インスタの風景写真に謎コメントが

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 画像共有SNSのInstagram(インスタグラム)には最近、ある不自然な現象が起きている。投稿内容とは直接関係がない、特定の化粧品やサプリメントなどを推奨するコメントがつく現象だ。ライターの森鷹久氏が、その謎コメントがつくカラクリを探った。

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 パーティのためにドレスアップしたあるモデルの自撮り写真がインスタグラム、通称インスタにアップされると、瞬く間にコメントがつけられる。1万人以上のフォロワーがいる彼女の投稿へのコメントは、大半がファンによる「キレイ!」「かわいい!」といったものだが、そのなかに投稿やコメントの文脈と、まったくかみ合わない文章がいくつも見える。

「●●もらったらセルライトが消えたよ」
「ダイエットしなくても、●●のおかげで細くなった」
「友だちがくれた●●で白くなった」

 といったような内容だ。いったいなぜ、こんな脈絡のないコメントがつくのか。某女性モデルのマネージャーであるA氏が、その理由を明かした。

「一度ステマ(=ステルスマーケティング)を依頼したモデルのインスタには、その後のなんでもない投稿にも読者のふりをして”この前●●ちゃんが紹介していた化粧品よかったよ”などと業者が書き込むんです。ある有名モデルなんかは、風景の写真をアップしただけなのに、コメント欄が関係のない美容サプリの書き込みだらけになることもありました」

 つまり、業者が”なりすましアカウント”を使って、定期的にインスタ上でのステマを支援する体制をとっているのだ。ステマをしているか否かに係わらずコメントがつくことはあるが、とA氏が続ける。

「某ママモデルのタレントのインスタなど、毎日毎日ステマ三昧で、コメントもほぼ業者だらけ。最近ではコメント数とバランスを取らすために”いいね”の数まで買っています。もはやタレントなのかどうかすらわからない、業者の操り人形(笑)。以前は化粧品だったけど、今はサプリや健康食品が主流。そのうち情報商材とかセミナーなんか紹介しちゃうんじゃないのと思っていたら、情報商材系の人間と食事してる写真が投稿され吹き出しました」

 仕組みはかつてブログ上で行われていた「ステマ」と同様だ。業者が宣伝したい商品を、モデルやタレントに無償で提供しインスタで紹介させる。さらに、どの書き込みからサイトに誘導し購入したか、ということが分かる設定になっており、売上に応じたバックマージンが用意される場合もあるという。

 商品やサービスの提供を受けながら、その旨を隠したまま宣伝をする「ステルスマーケティング」。略称の「ステマ」は2012年の新語・流行語大賞にノミネートされるなど、かつては有名人ブログを中心に行われて話題になった。しかし、モラルや「やらせ」問題が発生しやすいため、運営会社によって自主規制されて沈静化したかに思われた。

 ところが今年の初夏、ステマが再びネットで話題になった。

 フォロワーが多い複数のタレントやモデルが、あるサプリメントを使用する写真を次々とインスタに投稿した。その投稿にはハッシュタグ「#PR」や「#Ad」といった、運営側が広告に添付するよう推奨しているタグは使用されていなかった。サプリメントについての投稿が偶然にしては多すぎること、インスタグラムでの有名人ばかりが利用していることなどが不自然だと、一連の投稿はステマではないかとの疑惑がネット上で広がった。

 さらに8月には、フォロワー2万人超のダイエット中のインスタグラマーが、あるメディア運営会社の社員だったことが発覚。自社が運営する青汁情報サイトへ誘導するため、身分を伏せ、広告だということを明示せずにインスタグラムを運用していたことが明るみに出て炎上した。会社は事実関係を認めて謝罪、インスタグラムのアカウントを削除し、情報サイトも閉鎖された。

「ブログと違って、インスタはモデルやタレント個人が勝手にやっている、というイメージがありますよね? ステマ業者が我々事務所を通さず、モデルやタレント個人に持ちかける場合もあるのでなんとも言えませんが、読者モデルなどは少なくない人たちがインスタでステマをして、いくばくかのギャラをもらっているようです」(前出のマネージャー)

 いまのところ、インスタのステマ疑惑は疑惑で終わっているものが多い。しかし露骨な投稿が増えれば当然、モデルやタレントの誰々が「ステマしている」などと、あっという間に噂は広がる。そうなればインチキなイメージが付きまとい、読者やファンは減る。人気が減れば仕事がなくなり、もはやまともな手段では収入が得られなくなる。こうした負のスパイラルに陥る元モデルやタレントもいるという。

 もっとも、若い女性たちが簡単に、分かり易すぎる「ステマ」に引っかかるような時代でもない。ユーザーのネットリテラシーは数年前よりも確実に上がっているにも関わらず、未だこのような稚拙なやり方しかできない業者、モデルやタレントは当然のように淘汰されてゆくだろう。