セルジオ越後の一蹴両断!第344回「国立競技場で、最も印象深い日本代表戦は1997年10月のUAE戦だ!」
3月5日、日本代表の2014年初戦となる親善試合のニュージーランド戦が行なわれる。7月からの大規模改修工事を控えた東京・国立競技場での代表戦はこれで最後。昨季の天皇杯といい、お正月の高校サッカーといい、「最後の国立」を何度やるのかとも思うけど、日本サッカーの歴史を刻んできた“聖地”だけに、感慨深くなるファンも多いのだろうね。
国立競技場での開催で印象に残る日本代表の試合といえば、よく1985年のメキシコW杯最終予選の韓国戦(1−2で敗戦)と、97年のフランスW杯最終予選の韓国戦(1−2で敗戦)を挙げる人が多い。確かに、その2試合とも手に汗握る好ゲームだった。
でも、僕にとって一番印象に残っているのは、97年10月26日、フランスW杯最終予選のUAE戦だ。
それまでの最終予選中、日本は加茂周監督を更迭するなど非常に悪い流れが続いていたけど、この試合に勝てばグループ2位に浮上でき、巻き返すには絶好のチャンスだった。ところが、結果は1−1の引き分け。試合後、怒ったサポーターが選手バスを取り囲んで、パイプイスや生卵を投げつけた。カズ(三浦知良)が怒鳴り返す場面を記憶している人も多いだろう。それまでの日本サッカーでは考えられない光景だ。まるでブラジルみたいだなと驚いたものだよ。それだけ日本中がサッカーに熱くなっていたんだ。
一生懸命戦っている選手にすれば冗談じゃないという話だし、僕もそうした危険な行為を肯定するつもりはない。ただ、結果論かもしれないけど、あのようなサポーターからの刺激があったからこそ、選手たちはいい意味で開き直り、W杯初出場につながったのかなとも思うんだ。
また、2002年の日韓W杯開催に伴い、横浜(日産スタジアム)や埼玉(埼玉スタジアム)など首都圏に大きなスタジアムが建設されると、「国立はもういいよ」という感じで、国立での代表戦開催の機会はグッと減った。だから、もう15年以上も前のUAE戦が一番記憶に残っているのかもしれない。
さて、今度のニュージーランド戦はブラジルW杯のメンバー23名を選ぶ前の最後の代表戦でもある。本来なら重要な意味を持つ試合だけど、残念ながら相手が物足りなさすぎる。メンバー当落線上の選手にとっては活躍しても大したアピールにならないし、また、日本が何点奪って勝っても、W杯で対戦する相手国は気にしないだろう。だから、ノルマを課すのも難しい。
ニュージーランドとは11年3月に予定されていた試合が東日本大震災の影響で中止になっている。両国の親善も兼ねてあらためて試合を行ないましょうという考え自体は悪くないと思う。だけど、何も大事なW杯イヤー、しかも、メンバー発表前の最後の試合にすることはなかった。
あえて見どころを探すなら、長谷部、内田らケガを抱える“不動のメンバー”の代役として、ザッケローニ監督が誰を起用し、チームがどう機能するかだ。あとはマンチェスター・ユナイテッドでベンチ暮らしの続く香川、ACミランで本領を発揮できていない本田の状態を見るくらいかな。ふたりともザックジャパンの軸となる選手だけに、今のコンディションは気になるところ。なんとか結果を残して、いい感触をつかんで所属クラブに戻ってくれればいいね。
(構成/渡辺達也、写真/益田佑一)