左・アイコス、中央下・プルーム・テック、右・グロー

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 嫌煙ムードが蔓延する昨今、爆発的なヒットとなっているのが「アイコス(IQOS ※2016年夏までiQOSという表記)」「グロー(glo)」「プルーム・テック(Ploom TECH)」という3つの加熱式タバコ(たばこベイパー)。

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 福岡市とインターネットでの限定販売だったプルーム・テックは、6月29日より東京都心部の専門店と一部タバコ販売店で発売を開始。一方、仙台市在住者限定で販売を開始したグローも、7月に東京と大阪に専門店をオープン予定。ここにきてさらなるブームの盛り上がりが予想される。

 もちろん女性も例外でなく、ニオイの問題や本数削減のために従来の紙巻きタバコから切り替える人も多い。では、その3つで女性に向いているものはどれなのか。多角的な視点から検証してみたい。

ニコチンは吸収したいがタールは不要。燃やさないタバコ機器が生まれた背景

 タバコはニコチン摂取器である。一般的な紙巻きタバコと呼ばれるものは、先端に火をつけてその煙を吸い込むことによって役目を果たす。ただ、たいていの物質が燃焼するときに発生させるのがタール。喫煙者はタバコ葉を燃焼させてニコチンを吸入したいのだが、燃焼するがためにタールも同時に吸い込むこととなる。

 このタールは有害物質の総称で、発がん性などが取りざたされるのもこれが中心。喫煙者としてもニコチンは吸いたいがタールは不要なのである。副流煙の問題も同様で、ニコチンは中毒性は取りざたされるが、毒性はタールの圧勝。非喫煙者は混同しがちだが、規制すべきは何よりもタールなのだ(ニコチンも無害ではないが)。

 そうして生まれたのが、“燃やさずに”ニコチン吸収を可能にした「加熱式タバコ」。業界的には「たばこベイパー」と呼ばれたいらしいが、まだまだ普及していない。また「電子タバコ」と呼ばれることも多いが、正確にはニコチンを溶かしたリキッドを蒸気化して吸い込むのが電子タバコ。しかし、日本国内では薬機法の問題でニコチン入りのリキッド販売が許されておらず、ニコチンなしの蒸気吸入をするものが電子タバコ(ベイプとも呼ぶ)とされている。

「電子タバコ」と、タバコ葉を燃やさないが、加熱してニコチンを吸入できる「加熱式タバコ」(たばこベイパー)は別物であることを知っておきたい。

煙害は本当に低減されているのか、その根拠は、実は一目瞭然!

 アイコスを発売しているフィリップ・モリス社が「有害物質を9割カット」をうたっているが、その割合は別としても、実際、紙巻きタバコと加熱式タバコの使い方の違いで物理的に減っていることがわかる。

 紙巻きタバコは、火をつけたらずっとタバコ本体から煙が出続ける。喫煙者が吐く煙のほかに、本体からの煙という二重の煙発生箇所があるのだ。

 その点、アイコスなどの加熱式タバコは吸った後の吐いている時だけ蒸気が出る上、その蒸気も喫煙者の肺というフィルターを通してから排出される。肺のフィルター機能次第だが、有害物質をかなり低減した状態で排気しているのだ。この段階で初めて副流煙となる。

 この差は非常に大きい。また煙は上空に溜まっていくが、アイコスなどの加熱式タバコの蒸気は重いために広がりにくいし、目線よりは下に向けて広がっていくのが違いだ。

 加熱式タバコ(たばこベイパー)は煙を出さない。出るのは蒸気。コンビニのおにぎりや化粧品の保存料として使われている、安全性の高いPGなどのグリセリンを加熱すると湯気が出るのだが、これは煙ではなく蒸気。電子タバコ(ベイプ)も同様の仕組みを採用している。

 ではそれぞれの特徴を見ていこう。

アイコス、グロー、プルーム・テック、それぞれの仕組みと特徴

■アイコス

 加熱式タバコの代表で、一番先にヒットした機種。2016年4月にテレビ朝日系『アメトーーク!』で取り上げられたのをきっかけに大ヒット。一気に市場から姿を消し、在庫不足状態に。

