が行なわれるが、日本は第1シードのポットAに組み込まれている。そのドロワーを前に、アジアサッカー連盟(AFC)の取材に応えたのが、ホストカントリーであるUAEの指揮官、アルベルト・ザッケローニだ。

 
 昨年10月に電撃就任したイタリア人は、やはり”古巣”である日本代表を警戒しているようだ。
 
「日本とは同じポットに入ったから、グループリーグで戦うことはないが、できればずっと当たりたくはない。UAEはもちろん優勝を目ざしている。そのうえで日本は間違いなく強力なライバルとなる。できれば戦いたくないし、当たるとしても大会の終盤であってほしいものだ」
 
 アジアカップはザックにとって縁起のいい大会だろう。2011年大会は準決勝で韓国を撃破し、決勝では延長戦でFW李忠成が劇的な決勝ボレーを蹴り込み、見事戴冠を果たした。鮮烈な記憶として、日本サッカー史に刻まれる名場面だ。
 
 しかも先述の通り、日本は前回大会の準々決勝でUAEにPK戦で敗れており、ロシア・ワールドカップ最終予選では1勝1敗の五分だったが、ホームで苦杯を舐める失態を犯した。MFオマール・アブドゥルラフマン、FWアーメド・ハリル、アリ・マブフートらタレントも枚挙に暇がなく、決して得意な相手ではない。それでもUAE代表監督は謙虚で、かつ慎重だ。
 
「現在のUAEはまだチームとして完成していない。本大会までに試合をこなしながら高めていければと考えている。相手よりも自分たちのスタイルを確立させることが、まずは先決だ。3月はタイで行なわれたキングスカップに参加させてもらい(スロバキアに1-2、ガボンに0-1で連敗)、勝てはしなかったが収穫のある2試合をこなせた。アジアカップまではまだ8か月ある。地元開催で期待値も高いので、優勝を目ざして強化を進めたい」
 そして、ブラジル・ワールドカップまで丸4年に渡って率いたサムライブルーをこう称える。
 
「どんなチームにも異なる個性があって、当然、日本とUAEもまるで違う。UAEが日本と同じフットボールを志向できるとは思っていない。日本は選手個々がとても俊敏で、組織としての高い信頼性があった。UAEはまず攻撃と守備のおける最適なバランスを見つけなければならない。日本はきわめて多くのゴールを奪い、失点は本当に少なかった。そこだけは、UAEでも実現させたいと考えているよ」

 
 とはいえ、65歳となった百戦錬磨の指揮官はやはり狡猾だ。最後は不敵に、こんな言葉で締めくくった。
 
「これからUAEの選手たちと過ごす時間が少しずつ増えてくるだろう。選手の個性をしっかり見極めていきたいね。そして私の経験を駆使して、明確なアインデンティティーを構築していく。優勝を狙えるチームに仕上げたいと思う」
 
 はたしてアジアカップ本大会で、日本とザックUAEは対峙するのか。もし実現すれば、実に興味深い一戦となるだろう。