パシュートの韓国代表で起きた問題が話題に【写真:Getty Images】

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19日の女子チームパシュートで一人だけ大きく遅れてゴール いったいなぜ?

 韓国のスピードスケート界での“ある事件”が波紋を呼んでいる。韓国紙「ソウル新聞」が「“女子パシュート”キム・ボルム―パク・ジウ チームワークが話題… ノ・ソンヨン“一緒に練習しない”」と題して、大きく報じている。

 19日に行われた平昌五輪女子チームパシュート(団体追い抜き)で韓国は8チーム中7位で、準決勝進出を逃した。計6周するパシュート。韓国は残り1周の場面でスパートしたが、最後尾を滑っていたノ・ソンヨンは前を滑るキム・ボルムとパク・ジウに大きく離される形で、そのままゴールした。

 同競技は通常、途中で互いが風よけや、押し合うなど、助け合った末に、最後の走者のタイムで順位が決まる。ソウル新聞は「おかしな光景を演出して準決勝への進出に失敗した」と伝え、問題のシーンを振り返った。

「通常、3名の選手が一緒にお互いの速度を引っ張ったり支えてあげたりする呼吸でレースが繰り広げられる。にもかかわらず、韓国は競技の中盤からキム・ボルム、パク・ジウ選手が少し前に出て、最後の走者であるノ・ソンヨン選手との差が開き、大きく離れて遅れてゴールを通過した。いい記録、いい成績、それ以前に3人が団結できなかった姿に、競技を見守った国民たちは首をかしげるしかなかった」

「首をかしげるしかなかった」と韓国紙 選手の間には亀裂が…

 なぜ、こんなことが起きてしまったのか。同紙は競技後のキム・ボルム、パク・ジウのインタビューを紹介し、理由を紐解いている。

「中間はうまく滑っていたのに最後に後ろと格差が出て残念な記録だった。選手(キム・ボラムとパク・ジウ)のラップタイムは常に14秒台だった」(キム・ボラム)

「実はソンヨンさんがこんな形になるという考えが、初めからないわけではなかった。だけど、私たちには記録の欲が大きかった…」(パク・ジウ)

 記事では「奮わない成績の責任を、一緒にチームを作ったノ・ソンヨンにだけに回すようなニュアンスのインタビューだった」と伝えている。

 ミックスゾーンでの発言も紹介。キム・ボルムが自身と、パク・ジウのタイムについては、満足していたこと。しかし記録が良かったのに競技のチームとしての記録が、最後の選手の記録となることに不満げだったことも伝えている。

 同紙は「『私たちはうまく滑ったのにノ・ソンヨン選手がうまく滑れなくて成績が良くなかった』と聞こえる発言だ」と怒りをもって伝えている。

 また同紙はチーム競技にもかかわらず、“記録の欲”という表現をしたパク・ジウのインタビューも問題視。

「ただの一度も一緒に練習しなかった」 チームワークは平昌以前から崩壊していた

「チームメンバーを置いていったようなレースを繰り広げる理由が、個人の記録が重要だというように聞こえた。団体パシュートは全員の走者が全てゴールした時が記録でチームの成績と集計される種目だ」

 こうもチームワークを欠いてしまった原因は何なのか。同紙は、遅れてゴールしたノ・ソンヨンが1月に「スポーツ朝鮮」のインタビューに応じた際のコメントも紹介している。

「昨年12月10日のW杯第4戦以降、平昌オリンピックに出場するまで団体パシュートの男女代表チームはただの一度も一緒に練習をしなかった」「ひどい差別の中で練習にきちんと集中できる状況ではなかった」と話している。

 同紙は「チョン・ミョンギュ、スケート連盟副会長の指導でキム・ボラム選手を含む特定の選手だけが泰陵選手村と違う韓国体育大学で別に練習してきたことだということだ」と驚きをもって伝えている。

 最後に当時の「スポーツ朝鮮」の記事を引用する形で、パシュート代表チームの“内部”になにが起きていたのかを紹介している。

「この過程で代表チームの選手達が分裂した。ノ・ソンヨンは『村の外で練習する選手達は、泰陵選手村で寝食だけした。正直、寝食だけで解決できるわけではない。スケート連盟はメダルを獲る選手たちを先に決めている感じがした。ひどい差別の中で練習にきちんと集中できない状況だった』と主張した。そして『昨年も、一昨年も続けてこうだった。それでもみんながもみ消している』と説明した」

 以前から“内紛状態”だった韓国のパシュート代表チーム。それが、最も大きな国際大会の舞台で表面化してしまった。(THE ANSWER編集部)