南半球オーストラリアの最東端に位置する、バイロンベイというリゾートで、太陽光発電の電力だけで運行する電車が、16日に営業を開始した。世界で初めての太陽光だけで動く「ソーラー電車」だ。

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 バイロンベイを経由していた総延長132kmの鉄道路線は、乗降客数の減少のため04年5月に運行を終えていた。今回運行を開始したバイロンベイ鉄道は、廃線となっていたバイロンベイ周辺の3kmの区間を修復し、1949年に製造され1990年代中頃まで利用されながら、その後は放置されていたディーゼル車を走行可能な状態に修繕。従来の車両に2基搭載されていたディーゼルエンジンのうち1基を取り外し、代わりにバッテリーとモーターを搭載した。残りの1台のディーゼルエンジンは、バックアップ用に残された。

 太陽光パネルは、合計6.5kWを車両の屋根に設置。蓄電池には、77kWhのリチウムイオン蓄電池を利用しており、車両での充電により4〜5回程度の運行が可能という。さらに、駅舎の屋根にも30kWの太陽光パネルが設置されており、雲や雨天の時には停車中に充電することも可能だ。

 運行は2両編成で行われ、乗車定員は100人。客車内には自転車やサーフボードを置くスペースが用意され、リゾート列車としての雰囲気を高めている。現在は試験運転中で、月曜日から土曜日まで一日8往復程度運行しているが、18年1月からは運行本数を増やし本格運行となる見込みだ。プロジェクトの総費用は、約400万ドルだという。

 再生可能エネルギーに係る取り組みは、メガソーラーが先行して大きな話題となっていたが、バイロンベイ鉄道による「ソーラー電車」は応用の一例と言える。

 日本ではフルークという会社が、鉄道の線路内のレールの間に太陽光パネルを設置して、鉄道の動力電源相当量を発電するシステムを開発(特許登録26年6月)している。会社の説明によると、同社のシステムを全国の鉄道全線路に採用すれば、新幹線を除いた国内全ての在来線の動力電源を、再生エネルギーだけでカバーできる可能性があるという。このシステムは鉄道線路のレールの間にソーラーパネルを敷き詰めるというもので、新たにソーラー発電用の敷地を整備する場合と比較すると樹木の伐採、整地、架台制作等の基礎工事が不要となる為、ローコストで大規模な太陽光発電が可能になるという。

 確かに鉄道の線路敷地がソーラーパネル設置用地として重層的な利用が可能になれば、初期費用の圧縮はもちろんメンテナンスの手数軽減にもつながり、何よりも地に足の付いた再生可能エネルギーの活用方法ではないだろうか。さらにバイロンベイの事例を参考に、車両の屋根上や鉄道会社の所有建造物にもソーラーパネルを張り付け、蓄電システムの効率化を並進させると、売電も可能な巨大システムの構築が可能となるかも知れない。そんな夢を見せてくれる、「ソーラー電車」の話題である。