駐車違反で警察に出頭すると大損するワケ
■誰が違反したのか警察は知らない
そう思い込んでいる運転者がまだまだ少なくない。しかしそれは完全に迷信。出頭する必要はなく、出頭したら大損だということを、しっかり頭に入れてほしい。
2006年6月1日、駐車違反取り締まりの民間委託がスタート。緑色系の制服を着た駐車監視員が取り締まりを行うようになった。
従来は、15分とか20分とか、いわば猶予を与えて取り締まっていたが、新制度では、車内に運転者がいないことを確認したら直ちに取り締まりを開始する。特に迷惑のない場所に駐車して公衆トイレへ行き、数分して戻ったら車両のフロントガラスに「あっ、ステッカーが!」といったケースがよくあるようだ。
そのステッカーには、どこかへ出頭せよとは一切書かれていない。知らん顔をしていると、だいたい1週間ほどで警察から郵便が届く。なかには「放置違反金」というペナルティの納付書が入っている。金額は、駐車禁止場所における普通車の駐車違反なら1万5000円。これを払えば、その違反についての処理は終了する。郵便は、ナンバーから判明した車両の持ち主へ送られる。誰が違反したのか警察は知らない。違反者に違反切符が切られないまま終了するのだ。
そうとは知らず「出頭すべし」と思い込み、あるいは「納得いかない。文句を言わねば」と交番などへ出頭。するとどうなるか。
違反者が目の前にいるのだから、警察官は原則として違反切符を切る。いったん貼ったステッカーを現場の判断でナシにすることはできないのだ。
違反切符を切られると、放置違反金(車両の持ち主に対するペナルティ)ではなく反則金(違反者に対するペナルティ)の納付書が渡される。金額は同じだ。そして、2点か3点の違反点数が自動的に登録される。
点数が登録されると、ゴールド免許の人はゴールドでなくなる。次の免許更新のときの講習が、30分500円ではなく1時間800円になる。ほかに点数の累積があれば免許停止処分にもなる。損害保険の掛け金が何千円か高くなる。
しかも! 反則金を払わずに争えばまず間違いなく検察官により不起訴とされるが、違反者が不起訴になっても、持ち主に放置違反金の納付命令がいく。違反者=持ち主であってもだ。放置違反金を払わなければ預金などの差し押さえを食らう。放置違反金に検察官は関与しないのだ。そのやり方が合法だという判例はすでにある。
そうと知らずに出頭して違反切符を切られる人の割合は、2015年は全国で18.5%。知らない人は損をする、これは本当だ。
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交通ジャーナリスト
1954年、石川県生まれ。交通事件を中心に裁判傍聴を多数行う。主に交通違反・取り締まりについて雑誌・新聞・テレビ・ラジオ等で執筆・コメント。
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(交通ジャーナリスト 今井 亮一 撮影=石橋素幸 写真=iStock.com)