横浜商大高vs横浜翠嵐
打線の核を担う渡部（横浜商大高）
オフェンス重視。この夏、1回戦で横浜隼人に敗れた横浜商大高。あと1本が出なかったことを課題としては、夏では打撃面を強化した。
1回表、無死二塁から2番小泉が適時打を放ち1点を先制すると、2回表には1番山田 大雅（1年）が2点適時打を放ち、続く3回表は、押し出し死球で1点を追加。序盤を終え4対0と、試合の主導権を握ったと思えた。しかし先発の鈴木 達也（2年）が不調で、一死満塁から失策、ワイルドピッチなどで、4点を失い、同点を許す。
4回表、4番松山 翔吾（2年）の適時打で勝ち越したものの、4回裏、この回から登板した2番手の伊勢が二死満塁から2つの失策なども重なり計3失点。5対7と初めてリードを許す展開に。
だが今年の横浜商大高はこのままでは終わらない。5回表、1番山田の適時打で、7対6と1点差に迫り、5回を折り返すと、7回表、無死一、二塁から8番福村が敵失を誘う二ゴロを放ち、二塁走者が生還し、同点。一死二、三塁になって、2番三浦の犠飛で勝ち越し。
8回には佐藤の2ランホームラン、9回には渡部 健人（1年）の適時二塁打、松山の2ランで突き放し、結局は13対7で大勝を決めた。
夏までは投手を中心とした守り抜く野球。エース・続木 悠登の存在があったといっても良い。ただ新チームではそういう野球が出来ない。まだ主戦で投げる投手が、不調で登板できないチーム事情もある。そのため打ち勝つ打線を求めてきた。幸い、このチームは核となる選手がいる。3番渡部と4番松山の2人だ。
9回にダメ押し本塁打を放った松山（横浜商大高）
この2人の打撃のポテンシャルの高さは、秋季大会では目立つ存在となるだろう。3番の渡部は、1年生ながら夏の大会でスタメンに出場していた選手。176センチ105キロとまさにドカベン体型とも言っていい選手だが、なんとポジションは二塁。俊足小技を活かした選手が多い二塁手だが、その概念を打ち崩す選手である。二塁手としての動きは、悪くはない。この個性を生かし、もう少し二塁守備が出来るようになると面白い。この試合は、9回表に飛び出したエンタイトル二塁打が唯一の安打。しかし、それ以外の打席でも、鋭い打球を飛ばしていた。フライの角度も高く、滞空時間も長い。懐が深い構えからボールを手元まで引きつけて打ち返す強い当たりが最大の持ち味とも行っても良い。
恵まれた体格、打撃力に自信があるのか、何が何でも長打を打ちたい、本塁打を打ちたいという欲がみえる選手で、ボールを巻き込んでレフト方向への打球が多くなりやすい。良い当たりでも、守備位置の深いレフトの守備シフトに嵌りアウトになることが多い。それは勿体ない。状況に応じて右方向にも打ち返す打撃が出来れば、相手投手とすれば、どれだけ嫌か。
まだ課題はあるが、長打力に加え、打席に立つ存在感の大きさといい、今後も注目し続けていきたい選手であった。
また、4番の松山は、この秋季大会から、三塁手から捕手へとコンバート。まだ転向直後ということもあって、守備ではミスが見られるものの、打撃では右、左へと打ち分け、この試合でも本塁打を放ったように甘く入れば、スタンドへ持っていく豪快なパワーを併せ持っており、隙のない打撃を見せていた。
秋は攻守ともにバッチリなチームはなかなかない。自分達の武器を強化して、弱点を補って戦うのも一つの戦法だ。県大会出場を決めた横浜商大高。試行錯誤を続けながら、攻守の完成度を高め、上位進出を狙っていきたい。
（文＝河嶋 宗一）
