女子サッカー選手とじっくり話す機会は初めてだったという岩政氏。なでしこジャパンのキャプテンとの対談は大いに盛り上がった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 サッカーの未来について考える。語る。
 対談連載の第4回は、熊谷紗希選手にお話を伺いました。
 
 女子サッカーの選手とは、これまでまったく接点がありませんでした。同じサッカーの世界で生きてはいるものの、挨拶をしたことがあるくらいで、話したことはまったくと言っていいほどありませんでした。
 
 世界のトップになかなか近づけない男子サッカーと違い、彼女たちは世界一も成し遂げました。違うフィールドであると自分を納得させる気持ちとともに、私はプロとして、少し羨ましく見ていました。
 
 今年に入り、新たな仕事をしているなかで、何人かの女子のサッカー選手とお話させていただく機会がありました。その方たちは素晴らしいキャリアを歩んでこられた方ばかりで、彼女たちと接した時に、なんだろう、とても”強さ”や”深遠さ”を感じ、印象に残ったのです。
 
 熊谷選手もそのひとりです。あまりに強い印象を抱いた私は、その場で、この対談のオファーをさせていただきました。
 
 熊谷選手はヨーロッパのトップクラブで長くプレーされています。それも守備的なポジションの選手として、ヨーロッパのトップシーンでしっかりと地位を確立されてきました。私には到底見ることのできなかった景色を見ているのでしょう。男子の代表選手ともまた違う、柔らかくも強烈なオーラを纏っていました。
 
 ここに至るまでの道のり、見てきた景色、そして見据える未来。
 
 伺ってみたい、様々な話題がすぐに浮かびます。私は話を聞き、少しだけ彼女になったつもりで、その景色を想像してみました。皆さんも、クラブでも代表でもトップを勝ち取れた所以を少しだけかじって、その味を想像してみてください。
 
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岩政大樹 このオフは忙しかったですか?
 
熊谷紗希 そうでもないですね。昼は筑波大でトレーニングし、夜は浦和レッズレディースの練習に参加していました。筑波大はすでに退学しているんですが、オフの時は研究室の先生にお世話になっています。
岩政 退学しているんですか?
 
熊谷 海外移籍した2年生の時に休学したんですが、もう6年以上も経ってしまったので(笑)。今の浦和レッズレディースにも筑波大生が大勢いるんです。彼女たちは、私の海外移籍後に入学したから「学年抜かれたら面白いね」と言っていたら、ほぼみんなに抜かれました(笑)。
 
岩政 なぜ筑波大に進学を?
 
熊谷 筑波大に通っていた(安藤)梢さんの影響です。大学では、いろんな種類の筋トレが学べるし、陸上専門の方からの指導も受けられる。そういう話を聞いて興味を持ちました。
 
岩政 大学生とサッカー選手の掛け持ちは、安藤さんが先駆けですか?
 
熊谷 おそらく、そうですね。それで私の後にすごく増えました。猶本(光)も院生です。
 
岩政 浦和から筑波は遠いですよね?
 
熊谷 1時間半くらいかかるので大変です。今の選手たちは筑波でマンションを借りているようですが、私は埼玉に拠点を置いて筑波に通っていました。
 
岩政 それだけ苦労して、なぜ通学を?
 
熊谷 基本的に、女子選手の進路は大学に行くか、就職してサッカーをするかなんですが、私は大学に行きたかったんです。距離にも不安は感じませんでした。
 
岩政 専攻は?
 
熊谷 私はコーチングでした。海外に移籍した3年の夏で止まっていますが(笑)。
 
岩政 コーチングのカリキュラムはどんなものがありました?
 
熊谷 指導者、教員、もしくはケアトレーナーの三択だったかな。授業のなかでC級ライセンスも取れるんですよ。