どうして、地震や津波の犠牲者は「女性のほうが多い」のか?

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「自然災害における女性のリスク」に関するの記事が、5月1日ニュースメディア「QUARZT」に掲載されました。8,400名以上の犠牲者を出したネパール地震から、ちょうど1週間後のことでした。記事は、この疑問から始まります。

自然災害は無差別に人を襲うもの。でも、それは事実なのでしょうか?

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今から8年前に発表されたイギリスの2つの大学(ロンドン・スクール・オブ・ビジネス、エセックス大学)による共同研究によれば、1981年〜2002年までの21年間、世界141ヶ国で発生した自然災害において、男性に比べ、圧倒的に女性の方が多く亡くなっている事実が判明しました。その原因となっていたのは、男女の性差があることは明らかです。

今年、4月25日にネパールを襲ったマグニチュード7.8の大地震。unicefが発表した数字では、被災者130万人(4/26日時点)のうちおよそ53%が女性であるとされています。

さらに、地震から2日後、「レジリエンス指数(危機耐性)」を国際支援団体「Action Aid」が発表しました。これは非常事態下において、女性に対して、どれだけ支援が行き届いているか、二次災害のリスクを軽減できているかを示す数値として、日本を含む、地震が頻発する南アジア8ヶ国で使用されているもの。今回のネパール地震では、このレジリエンス指数は、100点満点中45.2点に留まりました。この数値は世界的に見ても低い部類に入ります。つまり、ネパールではとくに女性に対する災害後の救援が行き届いていないことを示しています。

女性の死亡率を高める
文化的背景と被災後の環境

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災害時には男性よりも女性のほうが多く亡くなっているという事実は、社会学的にも生物学的にも根拠を求めることができます。

例えば、2004年のスマトラ沖地震の際は、男性の約4倍もの女性が犠牲となりました。この死者数の違いに着目した調査チームは「インド特有の文化的な背景が関係していたのでは?」という見解を示しています。
震源地が沖合だったこの地震では、大津波によって多くの犠牲者を出しました。そのなかで、スマトラ島北端に位置する村アチェでは、女性が木登りをしたり泳いだりする習慣がなかったそうです。結果的にこのような“文化”が、女性たちの死亡者を増やしてしまった原因ではないかというのです。

また、1998年のバングラディシュを襲った大洪水の際は、サニタリー用品の不足によって、尿路感染症に苦しむ女性が急増したそうです。
つまり女性たちは、地震や洪水によって家屋を失った場合、その後の避難環境によっても、感染症やPTSDにより、命を落とす危険性が男性よりも圧倒的に高い、ということが死亡者数に反映しているのです。

人権団体「Oxfam」の広報担当者は、その事実について、こんなコメントを発表しています。

自然災害に共通して言えることですが、災害時は、女性のプライバシーに対するニーズは、高くなる傾向にあります。男性に比べて公衆の場で女性が用を足すことは、当然ですが抵抗感があります。さらには、衛生環境が整わないなかで生理用品も不足することで、感染症を患うケースも少なくありません。水でさえ満足に行き届かない状況なのですから。

復興再建のカギは
妊娠女性の救済にあり

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現在、ネパール地震で被災にあった女性たちへの人道支援として、生理用品やウェットテッシュ、タオルを入れた「衛生キット」が、各支援団体によって無料配布されています。なかでも、推定50,000人と算出された妊娠女性に対するケアについては、国際連合人口基金(UNFPA)が中心となって、キット配布のほか、各国から救援に駆けつけた医療チームと連携を取り合い、産前産後のケアと、緊急対応可能な簡易施設が急ピッチで設けられ、安心して出産ができる体制を構築しつつあります。

こうしたサポートは、実質的に彼女たちの生命を救うだけでなく、PTSDによる精神的苦痛から女性を解放することにも、貢献していると言えるでしょう。やがて震災から再び立ち上がり、今度は女性たちの手で、さらには、産まれてくる新しい命が、荒廃した街を再建していく原動力にもなっていくはずです。

もちろん、苦しんでいるのは、女性だけではありませんが、「自然災害では、女性のリスクが高い」というのは、事実なのです。

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