5試合連続でスタメンに名を連ねたポドルスキ。しかし、味方との連係が合わず、シュート0本のまま途中交代となった。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1・23節]神戸0-0横浜/8月20日/ノエスタ

 成績不振で8月16日に解任されたネルシーニョ監督から吉田孝行コーチへと指揮権が引き継がれてからわずか4日。3連敗中の嫌な流れを止めるべく、新監督は限られた準備期間のなかでまず、チームの土台となる堅守の再生に着手した。

 結果は、スコアレスドロー。勝利は掴めなかったものの、「失点0」で終われたことはここ3試合で6失点を喫していたチームにとっては大きな収穫だろう。

 12戦無敗の横浜に攻め込まれる場面こそあったものの、耐えるべき場面であっさりと失点を喫してきたここ数試合に比べると、粘り強さがあった。試合終盤、横浜の攻勢を受け「あわや」というシーンを作られながらも一線を越させなかった事実が、なによりそれを象徴していた。

「この1週間という時間のなかで、選手たちが私のやりたいサッカー、組織というところで、一生懸命献身的にやってくれました。今日の守備の部分は本当に評価できると思います」

 吉田監督がこう手応えを示したのに続いて、選手たちの口からも前向きな言葉が漏れた。CBの一角を務めた岩波拓也はこう語る。

「好調のマリノス相手に無失点に抑えられたのは自信になる。ここ最近、相手に食いついた裏を狙われてやられていた。今日はしっかり我慢できていたし、そこは良かったと思う」

 もちろん、この試合だけですべてを判断してしまうのは危険だ。「これで終わりではなく(守備に関しては)今日のような内容を継続していかないと意味がない」(岩波)。横浜戦で掴んだ手応えをチームとして共有しながら、真の意味で堅守再生を実現できるかが、この先の戦いでは問われてくる。

 一方、攻撃面はどうか。前後半合わせて、チャンスらしい場面は多く見積もっても三度ほど。そのうち、流れのなかから迎えたものは、渡邉千真の縦パスに小川慶治朗が反応してフィニッシュに持ち込んだ27分のそれだけだった。

「見ている人をもっとワクワクさせるようなサッカーをもちろん考えてはいますが、1週間という時間の中ではまず守備からというところで、仕方ないのかなと」(吉田監督)

 こう指揮官が言うように、今の攻撃には「ワクワク感」がない。とくに、今夏に鳴り物入りで加入したルーカス・ポドルスキをまったく生かせていない現状に、今後への不安を覚えずにはいられなかった。

 当のポドルスキは、横浜戦でも2トップの一角で先発したものの、見せ場を作れないまま81分に途中交代。周囲との連係は今ひとつで、前線で待っていてもなかなかパスが出てこない状況に、苛立つシーンばかりが目についた。

 敵の背後への飛び出しにも優れるポドルスキの特長を考えれば、縦方向への攻撃を志向する神戸の戦術との相性は決して悪くないはずだ。しかし、問題はポドルスキへのパスの供給源が確立されていないことにある。中盤に下りてボールを受け、自らゲームメイクするシーンが多いのは、そのためだろう。
 そもそも、来日して約1か月半という事実を考えれば、致し方ない部分もある。神戸には主力に怪我人が続出していたこともあり、例えば左膝の怪我から復帰した藤田直之(21節の鹿島戦から実戦復帰)と公式戦でともにプレーしたのはまだ3試合しかない。

「彼をストライカーとして仕事させるために周りがフォローをしきれていないことは否めない」(高橋秀人)との言葉からも分かるように、連係構築にはまだまだ時間が必要だろう。

 では、この大物助っ人を輝かせるにはどうすべきか。ドイツ代表時代を振り返れば、多くの得点をショートパスから決めていた。つまり、パサーの存在がポイントとも言える。そう考えると今後、パスセンスに優れたボランチの藤田あたりとホットラインを確立できれば、“黄金の左足”が炸裂するチャンスが広がるかもしれない。