自分が出せる、RINNE HIP 吉田凜音はなぜラップに挑んだのか
吉田凜音のラッププロジェクト、RINNE HIPが3月15日に、ミニアルバム『裏原ンウェイ.ep』をリリースする。モデル、女優、アーティストと幅広く活動。ラップを始めてまだ1年ほどだが、キレ味とノリの良さは各方面から称賛を得ている。今作は、DOTAMA,、泉まくら、DALLJUB STEP CLUB,、禁断の多数決、バクバクドキンなど個性溢れるミュージシャンを多数輩出するレーベル、術ノ穴(すべのあな)主宰のFragmentが全面プロデュース。彼女の才がどう引き出されているのかも一つの聴きどころとなっている。やり始めた当初は不安もあったというラップも今では「自由だし自分が出せる」と話す彼女。ラップを始めた経緯や音楽とどう向き合っているのか? そして、作品のテーマになった「裏原」の魅力について話を聞いた。
いきなり「HEY YO!」なんて言わないです。私、常識人なんで(笑)
RINNE HIP(吉田凜音)
――ラップをやり始めたきっかけは?
『IDOL NEWSING』というDVDマガジンの企画で、「やってみませんか?」とお誘いがあって。私も、「ラップ面白いじゃん!」という感じでやったんです。それが「りんねラップ」という曲で、すごく反響があって。AAAの日高さんとか、芸能界のいろんな方から良かったと言ってもらえて。それで、RINNE HIPとして『裏原ンウェイ.ep』を出すことになったんです。
――その以前からラップに興味が?
ちゃんとラップの曲を聴いたことはなくて。「今夜はブギー・バック」とか、そういうヒット曲を知っていたくらいです。だから、「やってみませんか?」と言われた時は、本当にびっくりして「え? 私がラップやるんだ!」って。初めての体験だから、最初は不安しかなかったです。
――その「りんねラップ」は1年くらい前?
中学3年生の終わりくらいだったと思います。
RINNE HIP(吉田凜音)「裏原ンウェイ.ep」
――それからライブでもやって、反応は?
みんなのノリ方が、それまでとは違っていました。普通に歌を歌っていた時は、みんな手拍子をしたり腕を振ったりという感じでノッてくれていたけど、「りんねラップ」ではグイグイくる感じで。私自身も、やるのがすごく楽しかったし。
最初は、ステージパフォーマンスとか、お客さんの盛り上げ方とか、「どうやったら良いのかな?」という感じでした。だけどお客さんがすごくノッてくれたので、私も同じようにグイグイといけば良いんだなと。変に作ったり、気持ちを抑えたりしなくて良いんだなと思って。
――女の子がラップすると、少しふわっとしたユルい感じになりがちですけど、凜音さんのラップは、かわいさもありながらパンチが効いていてかっこいいですね。かなり練習したんですか?
最初の「りんねラップ」をもらった時は、まだ札幌に住んでいたので、ラップしたデータを送って、SNS上で「ここはもっとこうして」とか、やりとりをしながらアドバイスをいただいていたんです。今回は、いろんな曲調があって、時間もあまりなくて。家で練習をして、レコーディング当日に現場でディレクションして高めてもらった感じでした。
――家で練習するんですね。
昼間は他の仕事や撮影とかがあったりするので、あまり時間もなくて。家でも、主に寝る前とかでした。夜だから大きな声を出すわけじゃないけど、声に出して歌ったり、ノートに書いたりしてやっていました。
――雑誌の撮影とか、他の仕事の時にラップのノリがつい出てしまったりは?