 現在は「マールボロ」を擁するフィリップ モリス ジャパンよりマイナーバージョンアップした新機種『IQOS 2.4 Plus』(希望小売価格 税込10,980円・2017年3月発売)が出ている。従来機種よりも1,000円アップ。故障しやすかったポケットチャージャー開閉部分を改良、ホルダーの充電時間も1分短縮し、バイブ機能も搭載したのが違いだが、基本機能は同じ。

 最近では全国都市部のアイコスストアやドン・キホーテなどの量販店でも比較的入手しやすくなった。喫味がもっとも強く、タバコらしい。

 アイコスホルダー内部には加熱ブレードが仕込まれており、そこに専用のヒートスティックを突き刺して使用する。これが結構コツがいり、たまに失敗してスティックが無駄になることも。また手入れもしっかりしないとニオイがきつくなる上、故障の原因にもなる。

■グロー

「KENT」や「ラッキーストライク」で知られるブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパンによる『glo』(スターターキット・希望小売価格 税込8,000円・2016年12月発売)。

 グローはアイコスと原理は同じ。グリセリンを染み込ませたタバコ葉を直接加熱してニコチン入り蒸気を発生させてそれを吸い込むのだが、こちらは穴に細身のスティックを入れて周囲から加熱する。

 アイコス同様、最近、専用ネオスティックを抜けにくくした細かなバージョンアップを行った。またカラバリも4色展開に。

 アイコスとの違いは、バッテリーごと手に持って使用するところ。これによりアイコスのようにこまめにホルダーを充電する必要がなく、続けて吸うことも可能に。喫味はネオスティックの細さから予想される通り、軽めだがそれなりにタバコ感はある。

■プルーム・テック

 最大シェアブランド、元マイルドセブンである「メビウス」を擁するJT(日本たばこ産業株式会社)の『Ploom TECH』(スターターキット・希望小売価格 税抜き4,000円・2016年11月発売)。

 すでに昨年バージョンアップ済みで、知名度はまだそれほどではないが、福岡市内とネット限定販売だったものの、アイコス同様、予約受付停止状態となる隠れたヒットを遂げている。

 プルーム・テックはグリセリン蒸気を発生させるところは同じだが、それをタバコ葉を細かく刻んだカプセルを通すことで後からニコチンを付け加えて吸い込むという原理が違う。

 最大の特徴は“断続ちょこちょこ吸い”ができるということ。アイコスもグローもスティックを差したら最後まで吸い切らないといけないが、プルーム・テックは一服して、すぐにポケットにしまい、またしばらくして一服するという芸当ができる。

 喫味は最も軽く、メンソールタイプでないと吸った気がしないという人が大半だろう。しかし普段から低タールタイプのタバコを吸っている人なら移行しやすいか。

女性が最高に気になるニオイ問題を検証。圧倒的に臭くないのは?

 女性の加熱式タバコ選び、最大の要因はやはりニオイではないだろうか。そこで非喫煙者の妻を実験台にして、それぞれのニオイを検証してみた。

■アイコスはやっぱり臭い!

 実際に妻にアイコスの蒸気を吹きかけてみると、大不評。「紙巻きタバコより苦手かもしれない」と。髪や衣服へのニオイ移りもはっきりわかる。

 その独特の臭気はポップコーン臭とも呼ばれ、酸味のある香りは実にクセがある。紙巻きタバコに比べれば明らかに衣服にニオイはつきにくいのだが、吸った後はしばらく口の中がアイコス酸味に溢れる。

 また重要になってくるのがメンテナンス。アイコスはホルダー内部が汚れる。無水アルコールや専用スティック(アルコール綿棒)で清掃しないとどんどんニオイはきつくなる。

■グローはアイコスほどではないけれど、やっぱりニオう

 妻にグローの蒸気を吹きかけてみると、「臭いことは臭い……」という悩ましい反応。アイコスよりはいいというレベル。

 専用ネオスティックが細身なぶん、アイコスほどのきついニオイにはならないものの、やはり同種の酸味のある香り。蒸気が少ないぶん髪や衣服へのニオイ移りは少ないが、中途半端。ルックス的には、Apple製品のようなデザイン性がかっこいいだけに惜しい。

■プルーム・テックは髪に吹きかけても大丈夫!?

