エバラの「焼肉のたれ」が中国で人気らしい…そんな噂を聞いたのは、つい最近のこと。

どうやら中国のレストランの厨房には、かなりの確率で「焼肉のたれ」が置いてあるという。

そこでエバラ食品工業へ問い合わせてみたところ「ええ、確かに上海や香港に拠点があります」というお答えが。

筆者はさらに詳しい情報を聞くため、エバラ食品工業株式会社のグループ企業である荏原食品(上海)有限公司にこの春まで赴任していたという、海外事業本部 海外事業室マネージャーの山下真史(やました まさし)さんにインタビュー。

色々と現地のお話を伺ってきました。

焼き肉の認知度が低い中国

――エバラの「焼肉のたれ」が中国の料理店で使われているそうですが、まずはアジア進出のきっかけから教えてください。

上海に拠点を作ったのは10年ほど前なんですが、実はそれ以前から中国ではうちの商品が使われていたんです。当時、中国は経済発展もめざましく、「中国でもチャンスがあるのでは?」と進出を決め、現在は中国・香港・シンガポール・台湾に拠点を広げています。中国に進出してすぐの頃は「ラーメンスープ」や「がらスープ」を中心に展開していましたが、今は「焼肉のたれ」の人気が高まっています。

――レストランでは焼き肉用のたれとして使われているのですか?

いえ、調味料のひとつとして使っているみたいです。まだ中国では“複合調味料(合わせ調味料)”というものがあまりないんですね。レストランでも家庭でも、しょうゆ、砂糖、みりんなどの調味料を混ぜ合わせて使うのが一般的なんですけど、「焼肉のたれ」はあらかじめ混ぜ合わせてあるから簡単だし、誰が作っても味がブレないから便利と言われます。

――では知らぬ間に上海や中国で、私たちもエバラさんの「焼肉のたれ」で味付けされた料理を食べているかもしれないってこと?

そうかもしれません(笑)日本料理店よりは圧倒的に中華料理店に置かれているようです。

いま日本では「めんつゆ」などの調味料を使った応用メニューが人気ですが、中国の外食店でも同じようなことが行なわれています。当社から外食店に対して「こんな使い方ができますよ」と提案することもありますし、逆に料理人に「このたれを使って、中国で受けそうなレシピを作ってください」とメニュー開発をお願いすることもあります。

中国の料理人が考案したレシピ

そうして出来上がったレシピがこちら。

「焼肉のたれ」を水で薄めて煮込む「トンポーロー(豚の角煮)」は、最後の“追いだれ”で照りをプラス。

エバラ食品工業/豚の角煮

ピリッと辛い「えびの麻辣炒め」。エバラ「麻辣風味のたれ」はお肉以外の魚介にも合うそうです。

エバラ食品工業/えびの麻辣炒め

このほか炒飯や焼きそばなどに使われることもあるのだとか。

四川の人にとっては「辛口が辛くない」!

――今まで業務用のお話がメインでしたが、家庭用の「焼肉のたれ」も現地で販売されているのでしょうか?

はい、甘口、醤油味、やや辛口と3種類あります。

――やや辛口の“やや”って…?

辛さに強い四川の人に食べてもらったら「こんなの全然辛口じゃないよ!」と言われたこともあり、“微辣味”というやや控えめな表示にしました(笑)実は中国で食品を展開するのは、ここが難しいところでもあるんです。日本でも西と東で好まれる味が異なるように、四川は辛いのが好きだし、北京はしょっぱい、上海は甘いのが好きなど、日本以上に好みがはっきり分かれます。“やや辛口”のたれも、北京だと丁度いいらしいんですけどね。

次の世代になると需要が増える!?

――家庭用がじわじわ浸透している感じはありますか。

まだこれからという感じです。そもそもスーパーに焼き肉用の薄切り肉が置いていません。火鍋でしゃぶしゃぶ肉を使うのだから、焼き肉用が売っていてもいいと思うんですけどね。お客さんには「これは醤油なの?」とよく聞かれます(笑)実演販売で試食してもらうと「これ美味しいわね!」と言って買ってくださるのですが、まだ焼き肉というメニューに対する認知度は低いようです。

あと中国の一般家庭では両親が共働きで、祖父や祖母が孫のために料理を作ることが多いのですが、その世代は料理スキルが高いので、あまり複合調味料(合わせ調味料)を必要としないんです。でもその下の世代は仕事が忙しく、料理が苦手な人も増えてきているので、簡単に手早くできる複合調味料の需要が、今後は増えると予想しています。

――ポテンシャルは高そうですね。

ええ、それから近年は郊外型のレジャーが人気で、香港を中心に週末はBBQを楽しむ人も多いんですが、そんなシーンでももっと「焼肉のたれ」が利用されるようになるといいなあと思っています。

現地の同僚いわく、香港スタイルのBBQは味付けがほぼ塩コショウとはちみつだけで、ちょっと飽きてしまうと言っていたので。

香港のバーベキュー事情

ちなみにネットで検索してみると、香港のBBQは基本的に以下のようなスタイルということが判明。

・具材はひとつひとつ串に刺す
・BBQグリルを皆で囲み、各自自分の串を手で持って焼く
・焼き加減は自己責任
・塩コショウを付けてしばらく焼いたあと、頃合いになったらはちみつを刷毛で塗り、もうひと焼する

BBQにはちみつとは驚きですが、どうやらこの話は本当のよう。

しかしこうした場所でも時々エバラの「焼肉のたれ」を見かけるようになったと、山下さんは嬉しそうに教えてくださいました。

チャイニーズドリームを掴め!

――最後に今後の夢や目標についてお聞かせください。

家庭用のたれのさらなる普及ももちろんですが、個人的にはここ10年間、自分の取引先の日本発レストランが中国で急激に店舗数を増やすというチャイニーズドリームを目にしてきたので、今後もそんなチャンスをつかむべく、地道にさまざまな企業やお店に働きかけていきたいですね。

そして、焼き肉という日本の食文化を広めるという役割もあります。現地の好みに合わせる方法もありますが、私たちは日本のクオリティや「焼肉のたれ」の味に自信を持っているので、日本の品質がそのまま中国で愛されるようになることが理想かな。

いつか中国で、馴染みのテレビCMのような“家族でホットプレートを囲む光景”が日常になる日が来たら、その傍らにはきっとエバラの「焼肉のたれ」があるはず。