ないです。それ、最近よく言われるんです。初対面で挨拶する時とか、私はこういう普通の感じなので「あれ? ラッパーじゃないの?」って。本当のラッパーの方でも、いきなり「HEY YO!」なんて言わないと思うんですけど(笑)。そういうところは私、常識人なんで(笑)。
DOTAMAさんはギャップがすごくて「おお〜!」って
RINNE HIP(吉田凜音)
――『裏原ンウェイ.ep』のリリースに先駆けて、収録曲を渋谷や原宿のいろんなところで歌って撮った動画を、Twitterで6日間連続配信したのも話題を集めましたね。
ああいうのは初めてでした。6本で1日を表したものになっていて。Twitterでもすごく反響があって。友だちも良いって言ってくれたし、「凜音らしさが出てる」と言ってもらえて、すごく嬉しかったです。
――竹下通りを歌いながら歩いているシーンでは、周囲の通行客が驚いていましたね。
あれは、音が私の付けているイヤホンにしか出ていないので、周りには私の声だけが聴こえている状況だったんです。だから、みんな「え? 何やってんの?」となっていたんですけど、私は構わず楽しく歌わせてもらいました。すごく楽しかったです。
――表題曲「裏原ンウェイ」のMVも、カラフルでおしゃれでしたね。
私がギャングのボスになって、部下を従えている感じの、なかなかない感じのMVになりました。撮影は原宿で、朝から夜まで丸1日かかったんですけど、これもすごく楽しかったです。
――今回のミニアルバム『裏原ンウェイ.ep』の曲と歌詞は、クリエーターに作ってもらっているわけですが、「裏原ンウェイ」というタイトルとかは、凜音さんからもアイデアを出したり?
そうですね。ジャケットのデザインはこういう感じが良いとか、裏原をコンセプトにするとか、私らしさを出したいと思って。さっきお話した6日連続配信した動画で着ている服も、全部私服でコーディネートしているんです。
最初の打ち合わせで、自分のやりたいこととか気持ちをお話させていただいたので、クリエーターの方々は、それを汲んで作ってくださっていて。だから自分の気持ちともすごく重なる曲が多くなりました。
――「Ready make some noise feat. DOTAMA」には、『フリースタイルダンジョン』でも人気のDOTAMAさんが参加。
『フリースタイルダンジョン』を見たとき、あの格好ですごいことを言うギャップがすごくて。「おお〜!」という感じで。
――DOTAMAさんの歌詞が、親目線みたいになっているのが面白いですね。
私の声だけの音源に、DOTAMAさんの声が入ったとたん、「曲が違うんじゃないか?」と思うくらい変わったので。「すごいな〜」と思いました。聴き比べたら、あるのとないのでは、大違いでした。
――5曲目の「Lonely Rap Girl」という曲は、スローテンポでチルアウト感があって。すごく良いですね。
いちばん最後に録った曲なんですけど、すごく難しかったんです。ゆっくりだけど、音にノらなきゃいけない感じで。DOTAMAさんとの曲はEDMだから、EDMのビートに“ノッてノッて”という感じだけど、「Lonely Rap Girl」はビートが独特だったので。
ちなみに今日着てる白のニットは400円です
インタビューに応じるRINNE HIP(吉田凜音)
――『裏原ンウェイ.ep』というタイトルからも、やっぱり裏原が好きなんですね。
好きですね。竹下通りより裏原です。
小道にちょっと入ると、カフェとか古着ショップとか知らないお店がけっこうあって。でも、入ってみたら私のタイプのお店だったりして。けっこう広いので、何度行っても新しい発見がいっぱいあるんです。動画の中でジャズっぽい曲調の「KITTY」を撮った「PIN NAP」というお店は、プライベートで行って買い物していますし、「NADIA」とか、古着屋さんの「CHICAGO」も普通によく行きます。
――表参道とかには興味ない?
逆に表参道には、何があるんですか?
――表参道ヒルズとか。
ああ、入りづらい感がすごいです(笑)。何回か行ったことあるけど、まだ私の年齢には早いかなって。16歳という今の私の年齢に合っているのは、やっぱり裏原とかじゃないですかね。着る服もそうだけど、今の年齢の時からそんな良い服とか着てたら、「今後どうなっちゃうんだろう?」と思うし。
高価なものには、あまり興味がないんで。安ければ安いほうが良いみたいな(笑)。でも、もし高いもので欲しいのがあった時は、ちゃんとお金を貯めてから買います。そのほうが、頑張った感があるし。ちなみに今日着ている白のニットは、400円ですから!
――それは安い!
これは、新大久保で買いました(笑)。
――裏原からいきなり新大久保ですか?
最近は、韓国も好きなんです。韓国コスメとか大好きなので、友だちとよく行きます。
――自分の中のセンスを磨くのに、やっていることはありますか?