 妻にプルーム・テックの蒸気を吹きかけてみると、「よ〜く嗅ぐと、遠くのほうにアイコスに似たニオイを感じるような、感じないような」というほぼ無臭レベルで好評。

 機器がアイコスの半額だというのに、知名度が圧倒的に低いプルーム・テック。ところがニオイ問題はほとんど解消されているのが特徴。このプルーム・テックのみ、直接タバコ葉を加熱するのではないという方式で、タバコ感は軽いがほとんど無臭を実現している。

 試しに妻の髪の毛にモロに吹きかけてみたが、正直ニオイ移りは感じられなかったという。

 例えば『MEVIUS Cooler Purple for Ploom TECH』はアロマ感溢れるメンソールなのだが、非喫煙者の隣で吸っても「ブルーベリーのガムを噛んでいる?」という印象に。アイコスの独特の臭気が気になる人は、一度は試したい。

使い勝手、入手しやすさ、ランニングコストを比較してみよう

 日常的に使用するなら、使い勝手の面も気になる。まず充電方式だが、3機種ともMicroUSB経由で充電する。PCにつないでの充電も可能だが、電圧を考えるとiPhone付属品などで有名なコロッとしたACアダプターに専用USBケーブルを使用して充電するのがいい。

 女性の場合、タバコを専用ポーチに入れて持ち歩く人も多いのではないだろうか。アイコスはもっさりとした重量感溢れる本体の存在感が大きく、従来のタバコ用ポーチにそのまま入らないので注意。専用ヒートスティックとは別にアイコス本体とポケットチャージャーで約115g。充電用のケーブルや詰まったときのための綿棒も持ち歩きたいと考えると、かなりかさばる状態。専用ケースも売られているが、結構な大きさとなる。

 グローはスマートなルックスだが、本体重量はしっかり約100g。同様に従来のタバコポーチには入らないし、重いことは重い。さらにこの本体ごと持って使用するので普段から重い。手のひらにフィットする感覚なので気になりにくいが、重量は紙巻きタバコの比ではない。

 驚くのが、プルーム・テック本体の15gという軽さ。充電用USBアダプターを念のために持ち歩いても軽い。安物のボールペン程度の重量。専用ケースが付属するが、それが70g……。ケースが本体の7倍近い重量とは、全く意味がわからない。使う人などいるのだろうか。ちなみにプルーム・テックのすごいところはニオイがないところ。したがって、通常あまりできないが、化粧ポーチやペンケースに忍ばすということも可能。

 構造も単純なので水に濡らしでもしない限り、気を使う必要はあまりない。そもそもジャケットのポケットなどにそのままペン状態で差し込んでおいても大丈夫。さらにニオイがほとんどしないため、周りに気づかれずにソーッと吸うこともできる。それを「ステルス・スモーキング」という。今回紹介した3製品の中でそれが可能なのはプルーム・テックだけだ。

 ランニングコストを単純比較すると、1箱あたりのカートリッジの税込価格がアイコスとプルーム・テック460円、グローが420円とグローの一人勝ちのようだが、実はアイコスとグローは1本吸い切らないといけないという縛りがある。

 喫煙者ならわかると思うが、続けて吸いたいときと、2口だけ吸いたいときなど、実はいろいろな気分があるものだ。喫煙途中で電話がかかってきて呼ばれる、ということもあるだろう。そんなときにアイコスとグローは途中で吸うのをやめると、スティックの再利用はできない。そのままゴミ箱行きである。

 ところがプルーム・テックのみ、断続的に吸うことができるので、1箱を無駄なく使い切ることができるのだ。紙巻きタバコはどんなに頑張っても9割くらいが限界で、それ以上吸おうとすると火傷してしまうが、プルーム・テックはカプセルの中のニコチンを最後まで吸いきることができる。結果として無駄が一切ないというところから、コスパ最強はプルーム・テックなのだ。

 ただ、LEDランプの点滅で知らせてくれるものの、そのカプセルの終了タイミングがわかりにくいというデメリットはある。味が薄く、蒸気が出なくなったら終わりと思えばいいのだが。

 ちなみに、加熱式タバコは火を使わないので灰皿が要らないとまことしやかに語られるが、そんなことはない。ニオイのきつい吸殻は密閉したくなる。唯一プルーム・テックのみ、ポケットにそのまま入れても臭わない。

女性向け加熱式タバコBEST3を決定!

