提供:週刊実話

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 「総理のご意向」、「官邸の最高レベル」、「忖度」。この3語により大騒動となった加計学園の獣医学部新設を巡る疑惑だが、結局は国会閉幕の時間切れで真相は藪の中。自民党からは「そう痛手を負うことなく国会を終えることができた」(二階俊博自民党幹事長)、「これで直近の都議選も失速なく戦える」(自民幹部)との声が聞こえてくるものの、強引な幕引きは自民党、安倍政権の“終わりの始まり”となりそうだ。
 「一連の疑惑を告発した文科省前事務次官の前川喜平氏の証人喚問を、なぜ頑なに拒否するのか。国民は自民党や官邸のヤリ口に相当うさん臭さを感じている。これが7月2日投開票の都議選に影響することは必至で、一時失速しかけていた小池百合子都知事には突風並みの追い風となる。やがて批判の矛先は、加計学園に関する文書を『怪文書』と言い切り、幕引きを裏で操っていたとされる菅義偉官房長官に向かうだろう。その菅氏が都議選へ向け陣頭指揮を執って小池批判していることも、都民ファーストの会にとっては好都合だ」(小池氏周辺関係者)

 前川氏の告発により火がついた「総理のご意向」文書の存在の有無は、当初、否定していた文科省も国民批判に耐えられず再調査することとなり、一転、存在を認めることになった。
 「ただし、この再調査については、国民の批判が強まることで支持率にも影響を与えそうなことから、それをかわすための官邸主導のガス抜きだった。もちろん意向は安倍首相でしょうが、緻密なシナリオは菅氏がしっかり組んでいたのです」(全国紙政治部記者)

 加えて、自民党関係者もこう語る。
 「6月13日夜、安倍首相は赤坂の中華料理店で世耕弘成経産相らと食事の際、支持率が低下気味の中で加計学園問題の説明逃れの印象を少しでも減らすため、国会最終日に一度だけ集中審議で説明すると洩らしていたという。同時に文科省の再調査と内閣府の調査も指示し、そのもとで菅氏が中心となり対策を練ったとされています」

 その筋書きはこうだ。文科省は再調査で文書の存在を認め、国民はさらに事実関係の詳細を求める。そこで文科省に文書やメールを出したという内閣府でも調査を行い、結果“安倍首相からの指示はなかった”とする――。
 「官邸の萩生田光一官房副長官の“加計ありき”の内閣府文書書き換え疑惑については、国家戦略特区を担当する山本幸三地方創生担当相が、メモを作った内閣府官僚を『文科省からの出向人物。事実関係を確認しないまま古巣にご注進の文書を作って送信した』として官僚叩きに転換をする。ここら辺りで国民は納得し、野党の追及も行き詰まる…というものだった」(同)

 しかし、これにより国民の疑惑の眼は一層深まってしまった。なぜこれで国会を閉めるのかという声もいっそう強まった。安倍首相と菅氏の計算に狂いが生じてきているのだ。
 「百歩譲って、萩生田氏の文書書き換え疑惑については山本氏が指示したとする。であれば、山本氏が官邸の意向、つまり安倍首相側近の萩生氏の指示を、藤原豊内閣府審議官に指示したことも考えられる。そのため、自民がこの疑惑を完全払拭して都議選に有利にするには、国会閉会中、都議選前に集中審議、もしくは証人喚問をするしかない」(官邸記者)

 一方、自民党のこの中途半端な姿勢に諸手を挙げて喜んでいるのが小池氏だ。
 小池氏周辺関係者は、こう語る。
 「小池氏は一時、東京五輪の仮設費用予算500億円の負担先を巡って、菅氏の姦計により『“決められない知事”のため最後は官邸主導で都に負担させる』という形にはめられた。さらに菅氏は、事あるたびに『豊洲で風評被害をバラ撒いている』、『政治家の出処進退も自分で決められない』と小池氏を責め立ててきた。もはや菅氏と小池氏はハブとマングース並みの敵対関係ですよ。互いにいま潰しておかなければ、近い将来、自分が潰されることになる」
 そのため小池氏は、都議選前に最大の弱点だった豊洲移転問題に、「築地ブランドも守る」という“両利用”という方向性を見せ汚名返上を図った。

 ともあれ、菅氏がこれだけ前面に立ち、激しく小池氏を攻撃する理由について「菅氏に野心があるからだ」とは自民党関係者。
 「菅氏は、小池氏が都議選で圧勝し都議会を乗っ取り、さらに、政権中枢に切り込んでくることを恐れている。集団就職で秋田から上京し、叩き上げで這い上がってきた菅氏にとって、このままいけば積み上げてきたものが一気に壊されることを予感し、珍しく本来の激しい性格を表に出したのでしょう。小池氏に国政を乗っ取られるぐらいなら、自分が“ポスト安倍”として天下取りを狙ったほうがいい。若手議員を集めた自身の勉強会『韋駄天の会』の勧誘を活発化させているという話があるのも、そのためです。しかし、加計学園で上手く立ち回ったと思いきや国民をなめ過ぎた」

 都議選で自民党が破れれば、前面に立った菅氏は安倍首相ともども求心力を失うことになる。共謀罪の乱暴過ぎる成立でも政権批判は強まるばかり。
 小池氏の“菅成敗”の日は近いのかもしれない。