中学1年生の時から、毎週札幌から東京に来るようになって。当時は、ファッションはどうでもよくて、着られれば良いやって感じだったんです。でも東京に来ると、周りの子がみんなすごくオシャレで、すごいなと思って。そこから私もどんどん服が好きになって。誰かが着てる服を見て、良いなと思うものがあったら、どこで買ったか聞くようにしていて。でも同じものは着たくないじゃないですか。だから他店で似たものを探したりとか。あとはInstagramとか雑誌とか。映画『レオン』に出てくる、マチルダ(ナタリー・ポートマン)のファッションなんかもすごく好きです。
――好きなものに傾向はあるんですか? シンプルが良いとかカラフルが良いとか。
それは、本当に気分です。めっちゃ気分で変わります。全身真っ黒の日もあれば、今日みたいに少し爽やかめでデニムを着る時もあるし。
着る服は、寝る前に用意しています。お風呂に入りながらとか、「明日何を着ようかな?」って。最近は私服でお仕事をすることが多くなったので、それで前より考えるようになりました。
――そういうのは、自分のセンスが認めてもらえている感じで、嬉しいですよね?
嬉しいんですけど、自分ではそんなにセンスが良いとは思ってなくて。まだまだだなって。だから、すごくセンスのある人にコーディネートしてもらって、もっとハイセンスを学びたいです。
全部が楽しくて。全部に新しい発見がある
RINNE HIP(吉田凜音)
――ラップを始めてから、音楽に対する向き合い方は変わったりしましたか?
歌をやっている時とラップの時は、全然感覚が違っていて。ラップは、自由に歌えると言うか。私自身の勢いが、そのまま出せるんです。歌は、ゆるい感じが多いから、気持ちを抑えなきゃいけない時もあるし。
――ラップをやっている人で、憧れる人とかは?
水曜日のカンパネラのコムアイさん。コムアイさんのファッションも好きだし。ただ、髪型も似ているし、キャラがちょっとかぶって、「マネしてんのか?」とか言われそうですけど(笑)。
――今、同世代の女の子で歌をやっている方はグループが多いですが、凜音さんはソロ。そこで思うことは?
たまにグループのライブを見て、グループも良いなと思う時もあるけど、自分というものを出せるのは、やっぱりソロかなと思うので。
メンバーが5人いたら、その中の1人を好きになることが多いと思うんですけど、そういうのが嫌で。ライブで視線が、そっちに行くじゃないですか。だから、私だけが歌って私が1人でライブして、私だけに視線を集めるのが好きなので。やっぱりソロがいいです。
――今後はどういう活動をしていきたいですか?
今は、本当にいろいろなことをやっています。女優もモデルもやっているし、バンドもやったりとか。やって、全部が楽しくて。全部に新しい発見があるし。でも、モデルは今『Popteen』でやらせてもらっているんですけど、モデルではまだまだ下っ端で、藤田ニコルさんとかすごくカッコよくて憧れます。女優としても、本当にまだまだですし。
最終的には、歌はずっと続けていきたいです。大きなステージでワンマンライブをやって、多くの人に見てほしい。私の活動全体を通して、それが達成出来たら嬉しいです。
(取材・撮影=榑林史章)
◆RINNE HIP(吉田凜音) 2000年12月11日生まれ。札幌出身の高校1年生。バラエティ番組『関ジャニの仕分け∞ 』のコーナーで歌うまキッズとして出演したことで注目を集め、2014年11月、中学2年生13歳の時にノーナ・リーヴスの西寺郷太プロデュースのシングル「恋のサンクチュアリ!」でメジャーデビュー。女優としても活動し、2015年には、映画『女子の事件は、大抵トイレで起こるのだ。』、今春公開予定の映画『はらはらなのか。』などに出演。独自のファッションセンスも同世代の女子から高い共感を集め、『Popteen』などファッション誌でモデルとして活動。マルチな才能が光る、2000年生まれ世代代表の一人。
3月23日(木)東京・渋谷WOMB
「RINNE HIP『裏原ンウェイ.ep』リリースパーティー」
4月2日(日)東京・代官山LOOP