やはり、同じチームでプレーしている中村(憲剛)選手の影響が大きいのではないでしょうか。中村選手と感覚的に似ていますし、パスを出す選手がふたりいて、どちらも前線へ飛び出せる。昔のガンバで言えば、二川選手、遠藤(保仁)選手のコンビと同じような関係性なのかなと思います。
 
 日本代表に返り咲き、彼の特徴が出るサッカーを見せてほしいですね。
 
[File 9]
小島秀仁(愛媛FC)
 ゾーン2と3で特徴が現われます。攻撃時の視野の広さや決定的なパスはもちろん、シュート力もあります。
 
 愛媛の監督が代わる中でも、それぞれの指揮官が望むプレーやスタイルを表現しています。彼が安定したパフォーマンスを出し続けていること、そしてその質が年々高まっていることが、愛媛の順位安定に繋がっているのではないかと思います。
 
 対戦時の分析をする際、小島選手はとりわけ質の高いプレーをしてくるので、パスの選択肢を減らすように要求されました。僕から見てだけでなく、多くの監督やコーチからも評価を得ているボランチだと思います。
 
[File 10]
藤本寛也(東京ヴェルディユース)
 最後の10人目は、我がチーム、東京ヴェルディのユースチーム所属の高校3年生、藤本選手です。ユース選手ながら現在トップチームで練習を共にしています、
 
 ここに挙げさせていただくにはまだまだレベルアップが必要な選手ですが、そのポテンシャルが素晴らしい。そう遠くない未来に、他の9人に肩を並べられる日が来るのではないか。そんな期待を込めて、今回選ばせてもらいました。
 
 彼の武器は、ゾーン2と3で発揮されます。パスを主体としたプレーヤーで、プレッシャーがかかった中でも最良の選択ができます。間を通すのが難しいタイミングでもしっかりパスを通してくる。安全なパス選択をするのではなく、チャレンジすることを忘れず、逃げのパスがほぼありません。
 
 味方が欲しがるタイミングでパスが出せて、3人目の動きを意識しながらボール回しができます。気持ちの部分も強く、2020年の東京オリンピック出場を見据え、成長したいという意欲に満ちています。
 
 東京ヴェルディには、ほかにもプロ1年目の渡辺皓太選手、2年目の井上詩音選手と、ボランチには有望な選手がいます。彼らふたりも東京オリンピックに出場できる世代で、すでにJ2の舞台で活躍しつつあります。
 
 そんな先輩コンビを抜いて試合に出場し、そしてふたつ年上のプロで結果を出している世代に勝っていかなければオリンピックへの道は開けません。これは並大抵な覚悟や頑張りでは難しいでしょう。
 
 以前、セレッソの杉本(健勇)選手がロンドン・オリンピックに出るため、ヴェルディに3か月間在籍していました(レンタル移籍)。出場機会を求めての行動。そうです、覚悟が成長を早めるのです。プロ選手になるのはサッカーを始めた時にみんなが持つ夢ですが、その先の夢は、どれだけ求めるのかによって変わってくる。サッカー選手にとってとても重要なことです。
 
 夢を持って前へ進んでいける選手こそが、本当に強いハートの持ち主なのです。
 
 藤本選手にはそれがあると信じています。「必見」という観点からは少しズレてしまったかもしれませんが、10人目として挙げさせていただきました。
 
 ほかにも紹介したい名ボランチはいましたが、編集部担当の方から「各チーム1名まで」と言われていたので、このような人選となりました。メジャーなところは避けたつもりですが……避け切れてなかったかもしれません。
 
 今回も読んでいただいてありがとうございました。また違うテーマや切り口で、思うところを書かせていただこうと思います。
 
橋本英郎
 
<了>

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PROFILE
はしもと・ひでお/19795月21日生まれ、大阪府大阪市出身。ガンバ大阪の下部組織で才能を育まれ、1998年にトップ昇格。練習生からプロ契約を勝ち取り、やがて不動のボランチとして君臨し、J1初制覇やアジア制覇など西野朗体制下の黄金期を支えた。府内屈指の進学校・天王寺高校から大阪市立大学に一般入試で合格し、卒業した秀才。G大阪を2011年に退団したのちは、ヴィッセル神戸、セレッソ大阪、長野パルセイロでプレーし、今季から東京ヴェルディに籍を置く。日本代表はイビチャ・オシム政権下で重宝され、国際Aマッチ・15試合に出場した。現在はJリーガーとして奮闘する傍ら、サッカースクールの主宰やヨガチャリティー開催など幅広く活動中。Jリーグ通算/427試合・21得点(うちJ1は339試合・19得点/2017年8月7日現在)。173センチ・68キロ。血液型O型。公式ブログは、http://pakila.jp/hashimoto/