首都高に設置されたドライバーを引き寄せる光 その効果は?
3月7日の首都高C2中央環状品川線開通で、C1都心環状線の渋滞が緩和される見込みですが、渋滞悪化が懸念される場所もあります。首都高ではそれを見据えた渋滞緩和対策も合わせて行っており、まず2月16日に「エスコートライト」を3号渋谷線下りに設置。はたしてどのようなものなのか、実際に走行し確認してきました。
光に引っ張られるドライバー
2015年3月7日のC2中央環状品川線開通により、渋滞が緩和され便利になる首都高ですが、一方で局所的な渋滞悪化が懸念されているのが、3号渋谷線下り大橋JCT付近です。
この場所ではずっと以前より夜間、池尻ランプからの合流抵抗と三軒茶屋付近のサグ(道路が下り坂から上り坂にさしかかる凹部。渋滞発生の原因になる)で渋滞が発生していましたが、2010年の中央環状新宿線の開通に伴う大橋JCTの誕生で、それが激化。ほぼ恒常的に渋滞するようになりました。そして今回のC2品川線の開通で大橋JCTからの流入交通量が増えれば、さらなる渋滞の悪化は必然と思われます。
が、首都高側も手をこまねいているわけではなく、様々な渋滞緩和策を準備しています。そのひとつが、2月16日から三軒茶屋のサグ付近で運用が開始された「エスコートライト」です。
これはLEDランプの光を進行方向へ連続的に流すことで、無意識的な速度低下を防ぐことを狙ったもの。漫然運転のドライバーがサグで下り坂から上り坂になったことに気がつかず、うっかり速度を落としてしまうのを、光の流れに引っ張らせて防止するイメージです。
アクアラインでも渋滞を緩和しているエスコートライト
この手の渋滞対策をNEXCOは数年前から導入しており、NEXCO東日本は「ペースメーカーライト」、NEXCO中日本は「速度感覚コントロールシステム」と呼称。次のような実績をあげています。
■東京湾アクアライン上り・浮島JCT手前のトンネル内にあるサグ付近(設置延長1km)
渋滞時の平均速度が26.2km/hから33.1km/hに向上。渋滞時の所要時間は33分から28分に減少。渋滞量は55%減少。
■東名高速道路下り宇利トンネル(静岡・愛知県境)付近のサグ(設置延長1.8km)
渋滞発生時、交通量がわずかながら増加(若干渋滞が緩和)。
このほか、東北地方での試験運用でも効果は認められています。改善率は場所によって差がありますが、少ない費用で多少なりとも効果が期待できるのですから、日本の高速道路渋滞の半分以上を発生させている首都高にもこれが導入されるのは、歓迎すべきことです。
実際に現場を走行、その効果は?
C2品川線の開通に先立ち、2月16日からエスコートライトの運用が3号渋谷線で開始されたので、早速走ってみました。
場所は3号渋谷線下り池尻入口のやや下流から234mの区間で、左側防音壁に設けられています。またNEXCOのものは小さな長方形のLEDですが、大型トラックの割合が非常に多い首都高のものは高い位置からも見やすい縦長のLEDになっており、光の移動速度は制限速度の60km/hです。
渋滞はいつものように発生しており、設置場所までは以前同様のノロノロでしたが、エスコートライト設置区間のやや手前から明らかに速度が上昇を始め、区間が終了する頃には制限速度の60km/hに回復。設置前よりも、速度の回復タイミングが若干早いように感じました。
実際にどれくらいの効果があるかは、計測データが出ないと何ともいえませんが、恐らく渋滞の開始が若干遅くなった上、回復も早くなり、渋滞中の捌き台数も1割程度増えているのではないでしょうか。
このエスコートライトだけで渋滞を解消する力はありませんし、渋滞が始まってしまえば、上流側では以前より速度が1〜2割上がるだけ。つまり平均時速12kmが14kmになる程度ですから、ドライバーがその効果を実感するのはまず無理でしょう。しかし計測してみれば渋滞の通過時間は短縮され、渋滞している時間帯も若干狭くなっている可能性が高いです。
ただ抜本的な渋滞解消は無理ながらも、この対策は費用があまりかからないという大きなメリットがあります。C2品川線の建設費は3100億円ですが、このエスコートライトはその1000分の1以下と推測されます。それで1〜2割でも渋滞が減るのなら、コストパフォーマンスは抜群です。
首都高にはこのほかにも、同種のサグ渋滞発生個所がいくつかあります。効果が確認されれば、右側にもLEDを取り付けるなどの改良を加えた上で、設置個所を拡大していくことを求めたいものです。