新体制発表に出席した大前。タイトルへの熱い思いも口にした。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 1月14日、大宮アルディージャの新体制発表会見が行なわれた。その場に姿を見せた新加入メンバーを見ると、派手さはないものの各クラブで実績を残してきた“面白そうな面々が集まっている”というのが正直な感想だった。下部組織から柏レイソル一筋で、長短のパスを武器とする茨田陽生、昨季のJ2で13得点・11アシストという結果を残した“江坂2世” 瀬川祐輔、そして横浜F・マリノスやFC東京で活躍した長谷川アーリアジャスールと、攻撃面で特徴がある選手たちが新たな挑戦の地としてこの埼玉のクラブを選んだ。
 
「アグレッシブに戦う」と渋谷洋樹監督が語るように、今季の目標は攻撃のクオリティを高めること。上記の選手たちは、その目標を達成するために獲得したとも言えるが、とりわけ最大の目玉は清水から移籍を果たした大前元紀である。これに異論はないだろう。
 
 流済大柏高を卒業して迎えた2008年度のシーズンからJリーガーとなった大前は、約1年半のドイツ挑戦を除いて清水一筋を貫いた。2015年にはクラブが史上初の降格という憂き目にあったが、その中で届いた他クラブからのオファーも固辞し、チームの中心として1年でのJ1復帰に貢献したことも記憶に新しい。そんななか、昨年の12月半ばに届いた大宮からのオファーを受けて自身初の国内移籍を決断した。
 
「サッカー選手としてゼロから自分がどれだけ成功できるかというのを第一に考えた時に、エスパルスに残ったほうが良いのか、出たほうが良いのかというのがあって。環境を変えてやるほうが自分の中ではワンステップもツーステップもレベルが上がると思ったので。すごく悩みましたし考えましたけど、決断をしました」
 移籍の理由をこう語るが、新たな場所でチャレンジをしたいという思いは、何もこの大宮からのオファーが来て初めて生まれたものではないとも言う。
 
「(移籍については)ずっと悩んでいましたよ。去年もそうです。J2に落ちたタイミングでもありますし、その時期も考えたところもあります。それに、昨年に怪我をしてから9月に復帰しましたけど、それまでの間も“これでいいのかな”と悩んだ時期もありました。相当悩みましたね」
 今回の決断を下すまでには「サッカー選手になってから最も悩んだ」と言う。そして、意を決した先で用意されていたのは背番号10だった。クラブが彼にかける期待の表われだ。
 
「最後に決めきるところが長けている。教えられない部分を持っている選手」と渋谷監督も絶賛する彼の能力は、より攻撃的なチームとして新たな歩みを始めようとしている大宮にとって、絶対に欲しい存在だった。そして、クラブが持つ大前への強い思いは伝わり、獲得に成功した。
 
「話してみてフィーリングもあった。渋谷監督を漢にしてJ1で優勝をさせたいなと本当に思いましたね」
 大前も渋谷監督に対して持ったファーストインプレッションはかなり良いものだったようで、指揮官の熱意が移籍の決め手のひとつになったことも間違いないだろう。
 
「自分にそういう番号(10番)をチームが用意してくれたというのは、高い評価をもらえていると思いますし、その評価を結果で、ピッチの上で証明できればいいんじゃないかなと思います。大宮というチームが常に上位にいられるように、タイトルを取れるチームになるように。自分が手助けできていければ良いんじゃないかなと」
 大前はこう意気込みを語ったが、その中で古巣へも言及した。
 
「エスパルスでは最高の時間を過ごしてきましたし、エスパルスの地位は自分の中でも特別でした。けど、一回それを無くした時に自分がどれだけのサッカー選手なのか、と。無くさないとそれは分からないと思うので。それを無くした時に大宮でどれだけ自分がやれるのかというのは個人的にはすごく楽しみです」