ペルーでマンコ待望論が加熱
今月開幕した2018年ロシアW杯・南米予選でペルー代表は連敗を喫した。
今年のコパ・アメリカで3位と好成績を残していただけに失望の大きい結果であるが、思えば前回のコパ・アメリカでも3位に入りながら予選で敗退しており、1982年以来となるW杯出場に早くも暗雲が立ちこめている。
なぜコパ・アメリカで好成績を残しながら予選で結果を残せないのか?もちろん戦力的な問題が第一であるが、短期決戦と長期戦の質の違いが挙げられよう。
短期決戦のコパ・アメリカは開催国を除いて中立地で試合を行うが、南米予選はホーム&アウェイ。一戦必勝の短期決戦に対し、予選はホームで勝ち切る強さとアウェイで負けない“したたかさ”が何より重要なのだ。
コパで毎度不甲斐ないエクアドルが2002年大会以来3度もW杯に出場しているのは、高地キトで行われるホームで圧倒的な勝率を誇るのはもちろん、敵地で負けないだけの地力を身に付けたからである。
ペルーにもクスコなどの高地はあるが、自国の主力選手に悪影響が及ぶことを考慮し基本的に酸素の影響を全く受けない首都リマで代表戦を行っている。
つまりエクアドルなどに比べホームでのプラスアルファが劣る挙句、アウェイでは例え格下のボリビア相手でも高地で戦わざるを得ず、その差し引きでコパ・アメリカほどの成績を残せていないというわけだ。
来月の予選でも好調なスタートを切ったパラグアイにネイマールが復帰したブラジルと、厳しい相手が続く。下手をすれば開幕4連敗となってしまいかねないが、そんな戦いを前にペルー国内ではある選手の待望論が加熱している。
かつて「100年に1人の逸材」と言われたレイモンド・マンコである。
ユース年代での華々しい活躍の後、10代でオランダの名門PSVに引き抜かれたマンコ。
しかしその後はご存知の通り、度重なる女性スキャンダルなどで各地を流浪することとなり、今年4月には2部リーグへの移籍も取り沙汰されるほど転落人生の一途を辿っていた。
だが8月に古巣アリアンサ・リマへ約7年ぶりに復帰して以降、3戦目の試合で豪快なゴールを決めるなどただいま絶好調なのである。
ペルー国民にとってマンコは特別だ。先月、代表メンバーが発表される前には復帰を願う声が早くも上がり、マンコと同じ右サイドの名選手としてプレミアなどで活躍し、現在代表チームのアシスタントコーチを務める同国のレジェンド、ノルベルト・ソラーノも「代表への扉は常に開いている」とマンコの復帰に期待感を示している。
あまりに突然の復活劇に見えるが、きっかけはあった。今年ガールフレンドとの間に子供が出来たのである。そして今月10日に無事男の子が誕生し、マンコは25歳にして初めて父親となった。
それにより一家の主としての自覚が芽生え、謙虚さを取り戻したことが復調に繋がっているのではないかという。
さすがに少し活躍しただけのマンコをリカルド・ガレカ監督は招集しなかったが、代表チームは南米予選の開幕戦でコロンビアに0-2、続くチリに3-4と敗れて連敗。さらにサイドアタッカーのクリスティアン・クエバがレッドカードを受け、来月の試合に出場できないことから再びマンコの待望論が噴出しているというわけだ。
マンコ自身も周囲からの熱狂を十分に自覚しており、
「チャンスを得るために毎日努力して、期待に応えられるよう準備をしているよ」
と、2010年以来となる代表復帰に静かなる闘志を燃やしている。
代表メンバーの発表は間もなく行われるが、そこに紆余曲折を経て輝きを取り戻したマンコの名前はあるだろうか。