さらに、ビジャレアル、バレンシア、アスレティック・ビルバオなどを率い、幾度となくメッシに煮え湯を飲まされてきた指揮官はこう続ける。
 
「レオを指導する側に回って、ホッと一息ついている自分を感じる。対戦相手としては、彼をどう封じようかということで常に頭がいっぱいだった。でも、どんな対策を講じても、結局は守備の人数不足に泣かされる結果になっていた。今度はどうやってメッシを輝かせるかに尽力しなければならない番だ。レオのような選手を指導できるのは監督冥利に尽きるよ」
 
 スーペル・コパでレアル・マドリーに大敗(2試合合計1-5)した後、バルサの周辺はお通夜ムードに包まれた。しかし、チームはそこから見事に建て直し、リーガで開幕6連勝を飾れば、チャンピオンズ・リーグ1節でも昨シーズンのベスト8で敗れたユベントス相手に3-0で快勝した。
 
 その中でメッシは、アラベス戦とユーベ戦で2得点、エスパニョール戦でハットトリック、そしてエイバル戦ではなんと4ゴールを叩き出した。このペースでいけば、2011-12シーズンに記録した自己最多の年間73ゴール(60試合)の更新も夢ではない。
 
 そんなメッシのハイパフォーマンスと飽くなき向上心に、バルベルデ監督も舌を巻く。
 
「今の好調な状態を少しでも長く維持することが、我々の課題だ。もちろんメッシも同じ気持ちのはずだ。メッシのゴール、勝利への意欲の高さは驚異的だ。我々はそんな彼のプレーを毎週見られる幸せを実感しなければならない。メッシは我々が不可能と考えていたプレーを平然とやってのけている。我々は言うなれば唯一無二の瞬間を毎週目撃しているんだ」
 
 9月23日のジローナ戦でメッシは、バルサでの公式戦通算出場試合が592に達した。歴代3位のカルレス・プジョールの593試合まであと1に迫る数字で、アントレス・イニエスタ(636試合)、シャビ(767試合)という先人たちのレコードも視界に捉えつつある。
 
 バルベルデ監督に全てを託されたメッシは、これからもゴール前という”自分の庭“で、常人離れしたプレーで我々を魅了し続けてくれるはずだ。
 
文:ジョルディ・キシャーノ(エル・パイス紙/バルサ番記者)
翻訳:下村正幸
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