 以上の結果から、女性におすすめの加熱式タバコをランキングしてみようと思う。

<1位>プルーム・テック

 ニオイを気にするなら、問答無用にプルーム・テックである。断続的に吸うことができるという、コスパの面で有利な特徴もいい。喫煙室でもシックなデザインで目立たないが、長めのフォルムは異色。カラバリも存在しない。ブランドがイメージ的に男性感の強い「メビウス」一択というのが、気になるところか。

 入手も今までは福岡市とインターネットにとどまっていたが、6月にネット予約を再開。6月29日からは新宿や銀座などの東京都内に専門店を出店、さらに7月10日から都内に取扱店を100店舗展開することから、ユーザー拡大の気配は最大。その期待感からJTの株価まで上がっているほどだ。

<2位>グロー

 スタバでのドヤ顔でおなじみのMacBook Airと質感が同じボディや、LEDが特徴のグロー。女性的でありつつ、ガジェット的魅力に溢れた美しさが特徴。ただし「KENT」のブランド名がついているからといって、過度な期待は禁物。アイコスがマールボロ・ブランドなのに別物の味わいなのと同様、「KENT」の味わいよりも加熱式タバコ特有のフレイバーと考えたほうがいい。

 ただ、クールなルックスはモノとしての所有欲を刺激する。普段から「KENT」などの洗練されたブランドイメージが自分のアイデンティティになっている人にとっては、有力な選択肢か。

 最後発で宮城県仙台市在住者限定、それ以外の地域の人はネット購入もできないという厳しい制限で登場したグロー。購入可能範囲を宮城県全域と東京都、大阪府に広げる。現状発表されているのは6月26日から東京・大手町、28日から秋葉原、7月5日から大阪・なんばに期間限定体験スポットを展開。さらに、7月3日に大阪・梅田、7月21日に東京・青山にgloストアのオープンが予定されているが、まだまだ入手難の印象は否めない。おしゃれグッズとしてはシャンパン・ゴールド、モーヴ・ピンク、ストーン・ブラック、ミスト・ブルーが追加になったのは気になるところ。

<3位>アイコス

 まず、精密機械という面で圧倒的に複雑な構造を持つアイコス。ふたを閉めたときにロックする部分が壊れて閉まらなくなる故障も多く、その部分は『2.4Plus』で対策は取られたが、内部のブレードの清掃が厄介なことや、精密機器としての故障の可能性が大きいことは依然として弱点か。続けて吸うことができないというデメリットは思う以上にストレス。

 いつの間にか入手はしやすくなっていたアイコス。首都圏に点在するアイコスストア、もしくはドン・キホーテなどでも在庫があれば予約なしでも入手可能だ。コンビニでも予約受付をやっと再開した。専用ヒートスティックは全国のタバコ店で扱っているので、入手性はピカイチ。スティックの種類も3月に2種追加されて、最多。

 現在トップシェアのアイコスが、必ずしも女性にとってもおすすめだと言えない結果となった。また健康上のリスクについても、低減はされているかもしれないが、無害になったわけではないこともお忘れなく!

(文/清水りょういち)

<著者プロフィール>
清水りょういち(しみず・りょういち)◎元・音楽雑誌「月刊歌謡曲(ゲッカヨ)」編集長。現在はライターとしてエンタメ系〜新製品レビュー、政治経済まで幅広く執筆。新商品レビューは「価格.comマガジン」などで掲載中。著書『J-POP作詞術のウラ技☆オモテ技』。現在は撮影・編集担当の妻と「ゲッカヨ編集室」を運営。