「ARを利用した「未来の地図アプリ」が、都市のナヴィゲーション体験を一新する」の写真・リンク付きの記事はこちら

旅行中に地図アプリを開き、その場を見回しながら矢印の方向を確認したり、しばらく歩いてから方角が正しいかを確かめることも、今後は必要なくなるかもしれない──。

このほどBlipparが発表した「AR City」は、拡張現実(AR)によって都市のナヴィゲート体験を根本から変えてくれるアプリだ。これを使えば、どんなに絶望的な方向音痴だったとしても、道に迷うことなく確実に目的地に到達できるだろう。

「このアプリはARとコンピューターヴィジョンによる画像認識の両方の技術を備えており、都市を歩いたり散策したりといった体験を変えてくれるはずです。このテクノロジーは最終的には、現在の地図システムに取って代わるものなのです」と、Blipparの最高経営責任者(CEO)であるアムバリッシュ・ミトラは述べている。

Blipparのリードサイエンティストであるルカ・デルペロは、AR Cityのについて「ナヴィゲーションのコンテンツには、3つのレヴェルがあります」と説明する。

スマートフォン越しの街の風景で道案内

まず最初に、ARを用いた基本的なナヴィゲーション機能である。これはスマートフォンのカメラを通して画面に写し出された現実の風景に、グレーに彩られたヴァーチャルな道路が重ねて表示される。この機能は、米国やカナダ、欧州、オーストラリアに加え、主要なアジア各国の都市など、アップルの「マップ」アプリがサポートしている場所で使用できる。これらの都市では、目の前の景色にスマートフォンのカメラをかざして風景を映すだけで、ヴァーチャルな道が目的地に導いてくれるわけだ。

さらに一歩進んだAR機能として、街のさまざまな情報が画面上の風景に重ね合わせて表示される。具体的には、レストランなどの店舗や人気スポット、ランドマークなどの情報で、これは東京や大阪、京都、横浜、札幌を含む世界の300都市で使用可能になっている。

現時点では、上記2つのコンテンツのユーザーの位置情報はGPSで測位されるので、どうしても誤差が生じる。このためユーザーは、自分がいる道と向かっている方向を、スマートフォンの画面上で調整する必要がある。そこでこうした手動の微調整によって、ナヴィゲーションの精度を高めている。

目の前の景色をカメラで認識して精度を向上

注目すべきは、コンピューターヴィジョン技術によってユーザーの位置を認識する3つ目の機能だ。これは「アーバン・ヴィジュアル・ポジショニング(UVP)システム」と呼ばれる独自技術で、カメラに写し出された街の景色から建物や道路などを認識して、正確な位置を推定するものだ。これにより、画面上の建物に重ねて表示される関連情報をさらに細やかなものにできるほか、ナヴィゲーションの精度も高まる。

IMAGE COURTESY OF BLIPPAR

これこそ「AR City」の真骨頂と言える。この機能は現在、ロンドン中心部、カリフォルニア州マウンテンヴューとサンフランシスコの3都市で利用可能になっている。

「われわれのテストでは、GPSよりもはるかに高い精度で表示できました」と、デルペロは語る。「このヴァージョンではユーザーによる入力は最小限になっています。その手間もテクノロジーの向上によってさらに縮小されるはずです」

CEOのミトラはこのように語る。「この技術はデジタルと現実を完全に融合させたものです。ユーザーにとって自然なARをつくることが、われわれの重要なミッションの第一歩でした。AR業界にとってブレークスルーといえるでしょう」

「AR City」はここからダウンロードできる。現在はiOS11以降のiPhone 6Sより新しい機種に対応しており、Android版は公開に向けて準備中とのことだ。

まだ現時点ではベータ版であり、これから改善される部分も多くあるだろう。それでも、「未来のナヴィゲーション」のあり方を示唆していることは間違いない。