ビル・ゲイツが貧困撲滅のために「ニワトリ」を寄付する理由とは?
by Dave Wild
「もし1日2ドル(約210円)で暮らさなければいけないとしたら、どのように生活の質を向上させるか?」という質問へのビル・ゲイツ氏の解答は「鶏を育てる」というもので、実際にゲイツ氏は途上国の農村部に10万羽の鶏を寄付すると発表しています。なぜ鶏が貧困を解決できるのか、その仕組みがゲイツ氏のブログにつづられています。
Why I Would Raise Chickens | Bill Gates
ゲイツ氏が「鶏は貧困を解決できる」と考える理由は以下の通り。
(1)育てるのが簡単で、コストが少なくてすむ
エサをしっかりやると鶏が育つのはもちろんですが、基本的に鶏は地面に落ちているものならば何でも食べるので、エサのコストが少なくて済みます。いくらかの木材と針金で簡単に小屋が完成するのに加え、鶏を死に至らしめるニューカッスル病のワクチンにかかる費用は20セント(約20円)ほどなので、わずかな費用と世話で育てることができます。
(2)投資の対象として優れている
ある農民が5羽のめんどりを飼い始めたとします。農民の隣人におんどりを1羽飼っている人がいれば、そこからヒヨコを作り、3カ月後には40羽の鶏を飼うことが可能です。最終的に鶏は1羽あたり5ドル(約520円)で売れるので、農民は貧困の最低ラインである年収700ドル(約7万3000円)を上回る1000ドル(約10万4000円)を1年間で得ることができます。
(3)子どもを健康にしてくれる
年間310万人を超える子どもが栄養失調で亡くなっています。卵をかえし、育てた鶏を売って栄養のある食べ物を購入する農家は多くいますが、鶏の卵はタンパク質を始めとする栄養素を多く含んでいるため、卵のままでも栄養のある食事を子どもに与えることはできます。
(4)女性に力を与える
鶏は牛のように体が大きくなく、家の近くで育てることが可能なので、女性でも世話ができます。メリンダ・ゲイツ氏によると、女性がお金をコントロールすると、男性がお金をコントロールした時よりも貧困から抜け出すのに重要な教育・健康・栄養といったカテゴリにお金を使う可能性が高い、とのことで、女性が鶏によってお金を得れば、家族にとってメリットは大きいというわけです。
実際に鶏を育てて生計を立てている人々の様子は以下のムービーから見ることが可能です。
Poulet Bicyclette - YouTube
両手に鶏を持ち歩く男性。
自転車に鶏をわんさか乗せて……
自転車で走り出します。これは西アフリカ・ブルキナファソで見られる光景です。
自転車でマーケットへ運ばれた鶏は、調理され人々の食事となります。
ブルキナファソは海に面していない内陸国で、鶏は大きなビジネスとなっています。
鶏の数は人口の3倍にも及ぶそうです。
以下の画像に写っているのが実際に鶏の飼育・販売で生計を立てている人々。
需要は非常に高く、鶏を売りにマーケットに行けば、必ず売れるとのこと。
年に300羽も鶏を売っているという女性も。
「子どもが病気になったら鶏を売ってお金を作る」と語る女性もいました。
家庭で、男性だけでなく女性もお金をかせぐことが可能になることで、女性に対する尊敬が生まれます。家庭における決定を女性が行えるようになることで、メリンダ氏の語る「貧困を抜け出すための選択」が行えるようになります。
たった1羽の鶏が、生活を大きく変えることになるというわけです。
なお、ゲイツ氏はサハラ以南のアフリカ諸国に10万羽の鶏を寄付すると共に、養鶏業のノウハウを伝えることで貧困を撲滅するという試みを行っていますが、養鶏が盛んなボリビアは「われわれが500年前の時代にジャングルの中で生産の仕方を知らずに暮らしているとでも考えているのか。ボリビアについて語るのは慎むべきだ」としてゲイツ氏の支援を拒否しています。