危なげない勝利を収めたブラジル代表の戦いぶりを評価する一方、日本への言及はほとんどなし。単純に関心を引くプレーがまったくなかったからだろう。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 7月30日に行なわれたリオ五輪直前の練習試合・ブラジル対日本戦の翌日、スポーツ紙『ランセ!』には「セレソン、合格」の見出しが躍った。さらにリオの日刊紙『オ・グローボ』は「試合をコントロールして完勝」、サンパウロの主要紙『フォーリャ・デ・サンパウロ』は「ブラジルが五輪前唯一の強化試合で勝利」と、危なげない2-0の快勝に安堵した様子。

 一方、各紙の記事の中に、日本と日本選手に関する論評は見当たらなかった。
 
 それでも「ジャポン(日本)」の単語を探してみると、『ランセ!』では「ブラジルは良いプレー内容で、日本を下した」、「後半、ブラジルと日本が控え選手を続々と投入すると、試合のインテンシティが急降下。にもかかわらず、日本がブラジルを脅かす場面はほとんどなかった」、「大会が始まると、ブラジルはこの日の日本よりずっと強い相手と対戦することになる。この勝利で気を緩めてはならない」と3箇所があった。
 
 この新聞の恒例である選手採点(10点満点)と寸評では、ブラジル全選手のパフォーマンスをコメント付でチェック。例えばGKウイウソンは「試合を通じて、守備機会は一度だけ。それ以外は、ほとんど仕事をする必要がなかった」と評して、採点6.5がついていた。
 
 一方、日本選手に関する寸評は割愛され、採点のみ掲載された。これは非常に珍しいこと。日本選手の最高点は大島の6.5。続いて、藤春、中島、亀川、冨安が6.0。他はいずれも5.5か5.0だった。
 
 また、『TVグローボ』の中継では、アナウンサーが日本選手個々について簡単に説明。例えば浅野については、「スピードがある。最近、アーセナルへの移籍が決まった」と紹介して。ただしチーム全体に関する説明や論評は一切なかった。
 
 両国はリオ五輪本大会の準々決勝で対戦する可能性がある(グループリーグで、ブラジルが首位、日本が2位通過、あるいはブラジルが2位、日本が首位通過)。しかし、ここまで扱いが限られたのは、日本サッカーに対する評価や関心が低く、なによりこの五輪代表が特筆すべきプレーを見せられなかったからだろう。
 
 ただし、近年ブラジルで日本サッカーが大いに注目された時期があった。
 
 2012年10月、日本がパリ・サンドニでフランスを1-0で撃破した時だ。その4日後に、ブラジルと日本の強化試合がポーランドで組まれていた。
 
 ブラジルは1998年のフランス・ワールドカップ決勝で0-3の完敗を喫して以来、フランスを大の苦手としてきた。そのフランスを敵地で下したとあって、ブラジルでは「日本サッカーは成長が著しい」と大いに警戒したのだ。
 
 だが蓋を開けてみれば、ブラジルが日本に4-0と圧勝。その後も両者の対戦は、13年6月のコンフェデレーションズカップで3-0、14年10月のシンガポールでの強化試合で4-0と、ブラジルが繰り返し完勝した。そのため日本サッカーは、やはり成長していなかった、とブラジル国内でも思われてきた。
 
  そうした流れのなか迎えた今回の五輪直前の真剣勝負。しかし、「日本は評価に値しない」という評価を覆せなかったと、言えそうだ。
                                                        
翻訳・構成●沢田 啓明