ブラジルW杯後の最初の大舞台となるアジア杯(オーストラリア)が開幕した。優勝すれば、貴重な強化の場となるコンフェデ杯(2017年)の出場権を得られるし、何より日本は前回王者だ。簡単なことではないけど、ノルマは優勝しかない。期待して見守りたいね。

ただ、ひとつ気がかりなのは“ピッチ外”の雑音。そう、アギーレ監督の八百長問題だ。11年、スペインリーグ・サラゴサ監督時代の疑惑で、昨年の秋頃から大きな問題に発展するのではという噂が流れ始め、12月15日にはスペインの検察当局が裁判所に告発状を提出。それ以降はテレビのワイドショーまでが取り上げる騒動になり、結局、日本サッカー協会の原専務理事、アギーレ監督らが釈明の会見を行なった。

海外メディアの関心も高く、日本代表がオーストラリア入りしてからも、アギーレ監督が八百長問題についての質問を受けている。アギーレ監督も選手たちも「試合に集中している」と口をそろえているけど、よけいな神経を使っているのは間違いない。

今さら言っても仕方がないことだけど、なぜ協会は以前から八百長疑惑のささやかれていたアギーレをわざわざ監督に選んだのだろう。確か何年も前から監督要請のラブコールを送り続けていたはずだよね。その間に何も調査していなかったのかな。知らなかったでは済まされない話だよ。

また、告発状が提出されて以降の対応も後手後手に回った。事態がどんどん大きくなって、社会的な問題に発展しているのに、なかなかトップが会見を行なわなかった。まるでマクドナルドみたいだ。告発された時点で、すぐに大仁(だいに)会長、原専務理事、アギーレ監督の3人がそろって会見を開くべきだった。

アギーレ監督の進退に関して言えば、告発状が裁判所に受理されてしまった以上、たとえアジア杯で素晴らしい試合内容で優勝したとしても、多額の違約金が発生するとしても続投はあり得ない。速やかに解任の方向に動くべきだ。

クロかどうかはっきりしない人間にジャッジを下すのはナンセンスという意見も聞こえてくるけど、僕はそうは思わない。

なぜなら、すでに現段階でも日本サッカーは大きなイメージダウンを被(こうむ)っている。そして、裁判となれば、判決が出るまでに長い期間を要する。その間、アギーレは日本とスペインを何度も往復することになるはず。そういう立場の人間が落ち着いて仕事に取り組めるだろうか。

また、裁判の日程は代表の試合日程とは重ならないといわれているけど、誰もそれを保証してくれるわけではない。もし大事なW杯予選の最中に召喚(しょうかん)を受けたらどうするのだろう。いちいち代行監督を立てるのかな。

そもそも代表監督は、試合で采配を振る以外にも選手の視察、技術委員会との会議などやることはたくさんある。それらの仕事になんらかの差し障りが生じるのは避けられない。

もちろん、任命責任も問われるべき。例えば、一般の会社で大きな損失を出した人は、左遷や減給といったなんらかの処分を受ける。それと同じこと。

ミスをしたからといって、なんでもかんでもすぐにクビにしろとは言わないけど、なんらかのケジメはつけるべき。それができなければ、協会はますます世間の信頼を失うことになるよ。

(構成/渡辺達也)