なぜ「優秀社員」だけだと失敗するのか

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何が勝ち組と負け組を分けるのか。雑誌「プレジデント」(2017年3月6日号)の特集「『働き方』全課題60」では、「超一流の仕事術 全解明」として、より成果を上げるためのノウハウを各方面のエキスパートに取材。今回は、京都大学客員准教授でエンジェル投資家の瀧本哲史氏が「よいチームの作り方」について解説する――。

■「抜きんでた成果」をあげたチームの5つの特徴

どうすれば「よいチーム」を作ることができるのか。まず確認しておきたいのは「チームワークのよいチーム」を目標にしてはいけない、ということだ。

チームワークという言葉は、所属するメンバーが互いに協力しあって行動する、というぐらいの意味でしかない。どんな組織にも必要ではあるが、その定義も基準も曖昧模糊としているため、目標とすべきではない。

「よいチーム」のために参考になるのは、「チームアプローチ」という考え方だろう。これはマッキンゼーのパートナーだったカッツェンバックらの著書『「高業績チーム」の知恵』(ダイヤモンド社)にまとめられている。同書では「まあまあ」ではなく、「抜きんでた成果」をあげたチームには、以下の5つの特徴があると論じている。

(1)少人数である
(2)メンバーが互いに補完的なスキルを有する
(3)共通の目的とその達成に責任を持つ
(4)問題解決のためのアプローチの方法を共有している
(5)メンバーの相互責任がある

「よいチーム」がこうした特徴を持つ理由は、対極にある「ありがちなチーム」を考えるとわかりやすい。「ありがちなチーム」は、洋の東西を問わずよくみられるものだ。そもそも困難な問題でなければ、「よいチーム」を作る必要はない。このため問題解決より、責任回避が優先されるため、メンバーの数は肥大化しがちだ。

また気の合う仲間で集まりたがるので、部署や業務が近いメンバーが中心で、年次や経験でのバランスが重視される。したがって、メンバーの専門性は似たり寄ったりになるか、リーダーの劣化コピーのようになるかのどちらかだ。目標や責任ははっきりしないため、1度チームに入ってしまえば「やってるフリ」でもクビにならず、家族的なつながりに執着する。

■「デキるやつ」を集めても「よいチーム」にはならない

こうしたチームづくりの延長で、「社内の優秀社員を集めて、特命チームを作ろう」としても、プロジェクトはうまくいくはずがない。本来、メンバー選定の基準は、相対的な優秀さではなく、絶対的なスキルの有無でなければならないからだ。該当者が社内にいないのであれば、社外から人的リソースを確保すればいい。「社内の優秀社員」という設定から間違っている。

課題はいつ降ってくるかわからない。「よいチーム」が編成できるように、日頃から「人材のポートフォリオ」を整えておくといいだろう。社内外、業種や職種、公私を問わず、自分の持っているリソースやバックグラウンドとまったく異なる人とつながっておくといい。社会学者のグラノヴェッターはそれを「ウィークタイズ(弱いつながり)」と名付けている。

その点で意外に有効なのが会社や学校の「同期のつながり」だ。自分の仮説を、違う部署、会社、業界の論理から、遠慮なく否定してくれる人は、よいチームに欠かせない。それは頼もしい「仲間」になる。

▼「相対的な優秀さ」より、互いに補完する「絶対的なスキル」が重要

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瀧本哲史
京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授。東京大学法学部卒業。マッキンゼー勤務を経て、エンジェル投資家に。『ミライの授業』など著書多数。
 

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(京都大学客員准教授、エンジェル投資家 瀧本 哲史 構成=小泉なつみ)