日本より本場で高名な日本人アスリートたち
その何年か後、欧州では「ナカタ」の名前が有名になった。町を歩けば、「ナカタ」と声を掛けられることは珍しくなかった。中田英寿もまた欧州で最も有名な日本人スポーツ選手の仲間入りを果たしたわけだが、彼は、日本でも1、2を争う有名スポーツ選手だった。その取材現場には、日本人記者が大挙駆けつけ取材合戦を繰り広げた。それに続いた小野伸二も、中村俊輔もしかり。彼らの周りには多くの日本人が群がっていた。
フェイエノールトがドルトムントを破り優勝したUEFA杯決勝の現場には、小野を追いかけて40人を超す日本人が駆けつけた。その他の外国人記者が100人だったのに対して、だ。適正値を大幅に超える日本人取材陣が、UEFA杯決勝の記者席を埋める光景に、気恥ずかしくなった記憶がある。UEFAの広報も、いったい日本人はどうしたんだと目を白黒させていた。
サッカーは日本より強いのに、サッカーのスター選手よりアルペンのスター選手をナンバーワンと讃えるイタリア。両者を比較すると、日本スポーツ界の問題は浮き彫りになる。その時、コマーシャルベースに乗っている人は必要以上に騒がれ、それに乗っていない選手は、知る人ぞ知る域に追いやられる。成績に関係なく、だ。日本より欧州で有名なスポーツ選手が存在すること自体が間違い。恥じるべき話だと思う。
ソチ五輪のラージヒルで葛西紀明が銀メダルに輝いたいまこの瞬間こそ、ジャンプ競技は身近なものに見えるが、これを機に人気が急上昇するとは思えない。日本人の五輪好きを象徴する姿だと思う。五輪は好きだけれど、普段の大会には興味がない。関心がない。テレビ中継も満足にされていない。
NHKの「全力応援」なる五輪特集では、滑降とはこういうもので、スーパーGとはこういうものでと、アルペンスキーの各種目について、トリノ五輪で4着に入った皆川賢太郎さんが解説していた。しかし、アルペンは冬季五輪の超メジャー競技。日本には、札幌五輪、長野五輪と過去2回冬季五輪を開催した過去もある。日本国民として、知っていなければならないスポーツの基本だ。
スラロームでは、多くの第1シード選手を輩出している。皆川賢太郎さんがトリノで収めた4着という成績は、他の競技では金メダルに匹敵するほど、価値の高いものになる。その瞬間、彼は世界で最も知られたに日本人スポーツ選手だった。なので、その彼がいまなお「回転とはこういう種目です」と、解説する姿には哀れを誘う。
せっかく強敵ひしめく世界のメジャー競技で4位に入っても、公共放送で自ら出演し、一から説明しなくてはならない日本。させる方もさせる方だが、これはダメだ。いろいろな意味において、恥ずべき話になる。
日本人は五輪好きだと言われる。東京五輪招致委員会は、その最終プレゼンテーションで、ロンドン五輪後に行ったメダリストの銀座のパレードに50万人の群衆が集まった事実を持ち出し「我が東京はこれほどオリンピックをやりたがっています」と、アピールした。だがこれは、日本人の五輪好きを象徴するエピソードだろうか。「全力応援」しなければならないのは選手ではない。それを取り巻く人たちだと僕は思う。
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関連情報(BiZ PAGE+)
スポーツライター杉山茂樹氏の本音コラム。
